019話 放課後女子会 後編
誤字脱字や文章の下手さについてはご了承下さい。投稿予定時間になるべく投稿できるようにします。
面白いと思っていただけたら評価やコメントお待ちしております!
食事がある程度進み、美味しいと言い尽くした頃合いで、また雑談に花を咲かせる。
内容は幼少期はどんな感じだったのか、休日はどうやって過ごすのかなど、本当に他愛もない話ばかり。
だけど、俺は少し気まずい。
口から出た話は全て出まかせで、その場凌ぎの作り話。
なので、必死に自分の分かる話題へ方向転換をさせる。
「それでさ、今後のことについてなんだけど。折角だし、2人には伝えておいた方が良いよね」
少し畏まってはみたが、大した話をするつもりはない。
顧問やキャプテンの代わりとなって大々的に動くと決めた以上、仲間にはプランの共有しようと思っただけだ。
それなのに先程の英里奈のキャプテン発言もあって、2人とも背筋をピシッと正して張り詰めた空気を演出する。
軍隊じゃあるまいしともっとラフにして欲しい。
多分、英里奈はわざとやっているけど、杏は素でやっている気がする。
だから、余計真面目にやらなければならない。
「突然ですが、練習試合を申し込もうと思います」
「おぉー、本当にいきなり。でも、本気で勝ちたいなら、いきなり予選よりも練習試合は確実に挟んだ方が良いのは確かだよね」
流石、英里奈様。意図を理解して納得するのが早い。
練習試合の経験は、記憶的な部分でもステータス的な部分でも作用してくる。
確かゲームでの試合時間は全試合統一して90分。
その時間で貰うにしては結構な量の経験値になる。
極論、試合を一生やり続けたら1年でパラメータの基礎最大なら4つくらいはカンスト出来る。
運営がそんなこと許すはずもなく、月毎の試合数に制限があったという話は一旦置いておき。
話を要約すると、練習試合で全員のステータスを強化しようね大作戦だ。
「練習試合の大切さは私にも分かるんですけど、そもそも人が集まるでしょうか? 同じ1年の犬飼さんを説得出来たとしても5人。残り6人は最低でも必要ですよ」
「人数については問題ないから安心して。確かに先輩達が来なければ試合にはならないけど、練習試合すら参加する意思がない人がいるってことが分かるから」
「つまり、……どういうことですか?」
俺のオブラートに最低限包んだ遠回しな言い方では、杏に伝わなかったようだ。
「やる気ない人を待つ必要はないってこと。だったら、新しい部員探した方がチームとして成り立つでしょ」
「……はい!? ってことは、6人部員を集めるところからスタートするってことですか!?」
「来なければそうするつもりだよ。仮に先輩達が抗議しても実際活動してないのは事実だし、顧問の刈谷崎先生と相談すればスタメンくらいは自由に動かせるでしょ」
緑茶の入ったコップを持った杏の手は、動揺で震えまくっていた。
左へ右へと波打つ水がいつか溢れてしまいそうだ。
そのまま器用に口元まで運び、とりあえず一口。
味がするのを感じてもらえば、これが夢でないことは理解してもらえるだろう。
「仮に来なければの話だからね。対立しようと思ってる訳じゃないし、私的にも来てくれた方が嬉しいから」
あまりの取り乱し方だったので、補足説明をしておく。
基本的には素材の味を楽しみたいので、雅野の現メンバーから変えなくて済むならその方が良い。
しかし、あくまでも優勝が主題なので可能性として例を挙げたまで。
真面目な杏には、1、2歳離れただけの先輩がかなり上の存在に思えているはず。
だからこそ、俺の発言に動揺が隠せない。
学校ではその価値観は素晴らしいことだ。
先輩を敬う姿勢は社会に出ても重要だから。
ただし、スポーツにおいては違う。
その固定観念がプレー中の思考に影響を及ぼす。
勝つ為なら先輩や後輩なんて関係ない。
