029話 あの風に乗って
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ボールで遊ぶ紺ちゃんをベンチに座って2人で見守る。
学校ではいつも英理奈がいたので、なんとか空気を保っていたが、正直2人きりだと気まずい。
相手が俺の事を嫌っていると分かっているから尚更。
練習場所を移す事で簡単に解決するんだけど、それだと紺ちゃんがぐずってしまう。
なので、遊び疲れるのを待つ間、凛と過ごす必要があった。
「凛って妹と散歩とかするんだね。うちは仲悪いって訳じゃないけど、休みの日とかは別々だな」
共通の話題なら少しは話が弾むかもと思い、妹の話題を出してみる。
妹の冬音は俺と歳が近いから、鷹津姉妹と同じかと言われたら少し違う気もするけど、会話の種になるならなんだって良い。
「散歩じゃないから。練習しようと思って、玄関でトレシュ履いてたら紺にバレちゃったの。あの子、外遊び好きだから付いて来るって言って聞かなくて。あのままに置いて来ると勝手に1人で外出かねないから、仕方なくよ」
「しっかりお姉ちゃんしてるんだね、凛」
「うっさいわね、アタシを何だと思ってるのよ。妹の世話くらい、ちゃんとするっての」
ツンツン少女だと思ってるけど、口には出さない。
鋭利な言葉だけでなく、グーパンチも飛んできそうだ。
鼻からダラダラ血を溢したら、紺ちゃんが心配してしまう。
なるべく刺激しないように、違う話題を探してみる。
「練習するつもりならさ、一緒にやらない? 私も練習する為に公園来たんだよね」
「アンタ、私の返事が分かってて聞いてるでしょ」
「ダメ元って言葉が世の中にはあってさ」
「嫌いな言葉ね。ダメだった時に肯定する為の保険を張った弱い発想よ」
チャレンジの背中を押す言葉だから、強い弱いとかの話ではないと思うんだけどな。
その考えが出る辺りが凛らしい。
彼女には他の人間が簡単に真似できない芯を通す強さを持っている。
人の意見に流される日本人が多い中で、彼女のような人間は稀有といえるだろう。
だけど、彼女の強さは弱さでもあった。
きっと本人も気付いているはずだ。
このままではいつか高い壁に当たると。
「どうせ、明日の放課後からは一緒に練習するんだから良いじゃん」
「……どうしてそこまでアタシに固執するの。普通、ここまで拒絶されたら関わるのやめると思うんだけど。てか、そうして欲しいから強く当たってるし」
「分かっててやってるのかい。逆になんで周りと関わりたくないのか分からないけど、……勝ちたいから以外無くない? 勝つ為に、強い選手を。勝つ為に、経験のある選手を。勝つ為に、勝つ為に、勝つ為に。それ以外は考えてないよ」
鷹津 凛という少女が並の選手だったら、ここまで誘ったりはしない。
単純に彼女が優秀だから。
理由はそれだけ。あ、いや、ビジュが良いのも少しあるかも。
とにかく、俺の思い描く優勝までのロードマップに彼女が必要不可欠。
だから、自分への好感度が低いからと言う理由だけでは、諦める理由として不十分だ。
「勝つ為……ねぇ。そういえば、立海山と練習試合するつもりなんでしょ。英理奈から話聞いたわ」
明日の放課後の話、何となく誤魔化された気がする。
「丁度、今日交渉しに行って来たところ。あっちの監督を何とか説得して、練習試合決めて来たよ。相手は全員1年生だけど」
「雅野にしては十分過ぎる相手ね。当然、アタシがいるから勝つけど」
彼女の言葉は冗談ではなく、本心から出た言葉に聞こえた。
「……ねぇ、……。」
「何よ、突然。話があるなら最後まで言いなさいよ」
出掛けた言葉を飲み込む。
凛が雅野に来た理由を聞いて良いのか迷った。
彼女の実力なら、それこそ立海山でやって行けるはず。
そうでなかったとしても、スポーツ推薦で引く手数多だと思う。
サッカーを本気でやるつもりがあるなら、わざわざ雅野なんて選ばない。
去年のように、部としてまともに活動していたとしても、予選敗退が目に見えている。
だとすると、彼女が雅野に来た理由は……サッカーをやめる為なのか。
安易に結論付けのは無粋だけど、そうやって考察するのが1番しっくり来た。
「ねぇねぇ、おねぇちゃん。あっ、えっと、りんおねぇちゃんと……」
重くなりかけて空気を浄化する天使がやって来た。
1人で遊んでいた紺ちゃんが俺達を呼んでいる。
どちらもお姉ちゃんと呼んでいたので、区別する為に下の名前も付けようとしていた。
だけど、俺の顔を見ながら顔を傾ける。
そういえば、紺ちゃんには自己紹介するのがまだだったな。
「春陽だよ。春陽お姉ちゃん」
「はるひおねぇちゃん! 見て見て、たんぽぽ!」
後ろに隠していた手をパッと前に出す。
両手に握られた3本の可愛らしいたんぽぽ。
どうしてもこれを見せたかったようだ。
満足そうな笑顔でこちらを見ている。
「1本貰ってもいいかな? 一緒に飛ばそうよ」
「うん! どうぞ! りんおねぇちゃんも」
「しょうがないわね、1回だけよ。そろそろ練習も始めたいし」
口では仕方なさそうだけど、表情はどこか嬉しそうだ。
3人で横一列にしゃがみこんで、天に向けてふっと息を吹きかける。
風のあまり吹いていない日曜日の午後。
少しの風を頼りに大勢の綿毛が一生懸命空を舞う。
ふらふらとどこに行くのかも分からないまま、それでも必死に。
雲の上に届くと信じて、高く高く。
あの綿毛のように俺達も、地面から始まっていつかは。
誰も想像していなかった景色を見れると信じたい。
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