病気なぼくらの病気なおもちゃ (仮題
職業に貴賎なしと云うが嘘だと思う。少なくともこの国の介護士が決定的に不足しているのは事実である。「私は汚穢屋になりたかった」みたいなことを美しい文章で書いて持て囃される小説家と、実際に糞と小便を浚う介護士と、どちらか選べと云われれば僕は前者を選ぶ。内田樹先生は著書で村上春樹の小説と「雪かき」の話を紹介している(いた、と思う。残念ながら資料が手元にないので正確ではないかも知れない。『村上春樹にご用心』という本だ)。誰も好き好んで「雪かき」はやらない。自分の家の前の雪だけならばともかく、わざわざ他所まで行ってやることはない。そういうことを進んでやる。そういうひとはエライ。
まあエライのだろう。僕もたまに入居者のご家族の方から「偉いものですね」と云われることがある。しかしこの仕事、偉くてもメシは喰えないのだ。それに本当に世間から「偉い」と思われている、とのぼせ上がるほど介護士も馬鹿ではない(一部にそういうバカを知っているが)。どうしてこの仕事をされているのですか、とピュアな質問が飛んでくることもある。「この世で一番やりたくない仕事をして自殺する決意を固めようと思っているんです。どうも死ぬ踏ん切りがつかないもので」と正直に云っても分からないだろうから、「皆さんの笑顔が見れるからですねあはは」と適当に答える。




