語尾の行方
7.5 語尾の行方。
アンを連れて楽屋に危機一髪で逃げおおせた時――
「ちゃんとレベルアップできたみたいやな。」
「まあ、安心やな。」
「分かりづらい!」
何故かラテに一喝された。
「どうしたん?」
俺は驚いて聞く。
「お前たち、どっちがしゃべっているのか分かりづらい!」
「いや、声が全然違うやん?」
「これは小説だ。文語体の中ではどっちが話しているのか区別がつかない。さっき最初にはなしたのはどっちだ!」
「俺やな。」
「分かりづらい!」
ラテはとても意固地になっている。
「じゃあ、どうすればいいんや?」
「どちらかだけが関西弁にしろ。」
俺はラシアの方を見る。ラシアも俺を見て、言う。
「男が関西弁っていうのはキャラ的にどうなんやろなあ。絶対、オンナノコが関西弁言う方が萌えると思うんやけど。」
「嫌やで。俺も絶対に譲らへん。」
「坊主。お前が変えろ。見苦しいぞ。」
目の前で銃を突きつけられては、譲るほかない。ラシアは実に愉快だ、という悪魔的な笑みを浮かべて鼻歌を歌っている。
「でも、どないすれば――」
「自分で考えろ。」
無茶だ。でも、考えないと私の銃が火を噴くぜ、とラテが暗に語っている。
「じゃあ、これはどうにゃ?」
「前にやった。それと気持ち悪い。」
「じゃあ、これはどうワニ?」
「それも前やった。」
「これでどうだプラトニックラヴッ!」
「それも前やったし、打ち込みがめんどくさい。無意味に分量も増える。」
では、どうすればいいのだ。万策尽きてしまった。
「これはどうプリ?」
「パクリは却下だ。」
「どうナチュ?」
「お気に入りだが却下。」
「天使なの!」
「失せろ。」
「これはどうぴっぴ?」
「きっともう出番はない。」
「ぷしゅ~」
「語尾じゃないよな。」
「ちりしゃんしゃん。」
「推しメンだが、ダメだ。」
もう、本当に万策尽きてしまった。
「みゃあ、だな。」
「は?」
「みゃあ、だ。これからお前は語尾にみゃあをつけろ。そうすれば分かりやすい。」
「でも、それはパクリなのでは?」
「もっと全世界にみゃあのすばらしさを伝えなければならない。だから、アリだ。」
ラテの基準は分からない。だが、否定すればラテの銃が火を噴くのは火を見るよりも明らかだ。
「分かったみゃあ。」
俺の語尾はみゃあに決まったみゃあ。
「そう。それでいい。」
ラテは満足そうに腰を下ろす。なんだか、俺だけこんな目に遭っている気がするんだが。
――俺の語尾の明日はどっちだ――




