026話 バレた時こそ潔く
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観察を続けると適当に見えて、細かな連携が取れていることに気付く。
視線での誘導やハンドサイン、乱れない一定の距離感。
全てが徹底した作戦の上で成り立っている。
作戦が分かったけれど、それをどうするかが難しい。
距離を詰めれば、すぐに動きは見せずギリギリまでボールをキープしてゆとりを持ってパスをする。
タイミングが重要だ。
足からボールが離れた丁度のタイミング。
狙うはその一点。
ボールが陰湿ちゃんの下へと届く。
高まる鼓動を抑えながら、冷静に秒数をカウントダウン。
同時に、手の動きや視線も注意。
(3……、2……、1……)
カウントに狂いはなく、ゼロと全く同じタイミングでボールが足下を離れた。
誰の制御下でもないボールは、拾ってくれと言わんばかりに地面を駆け回る。
ただ足をスッと差し出すだけで、元々の定位置だったみたいに収まった。
開始から5分くらいは経過していただろうか。
ようやく取れた喜びが沸々と湧き上がる。
もっと上手くやれたかも知れないが、後々の課題として持ち帰ることにしよう。
「おぉー、ナイスカット。まさか、取っちゃうなんて。もしかして、経験者?」
「さっさと中に入ったら? ボール、取られたんだから」
「あぁ? ……いやー、そうだよねぇー。ごめん、ごめん」
内申点稼ぎで中身のない会話は拒絶しておく。
どうせ、この練習が終わったら抜け出して、あの監督の下へと行く予定だからな。
わざわざ付き合ってやる義理はない。
それに少しイラッとさせる態度を見ているから、尚更嫌だった。
「さぁ、始めようか。いつでも良いよ」
ボールを取った俺からスタート。
まずは陰湿ちゃんの反対にいる子に向けてパスを出す。
「そっち行った! 絶対取ってね、暁美!」
さっきは散々動かなかったオドオドちゃんが、機敏な動きでパスコースを塞ぐ。
逆に今は俺の仲間であるはずの子達は、誰1人として動こうとはしない。
完全に陰湿ちゃんの言葉に操られている傀儡達ばかり。
唯一褒められる点を述べるとしたら、陰湿ちゃんが主導となり完全な指揮が取れていることくらい。
その長所も立海山のスタメンの前では無力。
本気で1軍を目指すなら、お山の大将を止めた方が良いと気付かない時点で残念な子だ。
「折角、取れたのに残念だったね。どんまい、どんまい。次、頑張ろうよ。次」
「ありがとう。わざわざ他人の事を気に掛けるなんて、優しいね」
「本心じゃないから、気にしないで」
それから先は練習に参加しているとは言えなかった。
オドオドちゃんこと、暁美ちゃんが、わざとらしく陰湿ちゃんにボールを回して最初の状況に逆戻り。
何度かボールを奪取したものの、あの手この手ですぐ様ディフェンス側になる。
ロンドが終わる頃にはヘトヘトで、地面に座り込む。
火照った体には、ひんやりとした土の冷たさが心地良い。
心臓が大きく鼓動するのを感じながら、吸って吐くを繰り返す。
周りを見渡してみたが、座っているのは俺くらいだった。
練習した班の環境が悪かったとはいえ、他の班も大層な運動量だったはず。
それにも関わらず、休むどころか自主的に班の皆とフィードバックを共有している。
いや、正確に言えば疲れはあるだろうな。
全員、夏なのかと思うくらい汗だくになっている。
休む間もないくらい、本気で上達したいと思っている人の集まりということか。
熱量があまりにも違い過ぎる。
俺達だって気持ちの面では負けていると思いたくない。
だけど、行動に差が出ている。
「ねぇ、君。全然ダメだったね。軽い気持ちで来られたら困るんだよ、私達も。だからさ、さっさと帰れよ」
爽やかに手を差し伸べるながらも、毒を吐く陰湿ちゃん。
多分、この手と口は別々の脳みそで動かしているのだと思う。
「そんな心配しなくても大丈夫だって。今度会う時は真剣勝負してあげるからさ」
「今度も何も2度と会うことないでしょ」
「それはどうかな? 世の中、何があるか分からないし」
「はぁー? 気持ち悪っ」
眉間に皺を寄せて、心底不快そうにする。
差し出していた手も反射的に引っ込めた。
偽善の1つくらい貫き通せないものだろうか。
最後の最後まで嫌な女だ。
練習試合で彼女が出場する機会があれば、確実に勝ってみせると心に誓った。
ドリンクやタオルを片付け始めたのを見て、小休憩が終わりそうな空気を感じる。
軽い偵察のつもりだったので、次のメニューに参加するつもりはない。
片付けるフリをして抜け出そうにも、手ぶらでの参加だ。
なので、ここは敢えて堂々と。
シャツで汗を拭いながら、何事も無かったかのように1年の練習から抜け出す。
時間が立てば、いないことに気付いたサブコーチが少し疑問を抱くかも知れないけれど、遅かれ早かれ抜ける予定だったんだ。
前後したからといって何の問題もない。
脱出に成功したので、今日の本題である練習試合の交渉へ向かう。
練習を抜け出して来た手前、堂々と1軍の練習場所に向かうのは気まずい。
足音を殺して、こっそりと校舎裏から回って行く。
「おい、どこ行く」
誰もいるはずがないと思っていたら、まさかの監督が立っていた。
タバコを咥えて、煙を吹かせながら、こちらを凝視している。
抜け出したことがバレてしまい、後ろめたい気持ちが先行してしまう。
だけど、よく考えると彼に用がある。
「どうだった、うちの練習は。見たいもんが見れたか?」
子供の俺に配慮して、地面にタバコを押し当てながら質問を投げかけてくる。
その問いの意味を勘繰ってしまう。
あくまでも立海山の見学者として聞いているはずだよなと。
「良いですね、サッカー部。入部したくなりました」
「馬鹿言え。他校の奴が入部出来るか」
「なんのことでしょうか?」
「阿久間から聞いてんだよ。お前が雅野の1年だってな」
ネタバラシをするならこのタイミングか。
いつかは話さないといけないことだ。
「バレちゃいましたか。今日はとあるお願いがあって参りました」
「……肝の据わった奴だな。この状況で出る言葉がそれか?」
「我々、雅野もなりふり構っていられないですからね。少しでもチャンスがあれば、自ら手繰り寄せるないと」
「その泥臭い考え方、嫌いじゃないな。本来、俺もそっち側の意見だ。要件を言ってみろ。聞くだけ聞いてやる」
その言葉を待っていた。
体を90度に曲げて、土を眺めながら声を張り上げる。
自分の、仲間の想いを全て乗せて。
「雅野と練習試合をしてください!! お願いします!」
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