022話 プライスレスな写真
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「ふぅー、これで一旦行列は捌き切れたな」
「「つかれたぁー!」」
くたくたになった俺と英理奈は、カウンター席に座りながらぐったりとしていた。
あれから休憩無しで6時間ぶっ続けの接客。
席の誘導、バッシング、料理の配膳などなど。
分からないことだらけで、頭がパンクしそうだった。
俺が用意したのはあくまでも人を呼ぶプラン。
そこから先のことは完全ノープランで挑んだ。
当然、人を呼んだら接客をしないといけない訳で、こうなるのは目に見えていたことなのに。
この店長が、意外と顔に見合わず仕事が出来て助かった。
コーヒーや料理も味は美味いと皆口を揃えて言っていたし、集客を除けば良い人材と言えるだろう。
意外と言えば客層も、俺のメイド服や美少女ギャルの英理奈を観に来る人ばかりではない。
ご年配の方や奥様方も度々見受けられた。
接客の合間に耳を傾けてみると、どうやら前から興味はあったらしい。
それでも、店主の顔を見ていると躊躇してしまうみたいだ。
今日は行列が出来ていたから、思い切って挑戦してみたと殆どの人が言っていた。
「ほら、2人ともご苦労様。今日はコーヒー以外の材料が尽きたからここまでだな」
店長が気を利かせてコーヒーを差し出す。
ふわっと香る大人な匂い。
同じカフェインでも、いつも飲んでいたエナジードリンクや缶コーヒーとは全く違う。
一瞬にして、身の回りを優雅さと気品ある空間に作り上げる。
「それにしても人多かったねー! まじでこれは、はるっち効果だ!」
ぐぐっと背筋を伸ばしながら起き上がる英理奈。
「そんなことないって。英理奈ちゃん目当てのお客さんも多かったよ?」
「2人とも本当助かったぜ。結局、230人の売り上げ40万だからな。滅多にこんな数字見れないっての」
「ちゃーんとその分いただきますけどね」
そこは忘れないでくださいとカウンターから身を乗り出してアピールする。
「分かってるって。ちょっと奮発していれといてやるから」
バックヤードへと姿を消した店長。
どうやら今から給料の準備をしてくれるらしい。
汗水垂らした結果が可視化されるとなるとワクワクする。
これが例え目標金額に達しなくても、良い経験として昇華しよう。
用意が終わるまでの間は、折角入れてくれたのでコーヒーを飲んで待つことに。
ポットに入った角砂糖を4つ入れる。
溶ける前の角砂糖がカップの底に当たる音が聞こえた。
ミルクも入れて混ぜていると。横の英理奈がブラックを飲みながら話しかけて来る。
「はるっちは何でいきなりバイトしてるの? 欲しいものとかあったの?」
「そうなんだよね。どうしても欲しくてさ。今日中にお金が必要なんだよ」
「行動力やば! その可愛過ぎるメイド服を着るなんて、よっぽど欲しい物なんだね! 興味あるからウチもその買い物付いて行って良い?」
「全然良いよ!」
休日にギャルとお買い物。
これは実質デートと言っても過言では……あるか。
どちらにせよ断る理由はどこにもない。
あの堅物な老人店主の相手を1人でするには、少し骨が折れると感じていたところだ。
英理奈の明るさがあれば、辛うじてまともな対話が出来るかもしれない。
「はい、お待たせ。2人の分のお給料な」
目の前にスッと差し出された茶封筒。
店内の照明に翳すと薄らとお札の影が見える。
これが汗水垂らして手に入れたお金か。
そう思うと愛おしいとさえ思えた。
「間違いがあったら悪いからちゃんと今確認しときな」
店長の前で確認するのは失礼かと思い躊躇っていたが、それに気付いた店長が確認するように促す。
英理奈と顔を見合わせ、意を決して封筒を開けた。
不慣れな手つきでお札を数えると、そこには3枚の1万円札が。
目標金額には達していなかったけれど、素直に嬉しいと思える。
これが労働の対価なのか。
33年間生きて来て知らなかった喜びを、この世界で知ることが出来るなんて。
誰が想像出来ただろう。
「めっちゃ大金じゃんか! 太っ腹だねー、店長!」
「ふっ、ここで漢見せなきゃ、いつ見せるんだって話。それより、良いのか? 欲しいもんあんだろ? だったら、さっさと行った方が良いじゃねーか?」
「うん、そうする。ありがとう店長。また暇があれば、バイトさせてよ」
「おう! いつでも待ってるぜ!」
残っていたコーヒーをグビッと飲み干して、店を出た。
店長も最後まで手を振って見送りをしてくれる。
この借りはまた別の形で返すとして、今は和龍堂へ向かう。
和龍堂も同じ商店街なので、歩いて数分もすれば到着した。
最初はかっこよく見えた達筆な文字の看板も、今ではあのジジイが頭をよぎって高圧的にしか思えない。
しかも、結局お金は集まらず、才能の塊を取り置きをやめてもらう必要がある。
なんて言われるか考えただけでも憂鬱だ。
「はるっち、ここに欲しいものあるんだー。……ふーん。じゃあ、入ろっか!」
英理奈に手を引かれて、店の中へと勢い良く入る。
激しく開かれた扉が大きな音を立てた。
奥で小説を読んでいたジジイも、何事かと驚いている。
(しまった! 英理奈にこの爺さんのこと説明してなかった!)
