023話 英理奈の想い
誤字脱字や文章の下手さについてはご了承下さい。投稿予定時間になるべく投稿できるようにします。
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売り場に残されていた才能の塊2つも回収。
意図しないタイミングで割れてしまわない様に、新聞紙と袋をもらう。
どんな割れ物よりも繊細且つ丁寧に梱包をする。
最後に袋へ入れるまで気は抜けない。
音すら鳴らさずにそっと仕舞い込んでようやく任務完了。
「どうだった? 欲しいもの買えたの?」
緊張から解放された途端に英理奈が現れ、心臓が飛び出す。
「びっくりしたぁ……。ちゃんと買えたよ。あの喫茶店の店長のおかげだね」
「ウチも給料の使い道考えないとなー。これから部活がどんどん忙しくなるだろうし、使う機会少なくなるんだろうけどね」
女子高生といえば1番遊びたい年頃だろう。
それでもサッカーに全てを注ぐ決断をした英理奈の目は、少し寂しそうでありながら覚悟は決まっていた。
今、1番大変なポジションにいるのは英理奈だ。
自分達に見合っていない目標を掲げる中で、それを達成させる為に絶対必要なキーパーソン。
プレイヤーとしての経験値、コミュニケーション能力、空気を読む力。
チームをチームとして成り立たせる上で、これ以上ないスキルを持っている。
それはまだ少ない付き合いの中でも肌で感じられた。
だからこそ、不安になる。
どこまでの彼女に甘えてしまいそうだ。
役割を1人に集中させるのは悪手も悪手。
改善は早いうちにするべきだろうな。
「そういえば、英理奈。夢乃は元気そうか」
小説で顔を隠しながら小さな声で爺さんが言った。
「あぁ、お母さん? めっちゃ元気にしてるよ! 気になるなら会いに来れば良いのに。昼とかなら全然家いるよ?」
突如名前に上がった夢乃というのは、どうやら英理奈の母親らしい。
なんとなく推測するに、爺さんは母方のお爺ちゃんで娘である夢乃さんが心配なのだろう。
かと言って、あの性格だ。
ひょいひょい顔を見せて、おぉ、ちゃんと元気だななんて口が裂けても言えないよな。
だからこうして、英理奈伝てで話を聞いているのか。
人様の家の事情を盗み聞くのは悪いなとも思いつつも、耳は傾いたまま。
「いやー、そこまでは良いんだよ。俺は俺でこの店があるしな」
「それなら良いんだけどさ。喧嘩も程々にしなよ? 本当はお互い大好きな癖に」
「何言ってるんだ。俺が好きなのは英理奈だけだぞ」
「はいはい、分かった分かった。もう行こっか、はるっち」
真剣な英理奈に対して、おちゃらけた返答をする爺さん。
照れ隠しなのは分かるけど、素直に認められないのは難儀な性格だな。
呆れた英理奈が俺の背中を無理矢理押して店を後にした。
外に出ると僅かに顔を覗かせた太陽が、辺りを最後の力で照らしている。
日中はあんなにも暖かかったのに、今は肌寒い。
すっと鼻から入る空気さえも、じんわりと体温を奪っていく。
どうやらそれは英理奈も同じらしく、ぴとっと肩を触れ合わせながら歩く。
服越しでも伝わる人の温かさが、心までも温めた。
「ウチ、絶対にヴァルキリーカップの決勝へ行きたい理由があるの」
しばらく無言で歩いた後、英理奈がぽつりぽつりと話し始めた。
「決勝に行ったらね、お爺ちゃんとお母さんを観戦に誘うの。そしたら、それをキッカケに仲直りしてくれるんじゃないかなと思って」
「私にそこまで話して良かったの?」
「はるっちだからだよ。はるっちだからこそ、話したかったの」
にこやかな笑顔で笑う。
その瞳の奥は、悲しそうで、寂しそうで。
彼女が絶対に見せてはくれないSOSのように感じた。
「良い目標だけど、それじゃあダメだね。どうせやるなら、これでしょ」
お決まりのポーズになってしまうのはダサいけど、天に向けて人差し指を突き刺す。
「やるから何事も1番を目指さないと」
