25話 魔術大祭⑪ 氷のゲーマー
「いやぁ、なんとか勝ったな」
「俺のおかげだな。感謝しろよ」
ん?
なんか違和感があるような•••••。
「氷織って、一人称『俺』だったっけ?」
「?俺は俺だけど」
気のせいかな。•••••まあいいか。
僕らはモードレッドとの戦いに勝利し、一度休息を取っていた。
「にしてもビビったな。倒したと思ったら、最後の力で切り掛かってくるとは」
「バーサーカーなんてそんなもんだよ。大抵死んでも死なないんだ」
モードレッドは、氷織の弾丸が当たり倒れたが、次の瞬間、無造作に剣を振り回しながらなりふり構わず暴れ出したのだ。
最後の悪足掻きだったため、すぐに動かなくなったのでなんとかなったが。
「いったん互いの状況整理と行こう。まずは僕から」
僕はここまでの行動と、クエストについて話した。
「そういえば、クエストクリアでDクラスのメンバーを調べたんだけど、10人って出てきたんだよね。なんか知ってる?」
「あぁ、それね。多分俺のせいだわ」
「••••••え?」
「いやね、デコイって知ってる?FPSゲームとかである、分身とかを出すやつなんだけど」
ゲームはあんまわかんないけど、デコイってのは、いわゆる囮みたいなものだっけ。
「俺は氷でデコイを作ったんだ。こんなふうに」
そう言って、氷織は氷を操り形を形成する。
それはやがて色を持ち、氷織本人と見紛うほど瓜二つになった。
「攻撃とかはできないし、攻撃されたらすぐ壊れちゃうけど、視察とかにはもってこいなんで、今この森の中に2体放ってるんだ」
「はぁ、通りで。•••••あ、もしかしてそれのせいか?一人称」
どうしても違和感が拭えない。この説明を聞いてもしやと思ったが。
「ああ、確かに光祐が部屋にいた時大体がデコイだったな」
俺と一緒の部屋が嫌だったのかな。マジか•••••。
「そんなあからさまに悲しそうな顔すんなよ。別にお前が嫌いとかじゃない。この学校って、ゲーム機みたいな機械ってあんま持ち込めないんだよね」
魔術師の中には現代の機械を嫌う者も少なくない。それへの配慮として、この学校への持ち込みが基本禁止なのである。
「部屋の中じゃいつ見回りが来るかもわからないし、誰にもバレない場所でゲームしてたんだ」
なるほどな。氷織ってゲームが好きなんだ。
「さ、この話はここでおしまい。さっきクエストは二回やったって言ってたよな。うち一回はどこを見たんだ?」
「Bクラスだ。2人やられてた。確か、円堂咲夜と疾風疾風だった」
「疾風疾風••••••ああ、そいつは倒したの俺」
へえ••••••は?
「ざっと、30分ぐらい前———」
* * *
「終わり」
森の中、疾風は杖を俺(分身)に向けていた。
その杖に魔力が集中していく。その先から、光属性魔術、”真光弾“が放たれた。
それは俺(分身)の顔面に直撃、氷の顔が粉々に砕けた。
「氷•••••分身———」
「動くな」
俺(本物)は、氷銃を頭に突き当てながら話す。
「質問に答えてもらう。まず、Bクラスのメンバーの詳細について•••••」
「殺る」
疾風は脅しをものともせず、後ろの相手に杖を向ける。
が、疾風が撃つより先に、銃の引き金が引かれた。
「ふぅ、まずは1キル。クラスメイトに会う前にあと1人ぐらい倒しときたいな」
マップ的に敵がいそうなのは、あっちかな。
俺は西の方へ歩き出す。俺はすでに、このフィールドのマップを把握している。なぜなら、試合開始した後すぐにマップの端から端までを移動したのだ。かかった時間はざっと1時間。
「俺はオープンワールドゲームは最初にマッピングをするタイプなんだ〜」
「そうなんだ」
「?!」
瞬間、水属性のビームが飛んできた。
俺は咄嗟にそれを回避した。
