021話 今日の俺はメイドさん
誤字脱字や文章の下手さについてはご了承下さい。投稿予定時間になるべく投稿できるようにします。
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ゲーム内でお金を稼ぐ方法は限られている。
余計な所がリアルなので、試合に勝ったり、練習したりしただけでは当然お金は集まらない。
なので必然的に効率が良いのは、学力を上げることでお小遣いの金額を上げるか、単発バイトをするかの2択。
前者は、1度金額が上がれば定期的にその金額が手に入るという長期的なリターンが望めるだろう。
ただし、時間的コストが大きい。
自主勉強を何度かしてから、定期テストを受ける必要がある。
周回プレイであるなら、こちらの方がおすすめだけど、初回は圧倒的に後者。
そんな訳で俺が最も稼げると結論付けた店の前にいた。
これまた同じ雅野商店街の通りに位置する何の捻りもない喫茶店。
立て看板にメニューと店名の珈琲・チルタイムと書かれている。
和龍堂と同じく、店内に客が全くいない。
看板を見て立ち止まる人はいるけれど、中の様子を伺うと軒並み立ち去っていくのだ。
おしゃれな観葉植物や白を基調としたインテリアなどは女子受けしそうだけど、所々に感じる男の遊び心を感じさせる飾りと店主の下心が全面に伝わる顔がそうさせる。
「ったくよー、まーじで暇じゃんか。なんでかな、全く。可愛いちゃんねーが来るって聞いたから、喫茶店始めたのにこれじゃ意味ねーよ」
「人がいないからって、そんな独り言呟くのはどうかと」
「うおぉ!? びっくりした! いらっしゃいませ……で良いのかな?」
人が入ってくるとは思いもしていなかったらしく、声を掛けると突っ伏していたおっさんが跳ね上がる。
「いや、客じゃないですよ。今日はここで働きに来ました」
「んんーー? 俺、バイトなんて雇った覚えはないぞ」
そう言いながら、俺の身体を舐め回すように観察するおっさん。
こんなにも不快な視線は今まで経験したことがない。
全身を這い上がる寒気が、鳥肌を立たせる。
「女の子にその視線は厳しいなぁー。まさか、女性客全員にそんな顔してないよね?」
「…………してないよ」
完全にしてる人の間だよ、それは。
ダメ店長が経営する人気のない喫茶店。
これのどこが稼げるのかと疑いたくもなる。
だけど、逆を言えばこの店に介入する余地があるとも取れる。
俺がいつも以上の売り上げを作り、賃金として労働に見合った対価をいただく。
その為に秘策もちゃんと用意してある。
8万円稼げるだけの売り上げを作る、完璧でとっておきの秘策。
「働くつったってなぁー。見ての通り、店はガラガラ。誰かの手を借りるどころか俺の手も余ってるくらいだぜ」
「ちょっとお手洗い借りますね」
「えぇー、今度はトイレー? 現代っ子って訳分かんないぜ。働く話はー? どうすんの?」
頭をポリポリと掻きながら、困り果てている。
勝手に入って来た客ですらない女子高生相手なのだから仕方もないか。
本来であればつまみ出されてもおかしくないけど、俺の言葉に耳を傾けるくらいには暇なのだろう。
「ちゃんと考えてあるから」
背中を向けて歩きながら、ヒラヒラと手を振る。
「ったくよ。いつの間にかタメ口だし」
歳下の女の子に遊ばれているように感じた店主は、困った顔をしながら定位置に戻ってまた項垂れ始めた。
──5分後
俺は意を決してトイレの扉を開ける。
実を言うともっと早くから出ることは出来た。
しかしながら、恥じらいが邪魔をして、中々ドアノブに手を掛ける勇気が出なかった。
「おぉーー! すごいな! 可愛い!」
「これが秘策だよ、おっさん」
白と黒のバランスが完璧な2色に魅入られるメイド服を着ていた。
ヒラヒラと舞う少し短めのスカートが頼りない。
だけど、俺は知っている。
この頼りなさこそがアホな男共を虜にするのだと。
これを1日着て接客すれば、かなりの集客が見込めるはずだ。
しかも、万全を期す為に英理奈へ自撮り写真送り、店名と場所と共に拡散するようにお願いしてある。
彼女の人脈を活用すれば、見込みでは100人くらいは来てくれるはず。
後は1人1人にどれくらい売れるかの勝負だ。
「確かにこれはいつもより人が集まりそうな気がするな。しかも、それだけじゃねぇ。眼福過ぎて俺のやる気も上がって来たぜ!」
「単純な人だな。まだ客が来るかも分からないでしょ」
「いーや、これは絶対に来るね。ほら、噂をすれば誰か来るぞ」
入店したのは見覚えのある金髪少女だった。
彼女に連絡してからまだ数分しか経っていないのに、よくここに辿り着いたものだと関心する。
家が近いのは間違いないだろうけど、その行動力と決断力には乾杯だ。
1番乗りが英理奈なのは解しゃ───、
俺の身体に衝撃が走る。
まるでタックルのように抱き付いて来た英理奈。
勢いを受け止めることが出来ずに、2人で倒れ込んでしまう。
言葉も発さずにいきなり抱き付くのは、流石に陽キャ過ぎる。
美形なお顔が目と鼻の先。
それでも動じなくなったのは、多分獅子王先輩のおかげ。
この世界は美形な女の子で溢れている。
「が・ち・で、かわいい!!!」
最初の一言目はそれだけだった。
メッセージでも伝えられただろうに。
でも、純粋な言葉が純粋に嬉しい。
文面だけでは表現できない感情が込められている。
「まじでやばい! 今日、ここで1日バイトするんでしょ! かわいい〜!」
「あ、そうだ。ついでに英理奈ちゃんも働こうよ。その方が絶対客来るし。ねっ? 良いよね」
「もちろんだとも。可愛い子は何人居ても良いからね。メイド服はその子の持参だからないけど。まぁー、ギャルはギャルでウケ良さそうだしそのままで良いか」
話の分かる店長だ。
ギャルって存在するだけで属性になるんだよな。
俺の付け焼き刃のメイドより歴の長いギャルの方が需要ありそうかもな。
「やったー! じゃあ、ウチもがんばろっと! 人呼ぶのは得意だから任せといて」
はしゃぐギャルを横目にまたしても誰かが入ってくる。
今度も知り合いかなと思ったが、全く知らない顔だった。
つまりはお客様という訳だ。
英理奈と俺は急いで立ち上がり、接客の準備を始める。
「ここって、SNSで見た店であってますよね?」
「そうです! 見てください、あの可愛いメイドちゃんを!」
「いらっしゃいませ」
頭の中で思い描いたメイドの仕草で客を出迎える。
アニメから得ている知識なので、多少の誇張はあるかもしれないが、ウケが良ければそれで良い。
入り口の前で立ち往生するも何なので、席に案内する。
すると、またしても1人入店して来た。
先程のように接客していると、次から次へと客が入店し始める。
何事かと思い、店の外を覗くと入り口からずらっと列を成していた。
これはゆっくりしている暇はない。
打ち合わせもせずに、それぞれが状況を見ながら動く。
意外にも上手く回る店内に驚きながらも、手は休めずに次々とお客様を捌いた。
ご覧いただきありがとうございました。
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