「1番……。そうだった。決勝行くだけじゃない、優勝しないと! ウチ、欲張りだから欲しいものは全部手に入れたいもん!」
俺の前を無邪気に走る。
その姿から一瞬にして元気になったのが分かった。
彼女がみんなのサポートをするなら、俺が彼女を支える。
落ち込んだ時はいつだって、隣で笑わせてあげられる存在になりたい。
家に帰ると真っ先に自室へ籠る。
才能の塊をどうしても使いたくて仕方なかった。
何年振りかの勉強机と向き合う感覚すら、どうでも良い。
子供の頃にデパートで玩具を買ってもらった時の感覚を思い出しながら、丁寧に梱包されていた包みを乱雑に開封する。
「やばい……緊張してきた。これ本当に頼むぞ」
問題はそこだ。
俺はこのゲームの主人公じゃない。
使えるかどうかは、この石を割って初めて分かる。
もしも効果が無ければ、無意味な石に変わるだけだ。
汗水垂らした時間も全て無意識になる。
どうかそれだけはやめてくれと願うばかり。
手の震えを誤魔化しながら、まずは2つの才能の塊を優しく握り締める。
才能の塊は1回で複数個使用すると、ランダムな1種類のパラメータが複数段階上昇する仕様。
今の最高値は、シュートとスピードのBだから、伸び代は2段階しかない。
成功する可能性に賭けている俺は、常に最善策を選びたいから最初は2個と決めていたのだ。
手に掛ける力を徐々に強めていく。
パリッとヒビの入った音が聞こえた。
ここまで来れば、後はなるようになれ。
完全に粉々にするつもりで一気に握り込む。
割れた才能の塊から神々しい光が現れる。
まるで意思のある生き物のように、俺を目掛けて飛び込んで来た。
素直に受け入れると、体の中へすっと消えていく。
想像していた痛みも高揚感もない。
もしかすると、使えなかったのかと不安になる。
[通知:才能の塊×2個の使用を確認]
[通知:オフェンスの才能値がAに上昇]
[条件達成:初の才能値Aを確認。対象のパラメータを5上昇]
俺にも使えたことに、まずは一安心。
ただし、選ばれたのはオフェンス。
オフェンスも悪くない。悪くはないんだけど、どうしてもスピードかシュートであることを祈っていた分、気落ちが激しい。
パラメータ上昇の恩恵も考えると、勿体無い気がしてしまう。
気持ちを切り替えて、残ったもう1つも使用する。
こうなれば、オフェンスがSになるも良し、最低値のフィジカルがDになるも良し。
元々、不確かだった自身の育成方針をこの1つで確立させる。
[通知:才能の塊×1個の使用を確認]
[通知:スタミナの才能値がCに上昇]
最後に上がったのはスタミナか。
攻撃に大分重きを置いたパラメータの割り振りになった気がする。
通知だけでは分かりにくい部分もあるので、一応ステータスを開く。
【プロフィール】
名前:朝花 春陽
年齢:15歳
所属:雅乃高校 サッカー部
ポジション: FW
【パラメータ】
シュート:41(才能:B)
オフェンス:37(才能:A)
フィジカル:34(才能:E)
ディフェンス:36(才能:D)
スピード:42(才能:B)
スタミナ:34(才能:C)
インテリジェンス:48(才能:C)
【EXスキル】
無限の可能性、果敢な挑戦者
【スキル】
[シュートレンジ強化 LV2]、[ダブルタッチ LV4]、[隠密 LV1]
こう見るとバランス良く才能値が伸びているように思える。
フィジカルは一貫して低いままだけど、スピードを主体として切り込めれば問題は少ない。
ステータス画面を見ながら、何度もシミュレーションを繰り返した。
次第にまとめ切れなくなり、新品のノートまで取り出して思いつく限りのプランを書き出す。
この時間がどうしようもなく楽しい。
エンジェルイレブンを癒やしではなく、攻略としてプレイしていたあの頃を思い出して。
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