018話 放課後女子会 中編
誤字脱字や文章の下手さについてはご了承下さい。投稿予定時間になるべく投稿できるようにします。
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注文した料理が出来るまで時間がある。
ドリンクバーさえ知らない杏の為に、みんな飲み物を注ぎに行くことにした。
まとめて置かれたプラスチック製のコップを手に取って、まずはボタンを押して氷を入れる。
まだ暑いという時期でもないのだけど、飲み物はキンキンに冷やした方が美味いと思っている人間なのでしっかりと氷は必須だ。
他の2人は体を冷やすとまずいからと遠慮していたけど。
「まずは私から入れるね。うーんと……」
企業のロゴが描かれてたドリンクサーバーには、炭酸からオレンジジュースなどのソフトドリンクが縦三列に備えられている。
飲み物の種類なんて、どこの店舗に行っても大差はない。
それはここも変わらないのだけど、いざドリンクサーバーを目の前にするとどうしても迷ってしまう。
普段なら炭酸一択。
しかし、今回は友達と来ていることもあり、不意にゲップが出てしまうことを恐れて炭酸の選択肢を消す。
そうなるとフルーツ系のジュースか乳酸菌飲料が無難か。
「悩んでるみたいだから、お先に失礼〜」
横から英理奈がキレキレのカットインを披露。
何の迷いもなく、コーラのボタンを押す。
シュワシュワと炭酸の弾ける小気味良い音が、飲んだ時の清涼感を想像させる。
「じゃあ、私はこれにしよっと」
さっきまでの時間はどこへやら。
完全に思考が炭酸に戻って来たので、サイダーを選んだ。
結局のところ、考えるよりも実際に見せられた方が為になる。
そういう昔からの言い伝えみたいな学びを、女子高校生の放課後から得た。
「で、あーちゃんは何を飲むのかなー? オレンジジュース? リンゴジュース?」
「そうですね、お茶にしようかな」
ここに来て、まさかの緑茶。
誰もがドリンクバーと聞いたら、甘いジュースを選びがちだというのに緑茶だと。
そんな大人過ぎる行動、予測出来るはずがない。
「おっ、やっぱり? この緑茶選ぶかもなーって思ってたんだよね」
「それって後から言ったもんがちじゃんか」
「いやいや、マジのマジだよ! ウチ、結構そういうの当たるの上手いんだよね」
「なんか、英理奈ちゃんがいうと説得力あるな」
テーブルに戻ると、みんなで乾杯。
カコンと軽い音が鳴る。
様式美と言わんばかりに、キンキンに冷えたサイダーを飲んだ。
「ゴホッ! ンンッ! ゴホゴホッ!」
「ちょっ!? 大丈夫!? 一気に飲もうとするからだよー」
気管にサイダーが入り、激しくませてしまう。
これではゲップ以前の問題だ。
なるべく気丈に振る舞ってみせたが、苦しくて度々咳き込んでしまう。
隣の席の杏が優しさで背中を摩ってくれる。
まるで介護されているみたいだ。
「ふふっ、結構お茶目ですよね春陽さんは」
「そうなの? ウチのイメージは熱い系だと思ったんだけど。ほら、あれとかさ」
そう言って英理奈は人差し指を天高く突き上げた。
落ち着く為に水を飲んでいたのに、またしても俺は激しく咳き込む。
英理奈のやってみせたポーズには酷く既視感があったからだ。
込み上げる羞恥心、何故知っているのかという動揺。
体を震わせながら、英理奈に問い詰める。
「ど、どこでそれを?」
「昨日の昼休み、ちょっとだけ3年の人に用があって3年教室行ったら偶々見かけたんだよ。声掛けようと思ったんだけど、盛り上がってたみたいだからさ」
「私、それ知らないです。何があったんですか?」
杏が教えて欲しいと強請む。
出来れば説明はしたくないけれど、ここで教えないとなると仲間外れみたいで可哀想だ。
自分で自分の恥を解説する新手の拷問に耐えながら、昨日あったことを一から振り返る。
「なるほど、そんなことが。そういえば、一昨日も顧問の刈谷崎先生に会いに行った時、同じようなこと言ってましたよね」
「うっ、わざわざ掘り起こさないでよ」
「なんで、なんで? すごい良いことじゃん! あれ見て感動したから、ウチは最初から練習参加を決意したんだから」
そういえば、練習参加を賭けた今日の勝負に英理奈は参加していなかった。
どんな深い理由があるのかと思っていたが、どうやら獅子王先輩との会話に感化されたらしい。
まだ気恥ずかしい部分もあるけど、同志が増えた事は素直に嬉しい。
「それにウチとたかりんってセットで強い感じするじゃん? たかりんはそもそも1人でも強いけどさ、ウチはたかりん無しだとめっちゃ弱いからさー。少しでも新しい武器を手に入れておきたいってわけ」
「よ、弱い? そんな事全然ないですよ! 私、英理奈さんの試合、全部見たけどびっくりするぐらい上手いですよ」
「すごい嬉しいけどね、こればっかりは事実なんだなー。上には上がいるって感じかな。やっぱりウチが1番じゃないと意味がないんだよ、結局は」
俺も杏と同じく英理奈を弱いとは思わない。
それどころか、同学年では頭1つ抜けているとさえ評価していた。
ただし、彼女が最強かと言われたら確実に違うと言える。
ゲーム内基準で考えても上位30パーセントの強さがせいぜいだ。
だからこそ、彼女は一緒に練習参加を選んだ。
自分の強みを良く理解しているからこその発想。
献身的なサポートは、対象の理解を深めてから真価を発揮する。
故に、多くの仲間との交流が必要不可欠だと考えたのだろう。
本人は胸の内を語れて満足だと言わんばかりに、コーラをグッと勢い良く飲む。
見る見る減っていくコップの中の黒い液体。
3分の2を飲み終えた段階で、ようやく机の上に置かれた。
「英理奈ちゃんが強い、弱いはさておき。新しいことに挑戦することは悪い事じゃないよね」
「そういうこと! だから、じゃんじゃんウチのこと鍛えてね、はるっち」
「うぇ!? お、私?」
「当たり前じゃんか。今のキャプテンさんには悪いけど、ウチははるっちの方が実質的なキャプテンだと思ってるからね」
ヴァルキリーカップで優勝させる為に動いているのは事実だけど、キャプテンと言われたら荷が重い。
当初は影でこそこそと暗躍しながら、部員の強化にあたろうと思っていたぐらいだ。
サッカー部の現状のせいでプランは既に崩壊気味で、率先して動いているのも事実。
ここは思い切り主導権を握る方向へ舵を切るのが吉か。
そうした方が万事上手く行く気がする。
それくらい今の先輩や顧問が頼りない。
「お待たせしましたー、ごゆっくりどうぞー」
店員が会話の邪魔にならないタイミングで料理を運んでくる。
テーブルに並べられた料理は、今までの会話を全て忘れさせ、ただ美味しそうという感想だけで頭を埋め尽くす。
出来立てで湧き上がる白い湯気が、食欲を一層掻き立てる。
「料理来たから早速食べようよ! いただきます!」
「「いただきまーす」」
3人ともそれなりにお腹が空いていたようで、一度手を付けるとどんどんと箸が進む。
今までの中身のある会話は嘘のように、しばらくは美味しいを連呼するだけの時間が続いた。
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