6話 太陽の魔力
僕は起きると、千歳に呼ばれて朝から校長室にいた。
「なんですか?こんな朝早くに」
千歳は部屋に入った僕に少し険しい顔をしながら話し始めた。
「単刀直入に言うよ。君は後二日も生きることはできない。」
うん?何と言った?二日生きられない?死ぬってこと?
「その通りさ。君は近いうち、正確には二日以内に体が爆散して死ぬだろう」
爆散?なんでそんなヤバそうな死に方するんだ。僕そんな悪いことしたかな。
「君が悪い訳じゃないさ。問題は君の体の作りというか、魔力にあるんだ」
「魔力?確か検査の時灰色とか言われたやつですか」
僕の魔力の色は灰色だった。これまで存在しなかった色だ。おそらく二種類の魔力が混ざってるんだろうと千歳は言っていたが•••
「君の魔力は推測だと光魔術と影魔術の白と黒が混ざってるからそうなってたんだと考えている。だが、君の光魔術適性は言うほど高くはないんだ。そこに違和感を感じてね」
僕の魔力は灰色だった。影の適性はシャドウの力として、僕の光の適性が低いなら黒寄りになるはず。
「そうなんだ。だから調べたんだが、君には君自身とは別の魔力が混じってたんだ」
「別?」
「そうなんだ。言うなれば、外部から取り付けられた魔力って感じかな」
「外部?つまり聖遺物とかって事ですか?」
魔術師によっては聖遺物から自分の魔力を増やす人もいる。
「そうじゃないんだ。隠すことでもないし言うけどね。君はおそらく太陽の光を魔力に変換できるんだろう」
なんだそれ、光合成かよ。僕は植物だったのか。
「まあ考え方としては光合成に近いだろうね。ただ、その魔力は君とは別の魔力だからね。しかも日光を浴びるだけで増えるんだ。君の体は魔力に耐えきれなくなってきているんだ」
僕はもちろん、人は皆生まれた時から日光を浴びながら生きる。つまり僕の体には今、約15年分の魔力が溜まっている訳だ。
「そしてそれが今、ストレージの限界らしい。結果、魔力を貯めるタンクが破裂して、そのまま体も木っ端微塵ってわけだ」
確かにあり得るのかもしれない。魔術世界には、それこそ聖遺物から魔力を供給しすぎで血管とかが破裂して最悪死に至るなんてことがあるらしい。その太陽の魔力がものすごく多いなら爆散というのもあながち嘘ではないんだろう。
「じゃあどうするんですか?このまま死ぬのを待てとは流石に言いませんよね」
「流石にね。だからこれからその魔力を扱う修行をしようと思う。もしかしたらシャドウ攻略の糸口にもなるかもしれない」
僕は修行部屋に戻ると、千歳から聞いた魔力の運用法を試してみた。
「たしか、自分の魔力とは別の流れを探るんだったか。
う〜ん、あっこれかな」
見つけた魔力の流れを普段の感覚で扱おうとする。蛇口を捻り、必要な水を汲み取るように、それを手に流し、そして•••
「!?」
瞬間、魔力の蛇口を即座に締めた。なぜその行動を行なったのか、意図的ではない。無意識に行なったのだ。反射的に、体が防衛本能を働かせて蛇口を閉めたんだ。
僕は冷や汗が止まらなかった。この汗はなんだ。僕はこの魔力に恐怖したんだ。後少し締めるのが遅れていたらひと足先に木っ端微塵に爆散していただろう。
「いやぁ、危なかったね。まさか太陽の魔力があそこまで強大なものだったとは」
そう、魔力が強大すぎたのだ。それゆえ、体の許容できる量をあっという間に満たしてしまった。
「じゃあどうするんですか。このまま扱えなかったら爆散して死んじゃう。でも使おうとすると体が爆散する」
詰みじゃないか。どのみち死んでしまうじゃないか。
「だからこの二日以内にその魔力のコントロールに慣れるとしようか。私の方でも対策を練るが、そちらである程度操作できる方がありがたい」
でもどうやって?僕の体はこの魔力に耐えきれない。流石にどの量なら耐えられるかとか、そんな綱渡りみたいなことはしたくない。
「流石にそんなことをしろとは言わないさ。修行方法としては、武器に魔力を込める練習をしていこう。創造魔術をやってたのは幸いだったな」
「なんで創造魔術なんです?」
創造魔術で一体何の修行を、っあ
「君の考えている通りさ。作った武器に魔力を流して壊れない適正量を見極めるんだ。時に光祐くん、魔術師が杖を使う理由を知っているかい」
杖か。杖って確か魔力を効率よく扱えるようにする補助アイテム的なやつだったよな。
「その通り。杖なしで魔術を使おうとすると魔術に使う魔力量よりも少し余分に魔力を消費してしまう。なぜかというと、杖なしでは魔術は基本掌から撃つ。でも掌では完全に魔力を封じ込めることが出来ないんだ」
「封じ込める?」
「そう。封じ込められないと、ペットボトルジュースの炭酸が緩いキャップから少し漏れるように、魔力が無駄に漏れてしまうんだ。そこで杖の出番ってわけさ。杖は掌よりも封じ込める力が強い。だから杖を使った方が魔力消費が少なく済むってわけだ」
そんな理由だったんだ。全然知らなかった。ん?待てよ。それと創造魔術とが何の関係があるんだ?