それを杏は念頭に置いていて欲しい。
「あははは! 結構大胆なこと言うねー、はるっち。でも、ウチもその意見に賛成かな。本気でヴァルキリーカップ優勝を目指すウチらにとっては、邪魔な存在になるからね」
「うぅー、ちょっと怖いけど、それしかなさそうですね。ここは先輩達が来てくれることを祈ります」
「対戦校にもよるんじゃない? てか、どこかウチが気になる。教えてよ! はるっち!」
向かい側に座っていた英理奈がテーブルから身を乗り出して、顔を近付けてくる。
あまりの近さで咄嗟に目を逸らす。
一瞬でも反応が遅れたら、視線が顔より下に行ってしまうところだった。
女子同士だからと無防備になっている英理奈は、服の隙間から見えてしまうのもお構い無しだ。
落ち着いてくれと嗜めながら、何とか座り直すよう促す。
これ以上は俺の身が持たない。
自分の身体を見てもどうも思わないのに、他人だとドキドキしてしまうのは俺に素質があるからなのかも知れない。
いや、普通に元男だからか。
「対戦校の候補はあるよ、ダメ元だけどね」
「勿体ぶらないで教えてくださいよー、はるっち先生」
「立海山」
その名を口にした途端、場が凍りつく。
まさかヴァルキリーカップの本選常連校の名を挙げるとは思わなかったようだ。
あり得ない発言に怒りを通り越して、呆れていた。
これが正常な反応であると分かっているけど、俺も何も考えずに立海山と対戦しようとしている訳ではない。
「立海山ってかなりの強豪校ですよ? まともに私達と取り合ってもらえるでしょうか?」
「大丈夫だと思う。特に今年の立海山はね」
「今年の立海山は? 去年と違う部分があるってことなの? ウチからしてみれば、毎年最強って感じするけど」
「……!? そういうことですか。確かに立海山は最強です。だけど、去年の優勝は天ノ宮、下馬評最下位の高校。立海山が天ノ宮に敗れた今、どの高校にも警戒を強めているはず」
代わりに全て杏が説明してくれた。
俺は横でうんうんと頷きながら、ドリンクバーのコーヒーを啜る。
「でもさ、でもさ。そうだとしてもウチと戦う理由にはなんなくない?」
「それはそう。だから、週末に直談判しようと思うんだよね。多分、練習はやってるだろうから」
「はるっちって見た目に反して大胆だねー。そういうところめっちゃ好き」
友達としての好きなのは分かっているけど、嬉しいな。
ギャルに認められるってこんな気持ちなんだ。
今までに味わったことのない不思議な感覚になる。
話をしていると杏の携帯に天気予報の通知が来る。
1時間後の降水確率が高いらしい。
時間も丁度良い頃合いだったので、テーブルの食器を綺麗にまとめ上げて会計する。
ファミレスに入った時よりも遥かに客の少なくなった店内。
レジもすぐに店員が対応してくれた。
「お会計が合計で6000円になります」
「じゃあ、電子マネーで」
ここはまとめて俺が払う。
誰かと外食なんて機会無かったけど、会計を率先してやる人って多分カッコいい。
だから、2人の前で格好付けたかった。
「ありがとう、はるっち! 後で2000円送るね」
「私は現金なんですけど、これ」
本当は奢ってあげれたら1番良かったんだけど。
そこまでは上手くいかなかった。
金策もそろそろ本格的に考える必要がありそうだ。
自身の強化の為に欲しいものもあるしな。
主人公が買っていなければ、"アレ"がまだ残っているはずだ。
主人公特権のアイテムではあるが、俺に適応されるかは試しておきたい。
雨の降り掛けている曇掛かる空の帰り道。
不安な幸先を暗示しているようにも思える。
それでも立ち止まってはいけないと歩み続けた。
ご覧いただきありがとうございました。
よければ評価、ブックマーク、いいねお願いいたします。めっちゃモチベーションに繋がりますのでどうか、どうか!!!




