第21話 わずかな記憶
第21話目です!
思い出の公園にやって来た学と友美。
そこで2人は何を話すのか?
「ありがとう。もう大丈夫」
友美は思いっきり泣いて、スッキリしたのか満面の笑みで言った。そして友美は一息置いてから、さっきの話の続きを始めた。
「小学生の時、私がいじめられてたのは覚えてる?」
「うん…何となくだけど覚えてるよ」
そう友美は小学生の時、いじめを受けていた。僕は3年生までクラスが一緒じゃなかったので詳しくは知らなかった。3年生でクラスが一緒になり、初めて友美がいじめられていることを知った。
「学くんは私と仲良くしてくれたけど、いじめは学くんにも…」
そこで友美は、また辛そうな表情をした。僕が頭を撫でると『大丈夫』と聞こえるか聞こえないかわからないくらい小さな声で言った。
「学くんは、いじめられてたこと覚えてる?」
僕はそんなことがあった気もしていたが、はっきりとは思い出せなかった。
「う〜ん、いじめられてたことは覚えてるけど…もう忘れたかな」
僕は小学生の時から、あまり周りを気にするタイプじゃなかった。いじめも気にしてなかったと思う。いじめの記憶がかなり薄いのは僕が気にしてなかったからだろう。
「じゃあ、私が不登校になったのは覚えてる?」
僕は友美から『不登校』という言葉を聞いて、ある1つの記憶が蘇る。
「覚えてるよ…はっきりと覚えてる」
あれは僕と友美が5年生の時だった。友美へのいじめは酷くなるばかりで僕は必死に友美をいじめから守っていた。その度に友美は『学くん、もういいよ』と言った。それでも毎日続く友美へのいじめが許せなくて、僕は毎日、友美の側にいた。しかし、その日は突然やってきた。
「宮本友美さん」
担任の出席確認。友美の返事は無かった。僕の隣の席は誰も座っていなかった。最初は体調でも崩したのだろうと思ってた。友美の家にも行った。友美のお母さんも『体調崩しちゃってね』と言っていたので大丈夫だと思っていた。しかし次の日も、その次の日も、1週間経っても友美は学校に来なかった。友美の家に行っても、友美のお母さんからの返答はいつも『明日には行けると思うから』だった。僕はその言葉を信じ、待ち続けた。しかし、結局友美は卒業まで学校に来ることはなかった。そして、友美は小学校卒業と同時に引っ越してしまった。
「学くんは毎日、私の家に来てくれた。すごく嬉しかったんだよ」
僕は毎日、必ず友美の家に行っていた。週に1回くらいしか会えなかったけど、それが楽しみだった。
「私…何で小学校卒業と同時に引っ越したと思う?」
「…お父さんの仕事でしょ?」
僕は友美の次の言葉を待った。今までの話の流れといい、嫌な予感はしていた。
「ほんとはね…いじめが嫌だったっていうことと…」
「と?」
この答えは予想していたが、理由が1つだと思っていたので少し驚きを感じた。
「…学くんに迷惑をかけたくなかった」
僕はどう答えればいいのかわからなかった。そう思って黙っていると、
「学くんは私のヒーローなんだよ。そんなヒーローを置いて引っ越すなんて嫌だった。けど…これ以上、ヒーローである学くんに迷惑をかけることなんて出来なかった…」
「もし僕が友美のヒーローなら、友美は僕に相談してくれれば良かっただろ?」
「うん…だから今年戻ってきた。どうしても学くんに会いたくて。お父さんの仕事の話も嘘なんだ。転勤なんてほとんど無いんだ…。ごめんなさい…」
僕はこの話を聞いて、ひとつため息をついた。それから友美の頭に手を乗せながら、
「友美…バカだよ。何で1人で悩むんだよ…近くに僕がいるだろ? 辛いときはお互い様だろ? 僕は…友美に笑顔でいてほしいんだよ…」
友美は僕の目を見ようとせずにずっと下を向いている。
「友美が不登校になった時、僕は友美を助けたい、守りたいって思った。けど、僕は助けれなかったし、守れなかった。友美は何も悪くないんだ。だから、もうそんなこと気にするなよ? これからは僕がついてる。約束するよ」
僕がそう言うと友美は顔を上げて、
「ずるい…学くんはずるいよ」
と笑いながら言った。その友美の笑顔につられて僕も笑った。
「学くん、いつもありがとう。私…これから強い女の子になるよ」
「力が?」
「学くん…何か言った?」
友美の表情が一気に変わった。これは危険だ…
「いえ。何も言っておりません」
「もう…やっぱりずるい」
僕は笑って何とか誤魔化した。友美は本気で少し怒っていた。
「じゃあさ、お互いに約束しよう」
「何の約束?」
「友美は過去の事を気にしないような強い女の子になる。僕はそんな友美を支えれるように常に側にいて、友美を守る」
「学くん、約束するのは良いけど…もう忘れないでよ?」
僕は無言で頷いた。もう絶対に忘れない、心の中で固く誓った。
「じゃあ、約束だね」
友美との2度目の約束。あの日の約束は未だにどうしても思い出せなかった。そんなことを考えてると、
「そういえば、学くん。本当にあの日の『約束』覚えてないの?」
まるで僕の心を見ているかのように友美は言った。僕は正直に言った。
「ごめん。途中までは覚えてるんだけど…肝心な場所が思い出せない…」
「そっか。もう6年も経ってるんだもんね。忘れてても仕方ないっか…」
友美はそう言って少し悲しそうな目をした。
「友美…よかったら、その『約束』の話してくれないか? 僕、何としても思い出したいんだ」
「うん…あの日はね…」
6年間ずっと思い出そうとして思い出せなかった約束…それが今、友美の話によって思い出されるかもしれない。そう思うと僕は緊張した。そして…友美の話が始まった。
読んでくださってありがとうございます!
6年経って再び新たな『約束』を交わした学と友美。
そしてようやく6年前の『約束』が…。
次話で最終話になります。
6年前の『約束』とは一体…? そして2人の関係はどうなっていくのか…?
第22話(最終話)もよろしくお願いします!




