ごかい
ゆっくりとした歩調で玄関まで天王寺さんはやってきた。
「美月ちゃん、彼は危険人物よ」
天王寺さんは風原さんに耳打ちをする。しかし明らかに悪意がある声量だ。僕にまで聞こえてるんですけど。
「危険ってなんですか!? 全く身に覚えがないんですけど!」
「あ、あ……大和さんは危ない人だったのですね……」
次第に目から光が無くなっていく風原さん。もう一息で軽蔑にまで到達しそうだ。
「違うよ! ゆかりちゃんの僕に対する吹聴だから!」
「ほ、本当ですか……」
目に光を取り戻しつつある風原さん。
「彼はストーカーよ」
「えぇ……」と声まで失い、完全に目から光が消えた風原さん。
「お友達になれると信じていたのに……危ない人だったなんて……」
軽蔑の視線が僕に突き刺さる。
「そんな目で僕を見ないで! 全部ゆかりちゃんの嘘だから!」
必死に弁解する。口からつばまで飛んでいきそうな勢いだ。
「彼と目を合わせたらダメよ。惚れられちゃうから」
さっと顔をそらせる風原さん。
「やめて!」
天王寺さんは更に追い討ちをかける。
「モテない男子ってのは優しくしたり、目があったりするだけで相手に好意を抱いていまうものなの。純真無垢な美月ちゃんならなおさらそういう男子の標的になってしまうわ。私みたいにクールにならないと。結局自分の身は自分で守るしかないの」
「う、うん……気をつける」
一歩後退りする風原さん。
「僕がモテないのは本当だけど、そんな危険人物みたいな扱いしないで! 信じて!」
「信じてもいいですか……?」
チラリと視線を送ってくる風原さんだったが、僕と目が合うと天王寺さんの後ろに隠れた。
「美月ちゃん、今言ったことは半分嘘だけど半分本当のことよ。気をつけなさい」
「う、うん……。ストーカーさんには気をつける……」
「そこが嘘だから!!」
天王寺さんの背中からちょこんと顔を出す風原さん。彼女は涙目になっていた。




