012話 不甲斐ない者達
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翌日の昼休み、俺は1人で3年生の教室エリアを彷徨いていた。
真宮先輩と話をしたい、その一心で。
キャプテンを任されているのに、チームで練習をしないのは何故か。
はっきり本人の口から聞かせてもらいたい。
だけど、確固たる決意は少しずつ揺らいでいる。
さっきから通り過ぎていく3年生の視線が痛い程刺さる。
なんで1年生がここにいるんだと言わんばかりだ。
他学年の生徒が物珍しい気持ちは分かるけど、見せ物ではないのでジロジロ見るのはやめてほしい。
無数に聞こえる会話同士が雑音となって耳に響く。
内容などは全く分からないが、だからこそ笑い声が目立つ。
あの笑い声は俺に向けられているのではなかろうか。
例え自意識過剰だと思われても、今の俺はそう考えてしまう程無力だった。
「こうなるんだったら、杏も連れてくるんだった……」
最後まで一緒に行こうかと打診してくれていたのに、18歳のお子様相手に怯むことはないときっぱり断ってしまったのが運の尽き。
気持ちはさながらサバンナの草食動物だ。
いつの間にか開けなくなっていた手は、緊張のせいか少しずつ湿り始めている。
汗で水溜りが出来る前に、真宮先輩を見つけなくては。
「君、ここで何をしている。ここは3年生の教室だ、1年生の場所ではないよ」
声に馴染みこそなかったが、奥底に眠っていた記憶はちゃんと覚えていた。
碧色の瞳にグレーのショートカット、乱れのない立ち居振る舞い。
この人が俺の探していた真宮先輩だ。
「真宮先輩に用があったんですよ」
「何故、私の名前を知っている。私は、君と面識がないと記憶しているが」
「サッカー部に入りました、1年の朝花 春陽です。先輩のお名前も入部した時に、刈谷崎先生から伺いました」
サッカー部と聞いた瞬間、ピクッと眉が反応したのを見逃さなかった。
「そうか、新入部員か。わざわざ挨拶に来るとは殊勝な心掛けだ。だが、挨拶はこれくらいで十分だろう。用が済んだのなら自分の教室へ戻りなさい」
わざわざ3年生の階に乗り込む人間が、挨拶だけしたい訳ではないと本人も気付いているはず。
手短に済ませてさっさと返そうとするのもその証拠。
まともに取り合うつもりがないのだろう。
「サッカー部が練習をしていない理由を教えてもらいに来ました」
「それを聞いて、君に何が出来る。一任されているのは私だ。理由を聞いたところで結果は変わらない」
「何が出来るかわかりませんが、入部した以上は知りたいです。このままでは納得出来ませんよ。練習もせずにどうやってヴァルキリーカップを勝ち抜くつもりですか」
「今年の雅野高校は……ヴァルキリーカップには出ない。だから、練習の必要もない。話は以上だ。これ以上、何も話すつもりはない」
彼女の目には光が感じられない。
ストーリーに登場するキャラに共通する、サッカーを通して希望の道を突き進むあの光が。
だから、掛ける言葉を見失った。
もっと強く否定する気でいたのに、それすらも躊躇う負の空気。
一体、彼女は何を思い、何を背負っているのか。
小さくなっていく彼女の背中を見ながら、その答えが廊下に漂う春の匂いと共に、俺の下へと運ばれてくれば良いのにと思った。
「何も聞けなかったけど、刈谷崎先生の言っていたことは本当らしいな。仕方ない。先輩達が練習をしないならまずは1年生だけでも───」
「おっ、なんか1年坊がいるじゃねーか! んだよ、誰かの妹か? 俺が探してやろーか?」
180センチくらいの巨体が目の前にスッと現れる。
ライオンの立髪みたいに迫力のあるオレンジ色の髪が、太陽の光を僅かに反射させて神々しい。
本来は制服着ないといけないはずなのに、ダラっとしたジャージを着ている。
真宮先輩とは対照的な彼女の名前は、獅子王 灼巴。
知っている雅野のサッカー部員の内のもう1人。
まさか、ここで2人に遭遇出来るとは。
別に挨拶をする予定があった訳ではないが、良い機会だ。
軽いコミュニケーションくらいは取っておこう。
「お疲れ様です! 私、サッカー部に入部しました、朝花 春陽です! よろしくお願いしゃっす!」
「おーおー! そうかそうか! 可愛い後輩だったかー。元気の良い挨拶、嫌いじゃねーなー。わざわざ挨拶周りでもしてたのか?」
「いえいえ、真宮先輩にお話があって。なんで練習してないのかを聞きに来ました」
「成程な。そりゃー、新しく入った1年坊は気になるわな。でも、教えてくれなかっただろ? 実乃は」
先程までの豪快な喋り方と違い、真宮先輩に似た暗い雰囲気を感じさせる。
「まぁ、可愛い後輩に言うのはなんだけどな。悪いことは言わねーから、さっさとサッカー部なんて辞めて他の部にでも入るこったな」
信じられない。
男勝りな性格の獅子王先輩までもがこんなにも弱々しくなるなんて。
この部をヴァルキリーカップで優勝させるなんて本当に出来るのか。
暗い2人に中てられた俺にまで、そんな不安が押し寄せる。
でも、この空気に負けてはいられない。
最後に勝てるのは、最後まで勝とうとした人間だけだ。
勝負事の世界で何故か勝てましたなんて言えるのは、天才を超えた天才のみ。
自分がそうでないと知っている者に、歩みを止める資格はない。
「私に辞めろとおっしゃいますが、では、何故獅子王先輩は何故サッカー部に残り続けるんですか。部として機能していないサッカー部に残り続ける理由は」
「なんでだろうなー……」
彼女は答えに躓き、雲ひとつない晴天を眺めた。
閉まった窓ガラス。太陽に向けて手を伸ばしても、透明な板が邪魔をする。
「多分気付いてんだよ、俺達みんな。ちゃんと全部。どうしようもなくサッカー好きだって。それでも勝手に折り合い付けちまうんだよ。じゃなきゃ、去年の苦しみから抜け出せないから」
去年の苦しみ……それが現状のサッカー部を作り上げた要因。
恐らく、予選初戦敗退のことだろう。
その傷がまだ癒えぬまま、今を彷徨っている。
だから、全てを諦めて納得しようということか。
俺は去年の雅野を詳しくは知らない。
情報として負けたとは知っていても、そのバックボーンまでは語られることのない話だ。
だから、どれだけ悔しいのかを推し量ることなど出来ない。
それでも……それでもやっぱり戦う前から匙を投げる彼女達に共感は出来ない。
「……なーんて、俺らしくねぇーな! まぁ、今のは気にすんな! お前達、1年には申し訳ないけど、俺達の考えは変わらない。済まんな」
「分かりました。だったら、指を咥えて見ていてください───」
ビシッと天に向けて指を突き立てる。
「私がてっぺんの景色を見せますから」
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