24.弟子入りして初の出勤です
いよいよラルフさんに弟子入りする日の朝、早くに目が覚めた私は期待で胸が高鳴った。
「……今日からラルフさんのお店で働くのね」
働くといっても正式な薬師としてではなく、あくまでも弟子として修行をするのだ。
だが、私にとっては初めて自分で選んだ仕事だった。
前世では聖女としての力があったから、神に選ばれた。なるべくしてなったという、言わば使命感のようなものだ。
「少し薬草畑の様子を見ておこうかしら?」
身支度を整え薬草畑の様子を見に行くと、ハンスが既に作業の準備をしていた。
「おはよう、ハンス」
「おはようございます、お嬢様。今朝は随分とお早いですね」
「今日から弟子入りをするから、楽しみで早くに目覚めてしまったの」
もう少しベッドでゆっくりしていてもよかったが、わくわくして落ち着かなかったのだ。
「そうですか。良い師匠に出会えて良かったですね」
「ええ」
私が修行に出ている間は、ハンスに薬草の世話をお願いすることにしたのだ。
これまでも薬草やハーブ類の世話を一緒にしていたので、ハンスになら安心して任せることができる。
しばらくハンスとともに薬草の世話をしていると、エルマがこちらにやってきた。
「ユリアン様、朝食の支度ができております」
「ありがとう、エルマ。今行くわ」
朝食を済ませて準備をすると、転移魔法陣がある部屋に移動する。
「では行ってくるわね」
「行ってらっしゃいませ」
ダリアとエルマに見送られて転移魔法陣の中に立つと、淡い光に包まれたので反射的にぎゅっと目を瞑る。
しばらくしてから目を開けると、ラルフさんの書斎に転移していた。
「おや? お嬢様。早いですね」
書斎の扉が開き、ラルフさんが顔を出す。
「おはようございます。ラルフさ……先生。今日からよろしくお願いいたします」
「先生?」
「今日から弟子ですから」
ラルフさんは今日から私の先生だ。名前呼びは失礼かと思ってそう呼んでみた。
「う~ん。その呼び方は何やらむず痒いな」
「では……ラルフ様?」
「もっとむず痒い」
(どうお呼びしたらいいかしら? 弟子だから……あっ! そうだ)
「それでは師匠」
「まあ、それでいい」
「はい、師匠。私のことはユリアンと呼んでください。弟子ですから敬称はいりません。あと敬語も」
今までラルフさんあらため師匠は私のことを「お嬢様」と呼んでいたが、師弟になるであれば普通に接してもらいたい。
「分かった。ユリアン」
「それで何をすればよろしいでしょうか? 掃除でも何でもやります!」
意気込む私に師匠は苦笑する。
「やる気があるのはいいが、そう急くな」
師匠は書斎の扉を開けると、店に続く扉を指差す。
「こちらの扉は店に続いている。まずは店の仕事を覚えてもらうが、その前にハーブティーを淹れてくれ」
書斎の隣はちょっとした応接室のような造りになっている。師匠はここで商談をしたり、時には休憩したりするそうだ。
どのハーブを使ってもいいと言われたので、私が朝よく飲むハーブティーを作った。
「いい香りだ。レモンバームとペパーミントとグリーンマテのブレンドか」
「香りだけで分かったのですか? さすがですね」
他にもいろいろとレシピがあるが、このブレンドだと活力や集中力を高めてくれる効能があるのだ。
「ブレンドの調合加減が実にいい。今度レシピを教えてくれ」
「はい!」
「ハーブティーの淹れ方は文句なしだ。客に出す茶はユリアンに任せる」
「よろしいのですか?」
いきなりお客様のお茶出しを任せてもらえて嬉しい。
「もちろんだ。さて茶を飲んだら店の中の説明をする」
「よろしくお願いします」
弟子入り一日目は薬草の在庫管理の仕方、値段のつけ方、接客の仕方などいろいろと教わった。何もかもが新鮮で覚えるのが楽しい。
「ユリアンは人への接し方が上手いな。どこかで接客を学んだことがあるのか?」
「……いいえ」
前世で聖女として多くの人間と関わってきたので、それなりに接することができる。とは言えない。




