28.エルフェリア王国の要求(SIDE:ラインハルト)
まもなく日付を越えようとする深夜、ライゼンシュタイン皇宮の執務室には、まだ明かりが灯っていた。
「陛下、そろそろお休みになられてはいかがですか?」
オリバーが執務机に積まれた書類を整理しながら言った。
「そうしたいところだが……」
ラインハルトは一枚の書状を眺めながら、ため息を吐いた。
「エルフェリア王国からの書状ですか?」
「ああ」
書状を机に置き、とんとんと指でつつく。
「小麦を支援してほしいという内容だ」
「またですか?」
「そうだ」
今年、エルフェリア王国は凶作で十分な量の小麦が収穫できなかった。このままでは民に行き渡る小麦が不足するので、支援をしてほしいという内容だ。一見普通の内容ではあるのだが……。
「これで二度目の要求だ」
「さすがに今回は断るしかありませんね」
「そうだな」
エルフェリア王国へはすでに小麦を一度支援しているのだ。
ライゼンシュタイン皇国は魔力を利用した農業技術が発達しており、小麦の蓄えは十分にある。
だから、エルフェリア王国の民たちが一年は食べていけるだけの小麦を支援したのだ。
しかし、蓄えはまだあるとはいえ、二度目ともなると断らざるを得ない。
竜に守護された国とはいえ、被害が全くないというわけではないのだ。現に今年は作物が病気にかかったおかげで収穫量が少なかった。支援ができたのは、小麦に被害がなかったおかげだ。
「あの国は聖女の力で豊穣が約束されているのではないでしょうか?」
聖女の祈りは大地を浄化し、恵みをもたらすものだと言われている。
「さてな。実際に聖女の力がどれほどのものか分からないからな」
「いや」とラインハルトは心の中で否定する。
(聖女ではないが、ユリアンのあの力は確かに神聖力だ。実際、ユリアンが我が国へ来てから、ローゼンツ地方の収穫量が増えた)
「陛下?」
考え事に没頭していたラインハルトにオリバーが声をかける。
「いや。明日断りの返事をエルフェリア王国へ宛てて書くことにしよう」
「そうなさってください。本日はもうお休みください」
ラインハルトは自室に戻りベッドに入るが、なかなか寝つくことができない。
「全く頭の痛い案件だ」
エルフェリア王国の無茶な要求に本当に頭痛がしてきたので、思わず頭を押さえる。
「頭痛に効く薬草が欲しい」
ふとラインハルトの脳裏に、ラルフの店で楽しそうに働くユリアンの姿が浮かんだ。
彼女の笑顔を思い出すと、頭痛が和らぐ気がした。
「明日はラルフの店へ薬草を買いに行くか」
そして、ユリアンに薬草を調合してもらうのだ。




