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死に戻り聖女のループから始まるのんびり辺境スローライフ~二度目の人生は好きに生きます~  作者: 雪野みゆ


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25/28

25.師匠は親戚でした

 師匠の店で働くようになってから一週間が過ぎた。


 早朝から起きて自分の薬草畑の様子を見て、転移魔法陣で師匠の店へ迎う。夕方まで師匠から薬草学を学びながら働く。夜は館に戻って、一日の出来事をダリアやエルマに話す。

 

 そんな感じで私の生活はすっかり変わっていった。


 「ユリアン。乾燥させた薬草を棚へ」

 

「はい」


 店の中には乾燥させた薬草の香りが漂っている。独特な匂いを放つ薬草もあるが、私は好きだ。


「う~ん。いい香り」


「ユリアンの年頃だと、香水の香りのほうが好きなんじゃないか?」


「師匠、それは偏見です。それに私は香水の香りはあまり好きではありません」


 前世では夜会などに参加することはあったが、会場中でいろいろな香水の匂いが混じって、鼻が麻痺しそうだった。中には頭から香水を被ったのではないかと思うほど、きつい匂いの方もいたのだ。


 薬草は自然の香りがするので、心が和む。煎じると苦くなるものもあるが……。


「そうか。でもこちらの香りは好きだろう?」


 白い箱を師匠が私の目の前に差し出す。箱からほんのりと甘い香りがした。


「もしかして『ラ・オーベリエ』のお菓子ですか?」


「おっ! よく分かったな。そのとおりだ」


 スイーツの甘い香りはもちろん好きだ。


 薬草を棚へ移動させる作業が終わった後、休憩をとることになった。


『ラ・オーベリエ』のお菓子をお茶請けにするので、今日は紅茶を淹れる。


 ちなみにお菓子はフィナンシェだ。『ラ・オーベリエ』のお菓子に使われるバニラエッセンスは、店オリジナルのレシピで少し香りが違う。


「師匠は甘い物が好きなのですか?」


「好きだな。特に『ラ・オーベリエ』の菓子は上手い」


 フィナンシェを美味しそうに食べているので、甘い物好きなのは伝わってくる。


(甘い物が好きなのであれば、今度お菓子をお土産に持ってこようかな?)


「こんなに美味いのに、ラインハルトのやつは甘い物が得意じゃないからな。子供の頃はよく食べていたのに」


「師匠はラインハルト様を子供の頃からご存知なのですか?」


「ああ。子供の頃はラインハルトとオリバーと三人でよく遊んだものだ」


 師匠はラインハルト様とオリバー様より二歳年上だ。それくらいの年齢差であれば、遊ぶこともある。


 詳しく聞いたことはないが、師匠が貴族出身なのは所作をみれば分かることだ。


「子供の頃のラインハルト様はどんな感じだったのですか?」


「ん?  気になるか?」


 師匠がにやにやとしている。この顔は茶化す気満々だ。


「その……今は立派な皇帝でいらっしゃるので、子供の頃から聡明だったのかな? ……と思いまして」


「う~ん。賢いやつではあったが、悪ガキだったな」


 突然応接室の扉がノックもなしで開く。


「誰が悪ガキだ?」


 ラインハルト様が不機嫌な表情をして、応接室に入ってくる。


「ノックくらいしろ、ラインハルト。何しに来た?」


「何をしに来たとはご挨拶だな。薬草を買いに来たに決まっている」


「お前が薬草? 殺しても死にそうにないやつに必要か?」


 二人の間に火花が散っている。ように見える。


「ラインハルト。お前はユリアンに会いたくて来ただけじゃないのか?」


(え? ラインハルト様が私に会いに来た?)


「ユリアンに薬草を調合してもらいたくて来たんだ。誤解されるような言い方をするな」


(そうよね。薬草の調合をお願いしに来ただけよね)


 少し残念に思う自分にびっくりする。


「全く可愛げのないやつだな。子供の頃は『マックスにいしゃま』と私の後をついてきていたのにな」


「いつの話だ?」


 ラインハルト様が師匠の後をついていった? 『にいしゃま』って呼び方可愛い! その頃を見てみたかった。


 ん? マックス?


「あの……師匠の名前はラルフさんですよね?」


「ああ。ラルフはミドルネームだ。ファーストネームはマクシミリアンと言うんだ」


(なるほど。マックスはマクシミリアンの愛称だものね)


 ラインハルト様が意外だという顔をしている。


「何だラルフ。まだユリアンにフルネームを教えていないのか?」


「聞かれていないからな」


 そういえばフルネームは聞いていない。師匠と呼んでいるから、特に気にならなかったからだ。


「師匠は貴族ですよね?」


「一応はな」


 家名を聞いても分からないが、ラインハルト様と親しい間柄のようなので、おそらくは公爵か侯爵家だろう。


「ラルフのフルネームはマクシミリアン・ラルフ・オーベルシュタインだ」


 この国で唯一知っている家名だった!?


「えっ!? 師匠はオーベルシュタイン大公家のご子息なのですか?」


 オーベルシュタイン大公家は祖母の生家だ。


「そうだ。ユリアンの祖母と私の祖父が兄妹なので、私たちははとこ同士ということになるな」


 師匠はまさかの血縁者だった。

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