011話 杏の成長日記
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練習すると言ったけど、まずは杏をどうやって育成するか方針を決める必要がある。
一度育て始めるとステータスをリセットする方法はないので、ここは慎重になるべきだ。
本来であるならば、新入生は空いているポジションを見て、初期適性との兼ね合いでコンバートするのが一般的ではあるが……。
今は不確定要素が多すぎる。
現時点で分かる情報を整理すると、倉鷹コンビとキャプテンの真宮先輩はMF、俺ともう1人去年のスタメンである獅子王先輩はFW。
そうなるとGKとDFが空いてる状態か。
DFメインで育成して、GK不在の場合は早い段階で舵を切るのが無難だろう。
と、いつもの俺なら結論付けていただろうが、今はこんな状況にピッタリのスキルがある。
使いたくてウズウズしていたスキル。
(発動ッ!スキル『分析』!)
【プロフィール】
名前:藤村 杏
年齢:15歳
所属:雅乃高校 サッカー部
ポジション: 未定
【パラメータ】
シュート:19(才能:F)
オフェンス:23(才能:E)
フィジカル:31(才能:B)
ディフェンス:30(才能:A)
スピード:25(才能:E)
スタミナ:28(才能:C)
インテリジェンス:55(才能:A)
【EXスキル】
勤勉な努力家:育成効率1.5倍
【スキル】
[鋼の意志 LV1]、[ラインコントロール LV1]
一見するとパラメータの低さが目につくが、それを補えるEXスキルと才能がある。
育成効率1.2倍のEXスキルを入手したことがあるけど、その選手は似たようなステータスでかなり良い線まで育った。
つまり、杏も十分戦えるようになるわけだ。
パラメータのバランスを見ると、神が仕組んだのかと錯覚する程のDF型。
ディフェンスの才能とフィジカルの才能が高いのは有り難い。
才能の恩恵によるパラメータの最大値増加のことも考えれば、どちらもMAX140にはなる。
「えぇー、こほん。杏にはDFになる為の練習をしてもらいます」
「DF……ですか?」
「ゴールしたのが楽しかったって言ってたし、本当はFWをさせてあげたいんだけどね。色々考えた結果、DFの方が向いているのかなって」
「今のは嫌だからじゃないですよ! 素人の意見で申し訳ないんですけど、DFって言われてもどんなことするのかイメージが湧かなくて」
ポリポリと頬を掻きながら恥ずかしいそうに彼女は言った。
FWはシュートを決める、MFは全体のサポート、DFはボールを奪う。
これくらいの認識はあるだろうけど、実際にやるとなると具体的にはどうすればと思うのも仕方ない。
「さて、何から教えるべきか。……よし、ここは簡単なお遊びから始めようか」
「お遊びですか? うーん、なんでしょう? さっぱり分かりませんね」
「お散歩ドリブルだよ、お散歩ドリブル」
「……そんな既知の言葉みたいに言われても。まぁ、察するにボールを蹴りながら歩くとかですか?」
「大正解!まずはボールに慣れること。これが基礎中の基礎だからね」
詳しい説明は省いて杏にボールを渡す。
習うより慣れろというのが俺のポリシーなので、体験しながら説明する程が頭に入りやすいだろうという考えだ。
お手本としてボールを真っ直ぐに蹴りながら、前を向いて歩いて見せる。
慣れたらそこまで難しいことではないんだけど、最初は苦戦するだろうな。
初心者はまず真っ直ぐボールを蹴るのでさえ戸惑う。
ましてや、ボールを見ないなんて以ての外だ。
「なんか思ってるより簡単そうですね」
「見るだけならそう言えるんだけど、実際やってみると分かるんだよなー、これが。物は試し、早速やってみよっか」
「分かりました。えぇーっと、こうやって……うわわっ、待って! どこ行くのー!」
