スライム、フェルビナくん、そして・・・
EX1 スライム、フェルビナくん、そして・・・
スライムが現れた!
「なんだ、コイツ。」
俺は剣を抜きつつも、今一戦闘意欲が湧かなかった。俺の目の前に現れたのはぷよぷよしていて間抜けな面をしたモンスターだった。どう見ても雑魚だ。だが、俺たちの行く手を遮るのなら倒すほかない。
「待て。矮人!」
ラテの忠告を聞かずに俺は一歩前に進む。その瞬間、なにが起こったのか分からなかった。
気がつけば俺の心臓に風穴があいていた。
「どういうことだ・・・」
遠くからの攻撃か。銃で空いた風穴にしては大きすぎるし、俺の目に狂いが無ければ、俺の心臓に俊足で伸びたのはぷよぷよした物体――
「逃げるぞ!」
俺は能力を使い、ラテとラシアを担ぎ、高速で離脱する。腐敗がどうのとかまっていられない。
「こら。どこ触っとんねん。まさか、そっちの方が趣味か。」
「こ、こら。そんな変な触り方を・・・」
「黙っててくれみゃあ。」
ぷよぷよは俺たちを追っては来なかった。あの速さであれば、俺の能力でも逃げきれなかったに違いない。シ骸との戦いも苛烈であったが、まさか、こんななんにもないところで急に九死に一生の思いをするとは――
「あのぷよぷよは一体何だったんだみゃあ。」
ラシアに治療してもらいながら、俺はラテに聞いた。せっかくレベルアップして回復したゲージが半分にまで減ってしまった。
「あれはぷよぷよではない。スライムだ。」
苦し気な顔をしてラテは言う。鷹の目で気付けなかったことが悔しいのだろう。
「ヤツのレベルは99相当だ。」
「え?カンスト?」
あんな間抜け面が最強だなんて――
「私たちがレベル99になっても勝てる相手ではない。あのノーマルスライムでも弱い方だ。奴らは基本的に退魔力を持っている。好戦的なタイプでないだけマシだった。」
「俺たちの能力は魔術なのかみゃあ?」
「どうもその類らしい。通りで私の鷹の目が捕捉できなかった。ちなみにぷよぷよタイプもいる。そいつらは物理特化だ。さっきの攻撃でお前の体は霧散していただろう。」
「ということは、もっと種類がいるのかみゃあ?」
「ああ。スライムは魔物のなかでももっとも多種類だ。ますます手に負えん。」
「まあ、ホンマに逃げれてよかったわ。いろいろおさわりしてくれたんとは話は別やけど。」
ジト目でラシアは俺を見てくる。
「別に触りたくて触ったわけじゃない。」
「なんやて?乙女の甘美な桃を堪能しておいて。なあ、ラテちゃん。」
「全くだ。処刑だな。」
この人たち、もう嫌です。
「最強の存在は三つある。一つは先ほどのスライム。もう一つはフェルビナくん。そして最後は――」
勿体ぶってラテは言葉を区切る。
「竜だ。」
竜と同義ということは、よっぽど強いのだろう。スライムと、あとフェルビナくんとやらは。
「フェルビナくんって?」
「コイツも最強だが、スライムほど遭遇するものではない。存在しないのではないかとさえ言われるほどだ。」
名前から察するに強そうではないが。
「古代の文献では、長方形の布に人の手足がついた容姿であるという。」
想像しただけで、滑稽でグロテスクだ。
「遭遇すると必ず『新鮮な採れたての湿布ですよっ!』『薬品は使っておりません!』『一度使ったらやめられなくなりますよ!』と言うらしい。極め付きは、こうだ。奴らは変身する。」
謎の言葉だけでも恐ろしいのにさらに隠し奥義が――
「パンの売り子と融合すれば、竜であろうとも太刀打ちできない。世界を滅ぼす存在だ。」
「パンの売り子?」
どうしてそんなピンポイントなんだ。
「だが、フェルビナくんから取れる湿布はどんな腰痛でもたちまち治ってしまう。依存性は強いが。」
効くのは腰痛だけですか。また、ピンポイントな。
「竜ってあの空を飛んでるヤツだみゃあ?」
「翼龍と竜は違う。竜とはこの世界を創り出したとされる存在だ。」
「神ってことだみゃあ?」
「違うな。神とは別の、中立なる絶対者だ。この世界のどこかに存在していると言われているが、まず会うことはないだろう。」
どうも竜に関する情報はフェルビナくんよりも少ないようだった。
「世界にたった七匹しか存在しない。一匹でも死に絶えれば、世界のバランスは大きく崩れてしまう。」
そんな大層な存在と俺たちは関わることもないのだろう。
「で、これからどうするん。先に進めへん訳やけど。」
「西に行くか北に行くしかないだろうな。」
それは南都聖圏を行くか北都神圏を行くか、の二択ということである。
――俺たちの明日はどっちだ――
矮人くんの語尾、募集中です。続けるかは分かりませんが、どうぞよろしくお願い致します。




