殴り合い
「ホントにいいのね? やめるならいまだよ)
「心配はない」
「あんたほんとに往生際の悪いね」
僕と愛花は全国中学卓球大会あと一歩で夢破れた 僕は目が そして愛花は足が いわいる僕たちは壊れた翼だった
そんな2人の最後の試合はまだ卓球部員も誰もいない朝の体育館で行われようとしている
「行くよ!」
試合がはじまった 愛花は小さくトスをしてサーブを打つ
僕は後ろにめいいっぱい離れてレシーブするカット主戦型なら当然のプレイスタイルだ
しばらくラリーをして僕は高くロビングを放ったのだ
愛花は当然 山なりの高いロビングをスマッシュで返す
「痛い!」
愛花はまだ足が本調子ではないためにジャンプしてスマッシュを打つことがとても苦しく それに自分が虚しくなっていたのかもしれない
愛花のスマッシュは僕は下回転に変えてカットする
下回転になったカットは愛花のラケットに当たってネットにかかった
「くぅ!」
「愛花の本気みせてみろよ」
「うるさいな!」
今度は愛花が大きく上にトスをする 投げ上げサーブというやつ そして高い上げたボールを王子サーブ つまり身体全体を使って重心をかがめて縦回転を生み出す 愛花が得意とするサーブだ
「つ、、」
愛花の足はまだ完全に完治していないから 支えられなくなった足をかばい 前よりも威力のある回転を生み出すことができなかった
ゆるゆるなサーブが飛んで来る 僕はそれを振り抜き スマッシュで返す
「つ、、」
返そうとしたが ラケットは空を切り ボールは無情にも床に落ちた
いつもならばなんてことなくスマッシュを打てたりするのだが 特発性緑内障を発症した遥にとって ボールの見え方は複数にみえて辺りは真っ白になる。
「遥、みえないんでしょ?」
「、、、」
図星であった 愛花は試合する前から瞳孔がおかしいことを察していたのだった
僕はすかさず 反撃をする
「愛花、お前もだろ?」
「はぁ?」
「お前の足はまだ完全に治っていないんだろ? どこかプレイすることが怖いと思ってないか!? またあんなことが起きてしまったらなんて ネガティブな感情が出できている
お前はきちんと治るんだから もっと自身をもってプレイするんだ!」
「うるさい、うるさいうるさい! みえないあんたに負けるかよ! 」
「愛花,」
「く! なんで、なんで 遥 目が悪くなっちゃったのを聴いた 特発性緑内障は急激なストレスが原因なんだってね 私のせいだよね? 私が部長としてちゃんとしていれば こんなことにはならなかったのに」
「お前のせいなんかじゃない!僕が」
「この! 」
愛花は突然サーブを打った 僕は即座ににラケットを上に向けて思い切りボールにぶち当てる
面に従ってボールは高く打ちあがり、ゆっくりと相手のコートに落ちていく。
普段ならば絶対にしない初手ロビング自殺行為にも等しい
それでも滞空時間や離れたことにより少し周りを見通せるようになった
「愛花 お前は信じてスマッシュしてこいよ!」
台から距離を取って挑発する
「うるさいっ!」
愛花は真っ直ぐにスマッシュを打ち込んできた
「うぅ」
愛花の嘆きが聞こえる、僕は再度ボールを打ち上げる。
そこから何度も何度も。
必死にボールを打ち上げて粘り続ける。
「なんで そんなに頑張れるの?」
愛花は高くバウンドするボールを打ち続ける 僕の挑発に負けたら負けだと思っているのか
「卓球はボールを相手のコートにいれた方が勝つんだ スマッシュや回転じゃないんだ」
「そんなの言われなくてもわかってるわ!」
「………ロビング上手くいだけで勝てると思ってるの?!」
「…それを返せないとダメだよな?」
「チ!」
スマッシュを打ち込む愛花、僕はロビングで耐える
「もういいっ!いい加減して! そんなに粘らなくてもいいじゃん!」
返されることが気にくわなかったのか、ラリーをしながら文句を言ってくる愛花は ボールだけではなく 自身のことまではなす
「なんで!卓球やめんだよ!」
「あぁ」
「ずっとずっと一緒に卓球したかった!」
「あぁ」
「高校で対戦するって約束したじゃん!」
「あぁ」
「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ 遥ともっと卓球したいの!」
「あぁ」
スマッシュを返すたびに遥と愛花は喧嘩のようになっていった
「はぁはぁはぁ もうダメだぁ」
言いたいことを思う存分吐き出した愛花は 疲れ果てその場から倒れ込んだ
「愛花 もう足治ったじゃないか」
「あ、うん、」
愛花は知らない間に足を克服していたのだった
「卓球やめんなよ」
愛花は僕に睨みつける
「また私に火をつけた。 なのに遥は卓球やめるの?」
「僕はもう卓球ができる視力じゃないんだ」
「卓球やらなくてもいいから! 卓球にかかわってほしい」
「関わる?」
「もしさ 遥が高校に入学してさ 私とおんなじような境遇の人がいたら 遥が助けてあげてよ
きっとその人も部長とかで苦しい思いをしていると思うから」
「そうだな 僕も愛花みたいに崩れていくもう2度とみたくない」
「うん、約束 今度はきちんと守ってあげてね、」
「あぁ わかった」
それから中学を卒業し 僕は新潟盲学校に入学した。
そして、少し卓球から離れた頃 奇しくも愛花と同じような境遇の女の子に会ってしまったのだった。