「なーんだ、避けられちゃうんだ。話しかけるんじゃなかったな。独り言してるから、つい」
「あんたは確か、水守天守」
「そのとおり。じゃ、やろうか」
天守は杖をこちらに向けて来る。
水守天守、二回戦では水鏡を使ってたっけ。防御力は高いが、戦闘力は未知数だな。
「水属性魔術、“アクア•ウェーブ”」
「まずっ———」
アクア•ウェーブ
それは魔力を水に変換し、それを津波として大量に流すというものだ。
それは木を流し倒しながら俺の元へ流れて来る。
範囲攻撃だから避けれない。なら。
俺は地面に手を当て、魔力を込める。
「凍れ!」
魔力は地面をつたい、アクアウェーブを先から凍らせていく。
水の流れをせき止め、そのまま波を全て凍らせた。
「ウッソ、そんな簡単に」
「簡単じゃねえよ。あの波だ。全部凍らせるのになかなか魔力を消費した」
俺は氷銃を作り、近くの木の後ろに走る。
「隠れたって無駄だよ。さっきは驚いたけど、何度も同じ手は食わないわよ!」
天守は杖に魔力を込め、水の弾を乱射して来る。
「天守の戦闘パターン。1、アクアウェーブ。2、水弾。3、水鏡。攻略難易度は、レベル3ってとこかな」
俺は木を移動しながら、なるべく相手の視界に入らないよう立ち回る。
撃たれる箇所がバレてたら防がれる可能性がある。狙うは急所への決定的な一撃。
「自ら出て来るとは!」
俺は木から体を出して相手へ近づく。
水弾が直撃して吹っ飛ばされてしまう。
「砕けた、分身!」
「ゲームセットだ」
背後、ハンドガンの照準は急所、つまりは首。
俺は素早く引き金を引く。分身からノータイムでの奇襲に天守は間に合わない。
「なんて思った?」
高速で撃たれた3発の弾丸は、全て一瞬のうちに発動した竜に使ったものより小型の水鏡によって防がれてしまった。
「ゲームオーバーよ!」
杖をこちらへと向けようとした天守だが、その瞬間、耳をつんざくような音が響き渡る。
天守の体がバタリとその場に倒れる。
「ふぅ、ゲームクリア。水守天守攻略完了」
俺は分身を二つ作り、奇襲させた。その間本物は悟られぬよう距離を取り、2体目の奇襲でできる隙をスナイパーライフルで狙っていたのだ。
「これで2キルだな。どうせならキルリーダーでも目指すかな••••••戦闘音?行ってみるか」
* * *
「で、あの戦いに参戦したって感じ」
さらっともう1人Bクラス倒してるな。僕たちが調べた後に倒したんだな。
じゃあかなり連戦してるってことじゃん!
「大丈夫なのか?」
「ああ、大丈夫大丈夫。言おうと思ってたんだけど、実は俺もマッピングしてる途中にクエスト見つけてさ」
氷織はポケットから一つの栄養スティックを取り出した。
「そこのクエストはクリアするとアイテムがもらえてさ。これは魔力回復のスティック、食べな」
「ありがと」
一口食べると、別においしくはないけど回復したことを実感する。
「じゃあBクラスは3人脱落ってことだな。上水流姉妹は見たか?」
「見てないな。ただ、マッピング中に戦闘音が聞こえたからたぶんそれだと思うんだけど」
状況整理が終わり、僕らは作戦を立てる。
「俺はこれから高所を陣取って遠距離射撃に徹する。分身を1人つけておくから、この先はそれで話そう」
「便利だな。ところで、火影はどうしよう」
「不知火さんか、こっちの戦いに集中してたから、もう場所がわからないな」
大丈夫だろうか。探しに行った方がいいだろう。
「じゃあ僕は火影を探すか。相手は暗殺者だし、正面からではそうそう負けないと思うけど、念のため急ごう」
「じゃあ一旦ここでお別れだな。お互い生きてまた会おう」
「ああ!」
そうして僕は、火影が走り去った方向へ歩き出した。氷織は、別の方向へと歩いていった。
無事でいてくれよ、火影。




