9話 鬼畜の修行と決闘前夜
前回までのあらすじ!
この僕、光祐は、入学してすぐに校長殺害の容疑をかけられる。だが真犯人は僕の別人格、シャドウサイドだった。処刑を免れるため、僕はシャドウと戦い、勝つことになった。だが力の差は歴然。僕に勝ち目はなかった。そこで校長代理にして師匠である千歳は、僕の中に太陽の魔力が眠っている事に気づく。
その魔力の扱いを学び、シャドウとの戦いに赴く。
決戦は、シャドウの圧倒的な力に敗北してしまった。かに思われたが、僕の魔力が暴走し、最終的には僕が勝ったらしい。
と、ここまでがこれまでのあらすじである。そして死刑を免れた僕は、やっとマトモな学生生活を送れると思っていた。
ーーー教室の扉を開くまでは•••••
「甘いッ!その体たらくで魔術大祭に勝てると思っているのかッ!!」
教室の扉を開けて最初に聞こえたのは怒号だった。
恐る恐る中を覗くと、そこはまさに地獄絵図だった。
床には倒れた生徒たち、立ってる人もかろうじて立っているという感じだ。だがその中に、1人だけピシッと綺麗な姿勢で立っている人がいた。
確か、名簿1番の不知火 火影である。さっきの怒号も彼女のものだろう。
「む、あなたは確か•••••ああ、3週間休んでいた名簿3番の光祐さんですか」
さっきの怒号とは打って変わって礼儀正しさを伺える言葉使い。
早速目をつけられた。まずい、何でかわからないがとてもまずい雰囲気だ。
「なぜ3週間も休んでいたのかは知りませんが、来たのなら修行に参加してもらいましょう」
「し、修行?」
この地獄絵図が修行?マジで言ってんのかこの人は。
「えっと、修行っていうのはこの人たちがしてるやつ?」
「ええ。皆さん不甲斐ないです。最初はあんなにやる気だったのに、全員諦めてしまうとは」
諦めるっていうより、できなくなってるというか、死んでるというか•••••
すると、僕の足元に倒れていた名簿5番の鉄穴森 守が必死に声を上げる。
「に•••げろ。これ•••は、修行なんかじゃ、な•••い•••」
ばたり、と完全に意識を失い力無く倒れる。
「•••••あの、この人は何故倒れてるんです?」
なぜか敬語になってしまう。シャドウと戦った時よりも恐怖を感じてるかもーーー。
「修行に耐えられなくなったんでしょう。この程度の修行もこなせないとは」
「因みに修行とは、いったいどんな」
こんな状況になる修行とはいったいなんなのか。倒れてる人たちの力がなさすぎたというわけではないだろう、では後は修行の内容に何かあるはず。
「普通の修行ですよ。普通に、朝3時からひたすら魔術を撃ち、それを12時まで、それから食事をし、午後1時から実戦と魔術の特訓を夜12時まで」
••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••怖。
さっきのスケジュールが本当に修行のスケジュールか?修行僧でもここまで過酷ではないだろう。
「因みに食事は•••••」
この学校には完全無料の食堂がある。メニューもなかなか豪華で大人気だ。流石に食事はーーー
「もちろん、この栄養スティックですよ。素晴らしいですよね、たった一本で生きるための栄養が賄えるんですから」
これは修行ではない。拷問だ。栄養スティックはそこまで万能じゃねぇよ。よく耐えてたな皆。このスケジュールを3週間、普通に考えれば病院搬送されてもおかしくないだろう。
「あの、それは本当に修行でしょうか、僕が聞く限りただの拷問だと思うんですが•••••」
「何を言ってるんですか?修行とはこういうものでしょう。さ、ここに来たからにはあなたもこれからやるんです。頑張りましょうね」
優しい笑み、この子は本当にこれを普通と思っているらしい。いったいこれまでどんな生活をしてきたんだろうか。
そうして、地獄の修行が始まった。
1日目
朝3時に起床。それからひたすら魔術を撃ち続ける。僕は初めてだから何とかなるが他の人は既にぶっ倒れている。だが、一部言うことを聞かずにサボっている人もいた。
12時、全員に栄養スティックが配布された。美味しくも不味くもない、というか味がない。
その後はひたすら修行。だが誰1人として修行に身が入っていなかった。いや、1人だけこのスケジュールをしっかりこなす者がいた。修行の発案者、不知火 火影である。どうしてこの修行を続けられるのか、とても疑問である。
2日目
2日目も1日目と同じスケジュールだった。だが、たった1日しかやっていないのに既に具合が悪い。寝る時間もなければ食事もロクに出来ていない。体調が悪くなるのも当然だ。ほんと皆よく耐えてるよ。
3日目
限界である。地獄の修行もやることが一定で見てても面白みがないだろう。それにこんなことしても強くなんてなれたしない。
確かに能力自体は向上しただろう。だが、このままでは心が死んでしまう。
僕は朝早くにいつもはつけない手袋をつけて、不知火さんの前にたった。
そして不知火さん目掛けて手袋を投げつける。いわゆる決闘の申し出だ。一度やってみたかったんだよね。
「光祐さん、これはいったいなんですか?」
「見ての通り決闘だ。正直に言うぞ、あんたがやっている修行はただの拷問だ。修行とは到底言えない」
「何故ですか、修行のおかげで皆さんは強くなった。それが修行が正しい明確な証拠でしょう」
「確かに強くはなったかもしれない。でも今のままじゃ心が死んでしまう。心が死ねばどれだけ強くても戦うことは出来ない」
「心?」
「そうだ。だからあんたの方針と、俺の方針を賭けて決闘をしよう」
あ、また俺って言った。感情的になると出ちゃうんだよね。
「•••••いいでしょう。私は私が正しいと信じている。でもあなたはそれを否定した。ならば私は己が正しさを貫くため、その決闘を受けましょう」
案外あっさり受け入れてくれたな。
こうして僕と不知火による決闘が開催される。負けるわけにはいかない。こんな修行嫌だしね。
* * *
「な、なぁ」
「ん?」
その日の夜、ふと話しかけられて振り向く。
そこにいたのは教室に倒れていた生徒たちだった。
「不知火と戦うんだろ。光祐、だったか。お前は勝てるのか」
「わからない。けど僕だって負けるつもりはない」
「でもお前は3週間クラスにすらきてなかっただろ。それで勝つなんて言われても、正直任せられない」
そうか。僕は3週間もこのクラスにいなかった。そして僕はこの修行に苦を感じている人全員を背負って戦うんだ。
「•••••僕はこの3週間、とある人に修行をつけてもらっていた。理由は言えないけど、僕には力が必要だったんだ」
シャドウに勝つために、修行を積んだ。たった3週間だったが、僕は確実に強くなった。
「相手を下に見るわけじゃないけど、負ける気はしない」
「そうか、ただ休んでたわけじゃないんだな。
•••••よし、じゃあ俺たちはお前を信じるよ。明日の決闘、絶対勝てよ」
握りしめた拳を差し出してくる。
「おう!」
全員で拳を合わせる。僕は全員の願いを背負って決闘に挑む事を決意する。
次の日、ついに決闘の火蓋が切られるのだった。
第三章『魔術大祭編』の始まりです。不知火 火影の鬼畜の修行、光祐は耐えかねて決闘を申し込んだ。果たして決闘の行末は如何に




