千歳の修行
この世界では、魔力の増やし方が、大まかに3種類ある。最もスタンダードな方法は、魔法を使い続けることだ。魔法を使い続けることで、魔力はだんだんと増えていく。もう一つの方法は、特定の魔術を行使するものだ。この世界には、魔力を増やす魔術が複数存在する。ただし、それによって増えた魔力は疑似的なもので、時間経過で消えてしまう。最後の一つは、裏技を使用するものである。裏技というのは、主に聖遺物などの特殊な道具を使用することだ。この世の聖遺物の中には、膨大な魔力を貯蓄したものがあり、それを利用することで、疑似的に魔力を増幅させる。
「と、ここまでは知っているよね光祐くん。」
「はい。」
「これから君が行う修行では、もちろん魔力も増やしてもらう。君には最もスタンダードな方法で魔力を増やしてもらう。そのために君には、2週間中時間があるときは常に魔術で光を出していてもらう。」
「じゃあ創造魔術の方はどうするんですか?」
「修行のスケジュールを作ろうか。そうだね、午後1時から午後4時まではひたすら武器を観察し、造ってもらう。それ以外は常に光を出してもらう。少し厳しくするために、この2週間の光は君が作ったものだけにしよう。電気をつけてはいけない。カーテンも閉め切るよ。」
2週間日光を浴びれないなんて、具合が悪くなりそうだ。
「あと、これから少しの間君のことを診てみようと思っている。」
「診る?」
「君の適正魔術ってよくわからなかっただろう。それについて少し調べてみようと思ったんだ。もしかしたらそこにシャドウへの対抗策が見つかるかもしれない。」
「わかりました。そういえば夜ってどうするんですか?夜になるとシャドウが出てきてしまうんじゃ。」
「そこは大丈夫さ。見たまえこの『拘束椅子NEO』を!」
そこに置かれた椅子は、前回僕を拘束し、起きたころに粉々になっていた椅子であった。だが、前回の椅子とは、纏う魔力の密度が雲泥の差だった。
「この椅子には、前科とは比べ物にならないほどの高速魔術が組み込まれている。さすがのシャドウでもこれを解くのは実力的に不可能だ。それでも解かれたらもっと改良するがね。」
まあ、この人なら何とかするんだろうな。・・・なんでそんなことを思ったんだろう?僕はあの人の実力を全く見たことない。もちろんあの椅子とかの魔力的に強者だとは思うけれど、正直まだここまで信頼できるだけのものを見てはいない。
「それはきっと、君がシャドウの記憶に少し接続できているということだろうね。シャドウは君の記憶に完全に接続できていたからね。君にもできるんだろうな。これはその片鱗ってことだ。」
「・・・あの、さっきからスルーしてたんですけど、普通に心読むのやめてもらえます?」
「あぁ、すまないね。でも、これから修行中は常時心を読まれていると思いな。君が何か雑念を抱いていないか、修行をさぼっていないかを確認するように、常時心を読むつもりだよ。読まれたくなかったら、まじめに修行をして、魔力で心を守れるようにしようか。」
そんなことができたのか。修行の合間に練習してみようかな。
「そうするといいよ。それをしながらこの訓練をできるようになったら君も一人前レベルになれるはずだよ。と、これで前置きは終了だ。早速今日の特訓に入るとしよう。」
そうして修行が始まったんだ。
一日目
これから修行の日々が始まった。最初は魔力増幅の修行。光魔術は主に、光をひたすら出すだけだ。正直とてつもなく地味で、暗い部屋でひたすら光を出しながら座っていた。時々なんか歌を歌ったり、走ってみたり、光を出しながら筋トレをしてみたり。そんな感じで一日目から暇をつぶす方法を試行錯誤していた。唯一の救いは、一日中これをやるわけではないことだ。
午後になり、創造魔術をする時間になった。棒が想像するのは普通の剣だ。千歳さんに言われた通り、まずは本物を見て、構造を理解し、魔力を編み、剣の形を形成していく。
「すごいな。」
「なにがですか?」
「初見でちゃんと形を作れる人はそういないんだよ。初見でちゃんと形を作れている君はもしかしたら創造魔術の才能があるのかもね。」
そのあとも何度か作り直す度、どんどん形がきれいになっていき、一日で本物と遜色ないものを作れるようになっていった。本当に僕には才能があるのかもしれないと、自己肯定感が上がった。これはモチベーションにつながるな。
創造魔術の練習の後は、また光魔術の練習だ。ひたすら光を作り出し、部屋中を照らしていた。その合間に、自分の心を守る魔術の練習も行っていた。ただ、
「心を守る魔術はまだまだだね。君の心は簡単に読めてしまうよ。」
笑いながら言う千歳さんに、少し怒りを覚え、隠すのも無駄なので顔全体にその怒りを出しながら、その後も修行に専念した。
二日目
二日目は一日目と同じ工程をただひたすらに切り返すだけだ。今のところいまいち魔力が増えたり、練度が上がった感覚がない。そもそも光魔術は光を出すだけなので、ほかの魔術よりも魔力の消費が少ない。僕の魔力は1000なので、それだけあれば一日中光を出すぐらいはできるのだ。
「そう思うなら、込める魔力を増やしてみればいいじゃないか。」
たしかに。と思いながら、込める魔力を増やしてみた。すると光の大きさは大きくなり、それと同時に魔力がどんどん減っていった。部屋を照らすぐらいならこんなに魔力を込める必要はないのだが、こうした方が修行をする分には効率的だろう。