「創造魔術は杖と同じ理論ってことさ。創造魔術で作った武器は魔力で構成されてるから同じ魔力を封じ込めやすいんだ。なにより爆散しかねない修行より壊れたらまた作ればいい武器でやった方が安全だし、これまでの修行が無駄にならない」
確かに。その修行方なら自分の命にはなんの被害もない。それで行こう。
「じゃあまずは、武器を創造して」
僕に手に、魔力が編まれ、形を作り、剣が完成した。そこに太陽の魔力を流し込み、
バリン!
作った剣がバキッと折れて魔力となり霧散してしまった。
「この程度でも武器が壊れちゃうのか。これは流石に難しいな」
「もともと創造魔術で作った剣は本物に比べて脆い。人間が死に至るレベルの魔力を許容できるわけがないよ。そこでだ。君にはまずは流す魔力の調整の練習と、創造魔術の練度向上に努めてもらう」
「あれ?光魔術はどうするんですか」
対シャドウの必勝策である光魔術。これがないと奴には勝てないのでは?
「それについては問題ないさ。その太陽の魔術は、光魔術に酷似している。言ってしまえば光魔術と火魔術を合わせたようなものだね。それを使えるようになればちまちま光魔術の練習なんかする必要は無くなる」
なるほど。じゃあこの魔力は光魔術の上位互換ってことか。てことはこの五日間が無駄になってしまった。
「そんな事はないさ。ほらやったろ、光量を調整するやつ。あれを応用すれば魔力量の調整だって簡単になるだろうさ」
なるほど。よし、じゃあ修行を開始するとしよう。まあなんとかなるだろう。僕はそう考えながら、今日も今日とて修行を開始した。
あれから二日が過ぎた。僕は修行で魔力を消費したことで爆散する事は無かった。よかった。
修行の方はというと、イマイチ上手くいかない。武器に魔力を流し込んでも、すぐに壊れてしまう。なんとか維持できてもせいぜい十秒だ。
「なんで上手くいかないかな〜。あっそうだ、長持ちしないなら壊れるたびに作り直してゴリ押せば良いんじゃないか」
我ながら良い考えじゃないか。これなら壊れようと何しようと関係ないな。
「それも一つの手だがね、そんな事をして君の魔力は足りるのかい?」
千歳のいう事はもっともだった。確かに今の魔力量なら戦闘中に作れる武器の数は多くて50だ。作っては壊してを繰り返していれば戦闘中だとすぐに魔力切れするだろう。良いアイデアだと思ったのにな。
「魔力があるならそれも良いだろうがね、流石に今は無理だろうな。そういう事で後一週間、死に物狂いで修行するんだね」
やっぱ抜け道は無いのか。僕はガッカリしながら修行に戻った。
時間はすぐに過ぎていった。いつのまにか最終日まであと1日だ。修行の成果というと、
「なかなか良くなったじゃないか。武器の崩壊までが十秒から一分まで持ち堪えられるようになったね」
修行の成果はなかなかのものだった。千歳が言うように、武器の維持を一分間持ち堪えられるようになった。そして創造魔術の練度が上がった事で、武器に流せる魔力の量も増えた。
「いい感じじゃないですかこれ。これだけ出来たら前みたいな大敗する事はないと思いますけど」
前回、初めてシャドウと戦った時は手も足も出なかった。だが今なら•••
「慢心はいけないな。少なくとも今の君に慢心できるだけの余裕はないよ。考えてごらん、今は集中して魔力操作をしてるから一分も持たせられるが、いざ実戦になると集中できる時間も無いかもしれない」
確かに。相手の攻撃を捌きながらの集中力じゃ一分も持たないかもしれない。
「まあそれでも壊れるまでの時間はせいぜい四十秒ぐらいかな。まあ十分だろう。そしたら体に魔力を流してみようか」
体に太陽の魔力を流し込んだ。前回に比べてだいぶ楽になったな。身体能力の向上、腕力や脚力が通常の五倍ぐらい上がった。
「ふぅぅぅ•••うぐっ!っはぁはぁ」
やっぱりまだ難しいな。体が負荷に耐えられない。使っていると筋肉が燃えるように熱くなる。これをどうにかしないことには身体強化は使えないな。
「そうでも無いさ。使う方法はあるよ。君の体が耐えられないのはあくまで太陽の魔力だけ。君自身の魔力でも身体強化を行うことでもう少し楽になるだろう」
千歳の助言通り、その方法でやってみるとずいぶん楽になった。これなら実戦でも使えるな。
「それじゃあ最後の修行だ。明日の戦いに備えて実戦と行こう」
「実践って、何と戦うんですか?まさか千歳と?」
僕の予想は的中したらしい。実戦の相手は千歳、正直かなり実力差があるはずだ。勝つ事は愚か、手も足も出ないかも。
案の定、僕は手も足も出なかった。だがこの実践のおかげでこれまで訓練した魔術をしっかり扱えるようになった。
「さ、修行は終わりだ!後はゆっくり休み、明日の決戦に備えたまえ」
「はい!」
ついに明日、僕の命運を賭けた決戦が始まるのだ。僕はまだ死にたくはない。全力でやろうと心に決め、僕は眠りにつくのだった。




