練馬区育ち
生れは静岡である。父の実家だったからだと云う。僕が五歳の時分に両親が離婚し、父が蒸発してからは母の実家である福井に行き、しかし勘当されて(母は素行不良の中卒で、父はヤクザだった。母はまだ二十そこそこだった)、後に関東を転々とした。母は引っ越し魔だった。僕の一家が東京都練馬区に落ち着いた頃には、僕は小学二年生になっていた。
練馬区出身者にはコンプレックスを抱えている者が少なくないと思う。ずばり練馬区はダサい。そういう視線が注がれているのは僕も分かっている。ヒッポホップグループ『練マザファッカー』が一時期メディアで取り上げられたのは、「ダサい練馬」と「イケてるヒップホップ」とのギャップが面白がられていたのだろう。
ヒップホップは己の出生地を誇りに思っている。だからライムにも書く。メジャーなところを挙げれば、エミネムならば「デトロイト」。スヌープ・ドッグでならば「ウエッサイ」。日本で云えば、主に東京出身のラッパーはこぞって「TOKYO」(東京。たいていローマ字読みである)。ザ・ブルーハーブであれば札幌。TOKONA-Xなら名古屋。SHINGO★西成なら大阪(の中の西成区)。皆、自分の故郷に誇りをもって韻を踏む。
しかし練馬はどうか。ダサイ。もしリリックで「練馬代表」などと書けば失笑必死である。「ラップ=かっこいい」と「練馬=ダサイ」という二律背反が、練馬区からのラッパーの出現を減退させているのではないかと思う。僕はこの現状を何とかしたい。
まず練馬区はダサいという固定観念を廃棄していただきたい.じゃあ何なのかと云えば、練馬区は「イカレてる」。少なくとも僕の住むスラム街一歩手前の地域では。往来に出れば、毎日のように浮浪者や頭のズレた連中を見ることが出来る。




