036話 時に感情的で、時に冷静に
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「あれ、何やってると思う?」
凛が、俺の横に立って疑問を投げかける。
あれが指すのは、立海山の奇妙な行動について。
長尺のテープメジャーを持ち出して、何やらフィールドの長さを測っていた。
フィールドの長さは一般的な長さなので、わざわざ測る必要はない。
それは説明しなくても分かる事だ。
いくら雅野が弱小校と言えど、そこを疑うのは失礼極まりない。
もっと言えば、長さが違ってもプレーに問題はないはずだ。
1年生全員が寸分の狂いも許せない完璧主義なら、この行動にも頷けるがそんなはずはない。
もっと別の意図があるのは確かだ。
「あれはちょっと気になるね。変な細工を仕掛けるような相手ではないと思うけどなー」
「それは知ってるわよ。だからこそ、あの意味が気になるんじゃない。アンタ、立海山に顔知れてんでしょ? ちょっと聞いてきなさいよ」
「えぇ!? 無理だって、無理だよ」
どんな顔して再会すれば良いんだよ。
なんでアイツ雅野にいるんだって思われて、冷めた視線を向けられる気まずい時間を過ごすことになるぞ。
最初からそんなことが分かり切っていて、好き好んで地獄へ向かうアホは居ない。
全力で首を横に振って拒絶の意を示す。
「はぁー? じゃあ、そのまま何か分からずに試合開始まで待つの? あり得ないでしょ」
「心中お察しします」
「察してるなら行きなさいよ」
嫌だと何度も言っているのに、グイグイと背中を押して強制連行。
必死の抵抗で地面に踵を刺して、勢いを殺そうと試みるも凛の力に負けてしまい徐々に前へと押しやられる。
どう足掻いても無駄なのだと察して、抵抗を諦めた頃には、まるで儀式の供物にされる村娘のように乱雑に立海山の下へと送り出された。
騒いでいたせいで必要以上に全員の視線を浴びる。
当然、歓迎的な雰囲気ではない。
前にも見たけど、立海山の1年生はレギュラーの座を争っている真っ最中。
敵も味方も出し抜いて、監督陣にアピールをしないといけないヒリついた状況に置かれている。
そんな中で俺達が騒いでいたら、殺意を覚えていてもいるかもな。
「ねぇねぇ、やばいって凛」
凛にだけ伝える小さな声。
さっさと自分達の陣営に戻って、安寧を手に入れたい。
だけど、俺の思いとは裏腹に、敵陣に侵入してニヤッと笑う女の子が1人。
逆風の方が寧ろ心地良い。
なんて考えてなければ良いけど。
「あれ? あれれ? どこかで見たことある顔だなーっと思ったら」
(げっ……、まずい。陰湿ちゃんだ)
駆け寄って来たのは、立海山潜入中に出会った名前も知らない陰湿な女の子。
きっと俺に気付いて声を掛けに来たに違いない。
なんて返事を返せば良いのか分からず、咄嗟に顔を隠す。
今更、隠しても遅いと分かっているけど、神の悪戯で誤魔化せはしないだろうか。
「やっぱりそうだ。君、府部中の鷹津さんだよね! まさか、こんな所で会えるなんて。光栄だよ」
「アタシはアンタのこと知らないけど」
「口が悪いって噂、本当だったんだ。私は、毒島 星。以後、お見知りおきを。あっ! でもその必要ないか! 立海山と試合するのなんて、今日が最初で最後だもんね。……仲間に見捨てられた孤独な完璧主義者さん」
口が悪いのはどっちだよ。
わざわざそんな嫌味を言って、凛の心を揺さぶらないと勝てないのか。
自分が言われた事のように腹が立つ。
普段なら速攻で言い返すはずの凛が黙っているのも納得出来ない。
揉め事を起こしては行けないと分かっていながら、理性に反して体が動き出す。
暴力はダメだと何度も頭で唱えながら、歩み続ける自分が怖い。
地面を蹴る音が止む。目の前には毒島。
俺よりも若干高い身長から、見下したようにこちらを見ている。
その顔が余計に神経を逆撫でして、無意識のうちに拳に力が入る。
「春陽ッ! それ以上、動かないで」
凛が俺の名前を呼んだ。
今までは苗字でしか呼ばなかったのに。
「アンタ、えーっと、キラキラちゃんだっけ? アタシ、星屑の1つに喚かれても全然気にしない主義なの。ちゃんと話したいなら、輝くプレーで一番星になってからにして」
「あははは! 意外と冷静なタイプなんだね。もっと感情的になるかと思った。その顔が試合終わった後に、屈辱で歪むかと思ったらちょっと唆るなー」
敵役としては完璧な捨て台詞を残して、背中を見せながら去っていく。
「凛、ごめん。仲裁しようと思ったけど、結局……」
「本当にどうしようもないわね! いつも冷静なんだから、こういう時こそ落ち着きなさいよ!」
容赦ないデコピンが炸裂。ゴツっと鈍い音が鳴る。
ヒリヒリとおでこが痛む。
凛に迷惑を掛けたから、これくらいで済むなら安いものだと、おでこを摩りながら反省。
「良い? ヴァルキリーカップ優勝を目指してるなら、ちゃんと覚えておくことね。アンタが功績を残して行く程に妬み嫉む人間がいるってことを。それでも、先に進みたいならアンタも心を強くする努力が必要よ」
「……肝に銘じておくよ」
試合前に落ち込んでしまうことになるとは。
しかも、精神年齢30代のおっさんが、ぴちぴちの若者に説教されるなんて。
恥ずかしいことこの上ない。
結局は中身のない30年より、壮絶な経験をした15年強の方が為になるってことか。
「あっ、そういえば」
「何よ、いきなり。そこで区切ったら続きが気になるでしょ」
「でも……、言ったら怒るでしょ?」
「………」
何も言わないのが答えだ。
怒る可能性は大いにあるけど、俺も途中まで口に出しておいて飲み込むのも気持ち悪い。
意を決して話してみる。
「さっきに私のこと春陽って呼んでくれたよね! 口では私のこと───いったあぁーー!!!」
2発目のデコピン。しかも、同じ所。
その部分だけ酷く赤くなっているのが、見なくても分かる。
容赦ない凛に安心感すら覚えた。
試合もその調子で火を吹いてくれると非常に助かる。
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