4話 光祐とシャドウサイド その一
「それじゃあ早速修行を始めるぞ。」
「はい。」
僕は、自分の別人格であるシャドウサイドに勝つために、千歳先生と修行することになった。だが、僕は今、死刑までの執行猶予で生き残っている。執行猶予は二週間。それまでにシャドウに勝たなければならない。
「でも、修行っていっても何をするんですか?」
「そうだな。基礎的な部分、つまり魔力と肉体、あとは知力だね。だが、君とシャドウは肉体的には同一。つまり、肉体と魔力が強くなれば、シャドウも強くなると言うことだ。」
「じゃあ修行の意味がないじゃないですか。差が縮まるどころか、元々僕の方が弱いのなら差は離れる一方では?」
「そうだね。だから君には、君にしかできないことをできるようになってもらう。例えば、シャドウは影を操る魔術を使う。それに対抗できるよう、光魔術を学ぶとかね。」
光魔術。それは主に暗い闇を照らす光を作り出す魔術。
ただし、それは攻撃に使うのは難しく、光の攻撃魔術は簡単なのは、光の弾丸を飛ばす程度である。極めればそれでも高火力を出せるが、それを極めるぐらいならもっと効率の良い攻撃魔術がある。
「光魔術なんて、極めるには二週間じゃまるで時間が足りませんよ。」
「そこなんだよね。君が言ったように光魔術は二週間で極めるのは不可能と言ってもいい。でもね、知ってる人はごく僅かだが、光魔術にはちょっとした裏技があるんだよ。」
「裏技?」
「そうさ。まあその裏技も付け焼き刃のようなモノだがね。普通の魔術戦では使い物にはまるでならない方法さ。でこ、シャドウには有効だろう。」
シャドウの使う魔術は、影を操る闇魔術。光魔術は闇魔術に有利を取ることができる。付け焼き刃でも有効は有効。決定打とまではいかずとも、戦闘を有利に進めることができるだろう。
「そういうことさ。そういうことで君に教える魔術は、光魔術と創造魔術だよ。」
「創造魔術?」
創造魔術っていうと、魔力で物質を造り出す魔術だ。戦闘で武器を失った時とかには重宝するけれど、それ以外では大した役に立たない魔術だ。なぜなら、創造魔術で造った武器は、本物と比べると、劣化してしまう。そして、造るにはその造りたい物への理解を深める必要がある。そのため、魔術を使う前に武器への理解を深めるところで苦戦する。理解があってもやはり魔力で作った本物の模造品でしかない。
「そんな魔術を使えるようになってどうするんですか?それをするぐらいなら、すべての時間を光魔術に費やした方が・・・」
「言いたいことは分かるとも。でこね、この魔術を学ぶのにもちゃんとした理由があるんだよ。まず、この裏技は武器がないと成立しない。二つ目は、君とシャドウの戦場が理由だ。」
「戦場?ここじゃないんですか?」
戦場がどこだろうと、本物を用意しとけばいいんじゃないだろうか。
「君の疑問はもっともだとも。でもさ、君は自分とどうやって戦うつもりだい?この現実に君は1人しかいないんだよ?」
「確かに。じゃあどうやって?」
「言葉で説明するより体験した方が早いだろう。この鏡を見たまえ。」
「鏡?」
千歳先生が指したのは、部屋の隅にある何の変哲もない普通の鏡だった。僕は疑問を抱きながらもその鏡の前にたった。
その直後、僕の体は捩れるようにしながら鏡に吸い込まれた。
ここはどこだ?鏡の中なのだろうか。あの鏡はなんだったのだろうか。そう僕が考えていると、目の前にはとても見覚えがある人が立っていた。
「ふん。あの女、こんなものを持っていたのか。それにしても修行する前に俺の前に”僕“を連れてくるだなんて、強いやつだと思ったが、バカだったか。」
「お前は、僕、なのか?」
目の前にいるのは、僕自身だった。正確には、見た目は僕だが雰囲気と口調が僕とはまるで別人だった。
「まさか、お前が、僕の別人格、シャドウサイドなのか?」
「その通り。俺がシャドウサイド。お前の別人格だ。」
「ここはどこなんだ?鏡の中ならなぜお前がいるんだ。ここは鏡の中じゃないのか?」
「ここは精神世界だ。あの鏡は、人間の精神を映し出す。よく言うだろう。己の精神に勝つとか。それを魔術的に再現した物だ。精神がふたつある俺らは、精神の表と裏が映し出されたんだろうさ。」
そういうことか。と、僕が納得すると、目の前にいたシャドウがいつのまにか消えていた。
僕が反応する間もなく、背後を取られ、その首を狩られた、、、かに思われたが、首を狩られる刹那、僕は千歳の部屋に戻っていた。
「おかえり。どうだった?シャドウとの初対面は。」
ついさっき死を感じたことで震えている口を動かし、僕は言葉を紡ぐ。
「さっき僕は一度殺されました。反応すらできなかった。防御も、反撃も許されないまま、首を切られました。」
そう。死を感じたのではない。殺されたのだ。確実に首を狩られた。ならば何故生きているのか。
「あそこが精神世界だからだよ。心が弱い人は、あの時点で君の心は死に、現実では廃人となっていただろう。さっきは君が反応する間もなく切られたからなんとかなった。その死の感覚は、現実に戻ってから感じたものだ。」
「僕が弱かったから生き残ったって言うんですか?」
「そうさ。幸か不幸か、君が弱かったから今生きている。でもね、わかっていると思うが、それじゃダメだ。君は強くなり、奴に勝たなければならない。いいね。」
「・・・はい。」
僕はまだ怯えていた。僕は一度シャドウに殺された。その恐怖がまだ残っている。内心僕は、奴に勝つことは出来ないと諦めかけている。この恐怖は心を読める千歳にはバレているだろう。
「その怯えはとても重要な物だよ。君はその怯えに打ち勝った時、シャドウの精神を越えることができるだろう。」
やはり僕はまだ千歳の言うことに素直に首を縦に振ることが出来ない。それでも、今に僕は恐怖だけでなく、悔しさも感じでいた。
「指導、よろしくお願いします。」
僕は深く頭を下げた。千歳に頼み込んだ。強くなりたい。奴に勝ちたいと強く願った。
「これから二週間、ビシバシ鍛えるから、覚悟するんだよ。」
「はい!」
千歳は笑顔でそう言うと、早速行動を始めるのだった。
第二章 光影決戦編の始まり始まり。
光祐とシャドウサイドの決戦の行方はいかに