次は創造魔術の練習だ。今日も昨日と同じ普通の剣の練習をしたのだが、やはり才能があるのだろうか。千歳さんから合格をもらえるレベルまで成長した。立った二日でここまで行けたのは僕を含めて十人もいないらしい。明日からは別の武器の練習をするらしい。千歳さんもここまで成長が早いとは思っていなかったのか、
「これは訓練プランを立て直すべきかもな。よし、明日から光魔術を剣に付与する練習もしていこうか。」
この地味な修行の日々に、一筋の光が差した気がした。光だけに
「正直面白くはないよ。そんなに暇ならギャグの練習もしたら?」
やはりこの人はイライラするな。
三日目
込める魔力を増やしたことで、部屋が明るい時間が減った。昨日の今日なので魔力が増えた実感もない。修行のためとはいえ、光がまぶしすぎて目が悪きなった気がする。これまで視力検査はいつも満点だったので、こんなことで視力を落としたくないと思いながらも修行を怠ると千歳さんに怒られるので、目をつぶりながらやることにした。
創造魔術は、今日から斧の練習をすることになった。剣よりも複雑なので、さすがに剣より苦戦を強いられた。それでも今日中に形までは作ることができた。
そして次は、今回からスタートの武器に光魔術を纏う修行だ。
「創造魔術で作った武器は、自分の魔力だからね。自分の魔力に自分の魔力でできた光を纏うことはまあ簡単さ。」
千歳さんの言う通り、光魔術を纏うのは、簡、単、
「できてないね。まあ、できない理由は簡単なことさ。魔力を込めすぎなんだ。魔力操作が重要な創造魔術をあんなにできるのに、なんでこれはこんなに雑なんだい?」
「創造魔術は正直言うと、感でやってるんで、纏うために魔力を込めようとするとどうしても難しくて。」
「シャドウと違って、君は雑だね。」
シャドウと違ってとか言われた。シャドウはできるのか。やっぱりこの人は一言余計というか、イライラするな。もうさんをつけないで、呼び捨てにしようかな。
「私は別に構わないよ。」
また心を読まれた。こっちの練習はまだまだだな。せめてこの二週間のうちに読みにくいといわせてやろうと、心に誓った。
四日目
一週間も半分を切った。まだまだ魔力が増えた実感はなく、明るくできる時間もあまり長くならない。
明るくしてる間、筋トレとかをしてたおかげで体力は多くなった気がする。
創造魔術に関しては、どんどん成長していった。今日で、斧を作ることに成功した。斧は剣よりも魔力の消費量が多いので、メイン武器は剣になりそうだ。
光魔術を纏うのは、いまだに魔力が多くて数秒しか保つことができなかった。一応、剣の維持と、光魔術の維持に魔力を使いまくれば、もう少し安定させられるけれど、やはり非効率的だ。魔力をより精密に操るには、流す量を勘に頼らずに調整する必要がある。僕が一番苦手なことかもな。
「光魔術を水だと思い、作った剣をコップと思えばもう少しうまくなるんじゃない?」
確かに。と思い、やってみるとちょっと維持できる時間が長くなった。
「まあ、あるあるの考え方だよね。この方法なら日常の延長として、君のような感覚に頼るタイプでもやりやすいだろう。」
やりやすくなったのは事実なので、今日はあまり怒りを抱かないまま、一日を終えることができた。
五日目
変わらない修行の毎日。唯一の楽しみは創造魔術ぐらいだ。今日は槍の練習だったが、正直過程なども大して変わらないことに話すことが同じになってしまうな。
「誰に話すんだい?退屈すぎてイマジナリーフレンドでも見えるようになったの?」
相変わらず心を守るのはできないままか。と落胆しつつ、自分の発言に疑問を持った。確かに誰に話すんだろうか。五日目にして気でも狂っただろうか。
五日目の夜
千歳は、光祐の魔力について研究を重ねていた。
「やはり特殊な魔力だな。光祐くん本人の魔力とは別の魔力が”二つ”も混ざっている。一つは影の魔力、これはシャドウの魔力で間違いないだろうが、もう一つはとても明るい。確実にシャドウの魔力ではない。」
その魔力は、光祐のなかにあるどの魔力よりも明るく輝いており、その量は、あまりにも異常だった。
「普通に魔力量の検査をすると反応しない。ちゃんと見て、確かめないとわからない魔力。なのに、気づいたとたんどの魔力よりも存在感が大きくなる。まさか、シャドウと光祐君、どちらの魔力でもない”外付け”の魔力か?それなら魔力量検査でわからないのにも納得がいくが、いくら何でも多すぎるな。」
まるで、生まれてこの方魔力を使わずにためておいたような、とりわけ魔力が多い聖遺物を何個も取り込んだような、とにかく多い量だった。
「だが、こんな魔力量では体が持たない。魔力量に体が耐えられずに爆散しかねない量だ。だが聖遺物のような気配は感じない。いったいどんな魔力なんだ?」
ピピピ ピピピ
机の上のアラームが鳴った。朝日が昇り、朝になったのを知らせるアラームだ。修行の質を上げるために、毎朝光祐が起きる前に日光を当てているのだ。
「もうそんな時間か。ほーら光祐君、日光ですよ。」
日光を当てると、これまで全く気付かなかったことに千歳は気づいた。
「魔力が、増えている?まさか。」
千歳は光祐の増え続ける魔力を感じながら、太陽を眺めるのだった。
修行パートです。二週間は長かったかな。正直やることが同じすぎて書くことがない。まあここからは書くことが増えるかもだけど。




