035話 例え、先輩であっても
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時は過ぎ、立海山との練習試合当日。
時間は正午前の暑い時間。
試合場所に選ばれた雅野高校のグラウンドに、サッカー部の1年生が集まっている。
逆は言えば、まだ1年生以外誰も来ていない。
想定は出来た状況だけど、内心焦りがあった。
こんなに贅沢な練習試合が中止に終われば、勿体無いこと極まりない。
口では問題ないとか言っていた癖に、実現出来そうになった今、強く思う。
「おはよぉー、みんなぁー。1年生は偉いねぇー」
「おはよー! ちいちゃーん!」
「うーん、せめて千伊先生だよぉ、倉谷ちゃーん」
1年生の次に来たのは、刈谷崎先生だった。
白いワンピースに麦わら帽子を被り、日傘を刺しながら登場。
本人のおっとりとした空気に合っていて可愛いけど、今日の練習試合においてはミスマッチな衣装だ。
相手の監督は結構硬派なおじさんだから、彼女の格好を見て卒倒しなければ良いけど。
「か・り・や・さ・き先生!」
威勢良く刈谷崎先生に詰め寄るのは、雅野の憤怒担当、鷹津 凛だった。
何故、こんなにも怒っているのかは、彼女が口にしなくても察しが付く。
「他の部員はどうしたんですか!」
「ひ、ひぃー。私もちゃんと来るように伝えたんですよぉ? サッカー部のメッセージグループとか、廊下ですれ違った時に口頭でとか。でも、やっぱり来なかったんだぁ。ごめんね、力不足でぇ」
頭を抑えて大袈裟に怖がって見せる刈谷崎先生。
話を聞く分には、意外とサッカー部の為に動いてくれていたようだ。
無知故に部員へ丸投げする顧問だったのに、どこで心を入れ替えたのか。
今日だってちゃんと観戦に来ているし、少しずつサッカーに触れようという気概が汲み取れる。
「あぁー、いけないんだー! たかりんが先生いじめてる!」
「なぁ!? いじめてないから! 私はただここにいない───」
「あ? ここにいない奴らがなんだって? 1年坊」
現れたのはユニフォームを着た獅子王先輩だった。
荷物の入った鞄を片手で持ちながら、鋭い視線で凛を睨みつけている。
負けじと凛も睨み返し、周囲に流れる一髪触発の危ない空気。
「どったの? 灼巴? って!? 何でそんなに睨み合ってんの?」
獅子王先輩の後ろからゾロゾロと登場する先輩方。
失礼ながら指で人数を数えると、真宮先輩を除く全員がこの場にいた。
「ちょいちょいやめときなって。1年生が先輩睨むって、どういう神経してんの?」
獅子王先輩と同じく3年の堂免先輩が止めに入ったかと思えば、凛のことを咎める。
ようやく集結した矢先にこれか。
1年と先輩達の溝は深まるばかり。
数十分後には試合も控えているというのに頭が痛い話だ。
「良かったぁー! ちゃんと来てくれたんだねぇ!」
「刈谷崎先生がしつこく言ってくるからですよ。しかも、内申点貰えなくなるかもなんて脅しまでして、狡いですよー。残ってる部員の殆どは内申点上がるかもって残ってるのに」
「でもでも、こうでもしないと来てくれないかと思ってぇ!」
泣いた振りをしながら謝る素振りを見せる刈谷崎先生。
どうやら今ここに先輩達がいるのは、気まぐれなんかではないらしい。
想像していたよりも遥かに呼び掛けてくれていた刈谷崎先生。
ほぼ全員を口説き落とすのは、相当な苦労があっただろう。
これは後で感謝を伝えて、お菓子の詰め合わせと缶コーヒーをプレゼントしてあげないと。
「1年は全員雅野のフォーメーション覚えてきたんだろうな? 今日の試合は真宮が不在だから、俺が副キャプテンとして指揮を取る。指示には従えよ?」
「あっ、それなんですけど、フォーメーションとスタメンはこっちが考えて来たんで」
「はぁ? お前な、先輩の指示には従えよ」
今度は俺に矛先を向ける。
副キャプテンを担うにしては些か気が短過ぎやしないか。
毎日練習に出て、本気で勝ち行こうとしている部員と仕方なく練習試合に参加した部員では言葉の重みが違う。
これに関しては、上下関係とか一切関係なく、俺達の意見を飲んでもらいたい。
「私は……、私達は、この日に賭けて1日1日を過ごして来ました。先輩達はどうですか?」
「何言ってんの? それが何? 灼巴が副キャプテンなんだから、指示には従ってもらわんと」
「生意気言ってるのは百も承知ですよ。私達が気に食わないのも理解しています。その上で、勝つ為にお願いしてます」
「……、良いぜ。ただし、条件付きだ。この練習試合、勝てなかったら、今後俺の言うことを絶対に聞いてもらう。勝ったら、お前が副キャプテンにでもなれよ」
面白い提案だ。
立海山と練習するとしか知らない獅子王先輩にとって、これは分の良い賭け。
相手が1軍で来れば、万が一にも今の雅野では勝てないからな。
こちらからして見れば、相手は1年生。
いくら立海山とは言えど、五分五分の勝率はあると思っている。
言うことを聞くという条件は、実質的に雅野でまともなサッカーが出来ないと思っていた方が良い。
つまり、退路は絶たれ。
振り返るつもりなんて毛頭ないけど、最後の気合い注入としては十分。
「あ、あれって。立海山じゃない?」
俺と獅子王先輩の会話に割って入るように、先輩の中の誰かが上擦った声でグラウンドの奥を指差す。
張り詰めた威圧的な空気を醸し出しながら、隊列を組んで入って来る立海山の1年と顧問達。
足並みは崩れる事を知らず、完璧なリズムを奏でながら1歩、2歩と近付いてくる。
「今日はお招きいただきありがとうございます」
顧問の古枝が、先陣に立って刈谷崎先生へ挨拶を。
彼の面はちょっとイカついので、完全に刈谷崎先生がビビってしまっていた。
それでも失礼がないようにと引き攣った笑顔を浮かべながら、握手をしようと手を出す。
「よ、よ、よろしくお願いしますぅ」
「そんな緊張されることはないですよ。まぁ、あくまで練習試合なんで、気楽に行きましょう」
「そうですよねぇ。ありがとうございますぅ」
古枝の言葉を真に受けて、少しホッとした様子の刈谷崎先生。
本当は全く持って気楽ではない。
立海山と雅野の1年は全員、本気で勝ちに行こうとしている。
そこに1つの妥協や躊躇いはない。
コートの半分を借りて準備を始める立海山。
その様子を眺めながら、今日という日に賭けた想いを乗せて最後の調整を始めた。
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