先に説明すべきだったと後悔する。
この偏屈なジジイがこんなことをされてキレない訳がない。
俺が最初に説明していれば、英理奈が怒られることもなかったのに。
「やっほー! お久しぶり、お爺ちゃん!」
「お、お爺ちゃん?」
「え、英理奈か!? どうして、英理奈がここに?」
この爺さんの孫って、英理奈のことだったのかよ。
それならそうと言って欲しかった。
英理奈が怒られると思ってヒヤヒヤしたのに。
「友達の買い物に付き合ってるの。なんかお爺ちゃんの店にどうしても欲しい物があるみたいで」
「友達? んんー……!? 嬢ちゃんは!」
「どうもこんにちは。また来ましたよー」
俺を見るとどんどんと血の気が引いていく。
まさか孫の友達とは思わず、あんな接客をするなんてな。
孫のことが大好きなこの爺さんにとっては、取り返しのつかない失態だ。
俺が口を滑らせれば、英理奈からの評価はダダ下がり間違いなし。
それは本人も分かっているからこそ、無言で先手を打って来た。
俺に向けて手招きをする。
心に余裕が出来た俺は、その手招きに招かれてレジの前まで。
「嬢ちゃん、英理奈のお友達だったのか。なんで早く言ってくれないんだよ」
「そちらこそ、英理奈ちゃんのお爺さんだったなんて。大分性格が違うから気付かなかった」
「それで、なんだが。さっきの事は頼むから英理奈に言わないでくれるか?」
ここは無言の間を作る。
元から言うつもりはないけど、すぐに返答してしまえば相手ばかりが都合の良い話になる。
焦らす事で相手に考えさせることが重要だ。
どの手札を切れば、俺が納得するのかを爺さんは知っているはず。
「ほら、取り置きしてたあの石、割引してやるからさ」
「本当ですか! それは助かるなー」
その言葉を待っていた。
まだ相手が値段を提示していないのにも関わらず、先手として全額5万円をカウンターに置く。
半額まで値切るとは思わず、少し動揺する爺さんだったが、諦めてその値段で会計を進めた。
「ったく、交渉上手な嬢ちゃんだよ」
「まぁまぁ、そんな顔しないでさ。お礼と言っちゃなんだけど、これあげるよ」
ポケットに閉まった携帯を取り出して、慣れた手つきで写真フォルダを開く。
そして、1枚の写真を選び爺さんに見せた。
「こ、これは」
喫茶店の仕事終わりに、こっそり着せていた英理奈のメイド服姿。
可愛いので写真を撮っていたのだ。
孫好きの爺さんなら、これは喉から手が出る程欲しいはず。
5万円を割引きしたとしてもお釣りが来るくらいの価値がある。
「本当にくれるのか? 嘘じゃないよな?」
「ここまで来て嘘なんて言わないよ」
「……この石、まだ在庫があったはずだからそれも全部持って行け。交渉ってのは、対等じゃなきゃいけないからな」
思っている以上の効果があった。
30万円の買い物が5万円で買えるとは。
こちらとしては願ったり叶ったりなので、遠慮せずに3つの才能の塊をいただいていく。
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