027話 取り付けた練習試合
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「練習試合ねぇー。スパイごっこもその為に必要だったのか?」
「いえ、そっちは興味本位です。まぁ、なかなか考え深いものを見れたので満足といったところでしょうか」
2、3年の練習を見ていないとは言え、1年生で既にあのレベルだ。
最強を名乗るに相応しいのが分かる。
「言っちゃ悪いが、俺達が雅野と練習試合をしてやる義理がねぇーんだよな。それにこういうのは顧問が電話なり、直接来るなりして交渉するもんじゃねーのか? なぁ、違うか?」
怒ってはいないが、明らかに詰め寄って来ている。
声のトーンが冷たく響き、耳を通り、全身へと巡る。
俺も大人だったことはあるが、後十数年生きていたら、彼と同じような貫禄が出せていただろうか。
しかも、言ってることは正論。
顧問でも、ましてやキャプテンでもない俺が交渉のテーブルに立つのは、相手からしたら不快に感じるのも無理はない。
練習試合は一長一短。
実践形式で経験を積めるというメリットはあるけど、相手に手の内を見せるデメリットも存在する。
ただ、どちらも相手と実力が拮抗している場合の話だ。
弱小高と対戦するなら、気にはならない。
だから、どれだけメリットを提示できるかが勝負の鍵となる。
「顧問から連絡がないことに関しては謝罪します。話が決まれば、後ほど顧問の方から連絡するように伝えておきますので」
「その必要はないな。俺達がわざわざ練習試合をすることはないんだから」
「それは何故?」
「悪いが雅野の相手をしてる暇はねぇーんだ。去年はヴァルキリーカップ優勝を逃した。今年は優勝を逃す訳にはいかねぇ」
1度を気を遣ってタバコを消したのに、再度ポケットから取り出して火を付ける。
のしかかる重圧、責任、後悔。
全ては煙に乗せて、吐き出す。
「お言葉ですが、だからこそ雅野と練習試合をした方が良いんじゃないですか?」
その言葉に何を返すわけでもなく、話を続けろと言わんばかりにタバコを吸い続けていた。
「去年は無名の天ノ宮に負けましたよね? 強豪校過ぎるが故に、下を見ようとしない。それが、敗因に繋がったんですよ」
「なんだ? 俺に驕りがあったとでも言うのか」
「驕りとまでは言いません。そんなものがあったら最強を語るまでの名実はついてきませんから。それでも、見えていない部分があったからこそ、雅野との練習試合も悪くないと思えませんか?」
「口は達者だな。話を聞くと不思議と納得しちまう」
灰がぽとりと落ちる。
古枝は目を瞑り、下を向いて考える素振りを見せた。
俺の話も一理あると感じている証拠。
畳み掛けるなら今がベストタイミングだ。
「1年生、まだスタメンと合流してないですよね。もしかして、選抜中の段階なんじゃないですか?」
今日の練習を見ていただけでも分かる。
全員がサブコーチを気にしていた。
まだ誰1人として目は死んでいない。
自分が選ばれる可能性がないとあの目は不可能だ。
「雅野との練習試合を1年の選定として使ってください」
「……それがどういう意味か分かってんのか。俺らは見せるもん見せずに、利用されるってことだぞ」
「いやいや、得られる物はこちらにもありますよ。例え、1年でも相手は立海山の選手です。こちら側は相当な経験値になると思います」
最後に残していたのは、俺達を使って1年の選定をさせる提案。
ある程度手の内を知っている味方同士で紅白戦をするよりも、実力は測りやすいと思う。
こちらは戦力の出し惜しみが出来ないことを考えると、相手にとっては悪くない条件と言える。
問題点を敢えて挙げるなら、こちらのどのくらいの戦力なのか分からない点だけ。
それに関しては、まだ全員が揃ったことがない以上、未知数とさせて欲しい。
出せる手札、はほぼ使い切った。
後は古枝の反応次第だ。
頼むから食いついてくれと願うことしか出来ない。
「……直々に交渉へ来るくらいだ。ちったあ、考えられてるみたいだな。でも、雅野である必要性はねぇな」
唾をゴクリと飲み込む。
雅野である必要性を説くには材料が足りなかったか。
「まぁ、でも、嫌いじゃねぇーぞ、その熱量。練習試合、受けてやるからちゃんと顧問の方から改めて連絡するように」
「ありがとうございます!」
これはあまりにも嬉しい。
舞い上がりたくなる気持ちを必死に抑えて、頭を下げて感謝を述べた。
ここに鏡はないけれど、口角が上がっていることははっきりと分かる。
「俺は練習に戻る。頑張れよ、雅野」
激励の言葉を残して、彼は姿を消していく。
部活動生の掛け声だけが届く、校舎裏。
誰も見ていないのを確認する為、端から端を行ったり来たり。
人影がないことを十分に確認出来たら、声にならない声を上げ、自分の内にある喜びを解放した。
思い描いたシナリオ通り、事が運んでいる。
才能の塊も、立海山との練習試合も全部怖いくらいに順調。
明日には運を使い果たして死ぬなんてこと無ければ良いけど。
目的を果たした俺は、立海山を後にした。
行きは地獄だったあの坂も、帰りは下り坂。
ましてや、テンションの高い俺にとって脅威ではない。
翼が生えたように軽々と降りてていき、疲れを感じないまま駅へと到着。
何度見ても人気の少ない駅。
申し訳程度で置かれているICカードの簡易読み取り機に、今朝チャージしたばかりのカードをタッチ。
周囲の自然と不釣り合いな電子音が鳴り、ようやく改札から構内へと足を踏み入れる。
「おおーーい! タンマ、タンマ!」
外から大きな声を出して、こちらに向かってくる見覚えのある髪色の少女が1人。
「阿久間先輩、どうしたんですか?」
「監督から君が多分帰ったって聞いてさ。慌てて、駅まで来たんだちゅーの」
「練習中なのに……。また古枝さんに怒られますよ」
「大丈夫! 怒られるのには慣れてるから!」
笑顔でピースをしているけど、それは大丈夫とは言わないと思う。
本人がそれで良いなら、何も言いはしないけど。
「で、わざわざ追い掛けて何か用ですか?」
「そうだ! 名前と連絡先! 教えてもらいたくて」
手に握り締めた携帯を俺の目の前に突き出す。
勝手に名乗っていたつもりになっていたけど、自己紹介がまだだったらしい。
「朝花 春陽です、先輩」
QRコードを読み取りながら、さらっと答える。
答えて減るもんでもないし、躊躇う必要はない。
それどころか敵であるとはいえ、人気投票上位のキャラだ。
お近付きになれて、悪い気はしなかった。
電車が近付く音がする。
阿久間先輩との会話は短く終わった。
まだ話し足りない様子の阿久間先輩。
ここまで彼女に気に入られる要素がどこにあったのか不思議だ。
最後にまた今度とだけ言い残して、少し古びた電車に乗車した。
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