案の定、ボールは明後日の方向に転がっていく。
それを両手を広げて追いかけていく様子が可愛い。
俺がもう一度と声を掛けようとする前に、自分からボールを足下に置いて再開する。
やる気と根気はあるみたいだ。
この様子だと2、3日くらいで、最初の目標は達成できるな。
「どうです…かっ?真っ直ぐには……ほら、蹴れるように……」
お世辞にも上手とは言えないが、不器用ながらも頑張っているのは分かる。
ここはその頑張りを否定しないためにもお世辞を交えながら、モチベの維持に専念するか。
「良いよー! 上手い、上手い! もうちょっと蹴り方工夫すれば完璧だよ!」
「んー、本当ですか? ……ありがとうございます」
疑ってはいるものの練習自体は楽しそうだった。
練習開始して10分間、ノンストップでドリブルを続けている。
細かいミスをする度に、ブツブツと誰に聞かせるでもない声量で反省を始めて、直ちに修正を行う。
時折アドバイスをするだけで、後は勝手に成長していった。
最初はどうなるかと思ったが、杏の指導は案外どうとでもなりそうだと分かったので、今日の収穫としては十分か。
どちらかと言えば、今はサッカー部がチームとして機能していないことの方が気になるところだ。
寧ろ、廃部になっていないのが奇跡と言える。
「あっ、あれ英理奈さんと鷹津さんじゃないですか?」
練習していた足を止めて、グラウンドの近くを指差す杏。
どこだ、どこだと目の上に手を当てながら辺りを見渡すと、杏の言う通り仲良く会話をしながら歩く2人を見つける。
英理奈が一方的に話しているようにも見えるが、鷹津も嫌ではなさそうだ。
「おーい、2人共ー! 今帰り?」
「げっ……朝花 春陽……」
眉を顰めて、嫌なものを見る目で俺を睨み付ける。
「げって何、げって。私、何にもしてないじゃんか」
「ごめんねぇー、ウチのたかりんが。ウチらは今から帰ろうと思ってたんだけど、そっちは早速あーちゃんの練習?」
「そうそう。サッカー部は練習してないみたいだから、私達だけでもと思って。そうだ! 2人も一緒に練習していかない?」
英理奈は人懐っこい性格をしているけど、鷹津は気難しそうだから、こちらから積極的に絡みにいかなければ距離も縮まらないだろう。
先輩達との繋がりも希薄な現状では、同学年で交流を深めるのは重要だ。
「嫌。アンタと練習するのだけでも嫌なのに、ボールを蹴るのさえまともに出来ない下手な子も一緒とか無理」
「ちょっ、たかりん言い過ぎ! 言い過ぎ!」
杏は下の方を向いたまま、顔を上げない。
流石に面と向かって下手と言われて傷付いているのだろうか。
「……やっぱり下手ですよね。良かったー、正直な意見が聞けて」
口から出たのは、思っていたのと違う言葉だった。
「なっ、強がってるだけでしょ? アタシはアンタを貶してるのよ?」
「確かに悔しいですけど、経験者の方から見れば拙いのは当たり前ですし……。それに春陽さんは気を遣って褒めてくれますけど、私的には鷹津さんみたいに厳しく言ってくれた方がよしっ、見返す為に頑張ろってなりますから」
「ふ、ふんっ。アンタのその根性だけは認めてあげるわ。でも、どちらにせよ一緒に練習はしない。要件がそれだけなら帰るから」
これは杏の勝ちだな。
意表を突かれた鷹津は、逃げるようにそそくさと立ち去っていく。
英理奈も後を追っていくが、最後にこちらを振り返りジェスチャーだけでごめんねと伝えている。
杏に向けた謝罪だろうけど、本人にはその意図が伝わっていないらしく、なんで謝っているのだろうという顔をしていた。
この状況が面白くてつい笑ってしまうと、それもまた杏に謎を呼ぶ。
困惑を吹き飛ばす為、再度練習を始めた杏は心なしか上手くなっていた気がした。
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