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撫子は強く咲く〜美少女サッカー育成ゲームにTS転生した俺、最弱高校で最強を目指す〜  作者: 風野唄


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030話 蛇と獅子

誤字脱字や文章の下手さについてはご了承下さい。投稿予定時間になるべく投稿できるようにします。

面白いと思っていただけたら評価やコメントお待ちしております!

 月曜日の学校は鬱々としていた。

気怠そうに机に項垂れる者、大きな口を開けて欠伸をする者、友達と愚痴を溢し合う者。

女子校だから、もっと華々しい世界を想像していたけど、共学と大して変わらないな。

それどころか、異性の目を気にしなくて良い分、曝け出しているように思える。


 そんな環境の中でも、お淑やかに勉強をしている(あん)

勉強の得意そうな彼女が、何の勉強をしているのか気になる。

邪魔にならないようにそっと覗いて見ると、どうやら学校の勉強ではないようだ。


『赤ちゃんでも分かるサッカー基礎知識』

『今日から始めるサッカー講座』

『知らないと損するサッカー練習法』


 初歩的な事が学べそうな、サッカーに関する指南書ばかり机の上には並べられていた。

杏はみんなと違ってサッカー経験はない。

そこを補う為に今もこうやって必死に勉強していたのか。

新しく用意したであろうノートも事細かく要点がまとめ上げられていて、本にもビッシリとマーカーや付箋が付けられている。


「朝から偉いね、杏」

「おはようございます、春陽(はるひ)さん。土曜日から座学を始めてみたんですけど、これが面白くて! 観戦とかは好きなんで知ったつもりになってたんですけど、選手目線の話だとこうも違って見えるんですね!」

「勉強熱心な杏のことだから、成果が出るのも早そうだね」

「そうだと良いんですけど……。いえ、そうなるように頑張ります」


 ネガティブになり掛けた気持ちを自分自身で制する。

そして、また机の上で睨めっこを始めた。

土日にあった事を面白おかしく話す予定だったんだけど、これを見てしまうとそっとしておきたい。

今はスポンジの吸収する時期。

少しの時間だって惜しいはずだ。



 教室で1人、ボーッとしているのも退屈なので、水分補給がてらに1階の自販機まで歩く。

朝のひんやりとした空気が、温かくなり始めているこの時期は気持ち。

クーラーを付けるには早いので、自然だけが唯一温度を調整出来る手段だ。


 どうやら他の生徒もそれに気付いているみたいで、廊下の至る所が賑わっていた。

特に窓側は涼しいので、熾烈な陣取り合戦が繰り広げられている。

教室に近ければ近い程、派手なグループの子が多いのが妙にリアルだ。

スクールカースト、ここにありってか? 恐らくて堪らないな。


 自販機に着くと、先客がいたみたいだ。

彼女も今、来たばかりのようで、うーんと頭を悩ませながら真剣に飲み物を選んでいた。

その様子は実に妖艶で、大人っぽい雰囲気と色気のある佇まいを兼ね備えている。


 決して、俺の心が男だからやましい気持ちで見ているとかではない。

重要だから、2回言うが決してだ。

もう暑いというのに黒のストッキングを履いているとか、薄めではあるけど拘束違反の化粧をしている横顔とか。

細かな要素の話をしている。


「あら? もしかして、貴方も飲み物を買う予定だった?」


 振り返ると、腰まで伸びた長い艶のある黒髪が綺麗に舞う。

香水みたいな甘い匂いがふわっと香った。


「気にしないでください。後から来たのは私の方ですから」

「気にしない訳にはいかないわ。可愛い女の子には、優しくしないと。お先にどうぞ」


 順番を譲ってくれるみたいだけど、俺も決まっている訳ではない。

譲ってもらってダラダラと選ぶのは気まずいので、遠回しに首を振って断る。


「遠慮しなくても良いのよ?」


 彼女が一歩ずつ距離を詰めて来た。

甘い匂いが強くなり、ドキドキと心臓が脈打つ。

なんだか嫌な予感がして逃げようとするけど、時既に遅し。

腰に手を回わされて、身動きが取れない。


「あらあら、緊張してるの? ……可愛い」


 首下から胸部に掛けて、ゆっくり人差し指でなぞられる。

背中を駆け回るゾゾッとした寒気。

魅力的というよりも、食べられてしまうのではないかと危機感が湧いてくる。


「……私、年下好きなのよね」


 耳元で囁かれる。

耐えきれなくなった俺は、強引に腕を剥がして荒っぽく距離を取った。

その必死な様子に、彼女は不敵な笑み浮かべる。


「変態! 同性だからってやって良い事と悪い事がありますよ!」

「ふふっ、うぶな子。ちょっとしたジョークじゃない。貴方、新入生でしょ? そういう子見てると揶揄いたくなるの」

「結構、悪趣味ですね」


 会話をしている最中もジワジワと距離を詰めてくる。

長い舌を見せつけるながらの舌舐めずり。

吸い込まれそうな眼光もあって、気分はさながら蛇に襲われる蛙だ。

この際、飲み物なんてどうでも良いから逃げようかと本気で検討している。


 彼女の動きに合わせて1歩ずつ後退していると、背中に感じるひんやりとした冷たさ。

振り返らなくても後ろは壁があることを察した。

こうなれば、出来ることは目を瞑って覚悟を決めるだけだ。


(……さようなら、純情な俺)


「朝っぱらから、何やってんだよお前等」


 後輩のピンチに現れたのは、高身長野生系女子の獅子王(ししおう)先輩だった。

サッカー部のことでは色々と揉めたけど、彼女の後輩であることには間違いない。

可愛い後輩を見捨てるはずがないと、全力で手を振って助けを求める。


「あらあら。誰かと思えば、猫王さんじゃないですか」

「俺の名前、獅子王だから。ちゃんと人の名前くらい覚えろ毒蛇」

「ふふふ、貴方こそ私の名前間違えてますよ。蛇ノ目(じゃのめ)ですから、じゃ・の・め」


 獅子王先輩の登場によって、俺の存在が空気と化す。

犬猿の中ならぬ、獅子蛇の中らしい。

バチバチと火花を散らしながら睨み合っている。


「いつ見ても品のない人ですね。女の子しかいないからってジャージで校内を彷徨くなんて」


 どこからか出した扇子で口元を隠しながら、毒を吐く。


「お前みたいに後輩へ色仕掛けする予定がないからな、俺は」

「色仕掛けなんて失礼です。ただの軽い会話じゃないですか。あー! 分かった! 私がこんなに可愛い子を見つけたから嫉妬してるんですね」

「それは中学の時のお前だろ」

「ふふふ、なんのことでしょうか」


 心にもない笑いで誤魔化そうとする蛇ノ目先輩。

扇子を気持ち速めにパタパタと仰いでいて、動揺が隠せていない。

獅子王先輩が口を僅かに開いて息を吸う度に、余計な事を言うなよと言わんばかりに大きめの咳払いをして誤魔化す。


「忘れたのか? だったら、ここで言ってやっても良いんだぜ?」

「……あっ! 用事があったんでした。また遊びましょうね、かわい子ちゃん」


 尻尾を巻いて逃げていく蛇ノ目先輩。

相当な弱味を獅子王先輩に握られているみたいだ。

あれだけ喧嘩腰なのもそのせいなのか。

2人の関係は気になるけど、今は丁度現れた獅子王先輩に話したいことがある。

ご覧いただきありがとうございました。

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