第16話 大切な記憶
第16話目です!
友美に救われた学。
そんな時、学は友美のある言葉に何かを感じる…
僕はどれくらい泣いていたのだろうか。涙が止まった時にはすでに病院の夕食の時間だった。
「学くん、大丈夫?」
友美は何も言わずにずっと僕の頭を撫でてくれた。僕にとってそれはすごく心強かった。そばに友美がいて支えてくれてる、そう思うだけで僕の心は晴れていった。
「うん。大丈夫。心配かけてゴメン」
「ううん。学くんが元気になってくれたならいいんだ」
友美の優しい言葉に僕の涙腺がまた緩む。今の僕はちょっとしたことで泣いてしまいそうだ。
「もうこんな時間だね〜」
「そうだね。僕、そろそろ帰らなきゃ」
時間とはあっという間のものだ。まだ来たばかりという感覚だった。
「学くん、明日も来てくれる?」
あれ? この友美の言葉…どこかで聞いたことがある気がする…
「うん。絶対に来るよ」
「ありがとう!」
僕はそう言って、友美に手を振って病室から出た。ある一つの疑問を抱えながら…
家に帰って来た僕は自分の部屋でさっきの友美の言葉を思い出していた。今日、唯一気になったこと…『学くん、明日も来てくれる?』という言葉…何も変なところは無いのだが、僕にとってはこの言葉が何か大切な意味を持つ気がした。遠い昔の記憶の中で僕は何か大切なものを忘れている気がする…。
「はぁ〜」
思わず僕の口からため息が出た。大事なことが思い出せず、僕はもどかしさを感じた。友美と出会ったのは小学生の時。よく一緒に遊んでいた。しかし、小学校を卒業すると同時に友美はお父さんの仕事の関係で引っ越すことになった。その時に何かを約束したはずなのだ…その約束を僕は覚えてない…。覚えていないというか思い出せないのだ。不思議なことにそこだけ記憶が抜けているのだ…。
「あ〜! くそっ!」
僕は思わず壁を蹴った。思い出せない悔しさと自分の情けなさを感じた。
「約束…か」
とりあえず今は考えないことにしよう。友美の記憶も徐々に戻っていくはずだし、きっとそのうち何かわかるだろう。
翌日、僕はいつも通り大学で講義を受け、病院へと向かった。友美に講義を休んで行くと言うと、厳しく叱られた。ちゃんと講義を受けなさいって…。病院に到着した僕はすぐに友美の病室へと向かった。中に入ると友美はすやすやと寝ていた。
「可愛い寝顔だな〜」
僕は思わず友美の寝顔に見とれていた。起こしては悪いので友美が起きるまで待つことにした。それにしてもここ数日はいろんなことが起こりすぎて疲れた。まだ全てを受け入れることが出来たわけではない。けど…変わらないことがある。僕は友美のことが好きだということ…これだけは何があっても変わらない。そんなことを考えていると疲れているせいか眠たくなってきた。少し僕も寝ようかな…そう思って僕は目を閉じた。
「学くん、さようなら」
友美…? 何、言ってるんだよ…僕はそう思って声を出そうとした。しかし、僕の口からは声が出てこない。その間に友美は、どんどん僕から離れていく。こんなの嫌だ…、今の僕は思っても声に出すことができないため、友美を止めれない。距離は離れていくばかりだ…。僕は泣き出していた。その時だった。
「学くん!」
…? 僕はゆっくり目を開けた。
「あれ…友美?」
目の前には友美が立っていた。さっきまであんなに距離があったのに…
「学くん、かなりうなされてたけど…大丈夫?」
「あ…そうか、あれは夢か…」
夢…だったのか。僕はホッとした。目の前に友美がいてくれることが僕にとって、どれだけ大切なことなのかを改めて感じた。
「変な夢でも見たの?」
「うん。最近、変な夢をよく見るんだ…」
そう…疲れているせいだと思うが、変な夢を見ることが多い。誰かが僕から離れていく夢…
「どんな夢なの?」
何も知らない友美は笑顔で言う。今の僕にとっては友美の笑顔が悪魔の笑顔に見えた。
「内緒だよ。とても言えることじゃないから」
「え−いいじゃん。教えてよ」
「ダメって言ったらダメなの」
「教えて」
「ダメ」
しばらくの間、こんなやり取りが続いた。何かバカバカしいやり取りだったけど、それがまた楽しかった。
「友美ってさ、面白いよな」
「それはバカにしてるの?」
何気ない友美との日常会話。この様子だけ見たら、とてもじゃないが友美が記憶を失っているなんて信じられなかった。こんな楽しい時間がいつまでも続けばいいのに、そう僕は思った。
読んでくださってありがとうございます!
友美の『明日も来てくれる?』という言葉…この言葉に何の意味があるのか…?
第17話では意外な展開が学を待っています。
第17話目も頑張りますのでよろしくお願いします!




