23話 魔術大祭⑨ クエスト/上水流姉妹
「やっと山頂か」
僕、光祐はあたりを見渡すために、近くの山に登っていた。
ここまで来るのにざっと20分か。
「ん?なんだこれ」
山頂には一つの石柱が立っていた。その石柱には一つの魔法陣が刻まれている。
その魔法陣に触れてみると、脳内に情報が流れ込んできた。
「———へぇ、こんなのあったんだ」
脳に流れ込んだ情報は、クエストについてだ。
ある特定のクエストをクリアすることで、A〜Dクラスの現在の生き残りの情報が手に入る。
「クエスト内容は•••••魔獣を倒せ?」
瞬間、近くの地面から、複数の死体が出てきた。
その全てが僕の方を見つめ、一心に襲いかかってきた。
「なるほど、こいつらを倒せってことか。やってやる!」
* * *
山頂まであと少しのところまで登ってきた。
私、火影はフィールドを一望すべく高めの山を登っていた。
ふと上の方を見ると、誰かが戦っていた。
「あれは、アンデッドと•••••光祐さん?」
複数のアンデッドと戦っているのは、Dクラスの光祐だった。
なぜアンデッドと戦っているのか、この戦いで魔獣の類が出てくるなんて説明はなかったはずだ。
「光祐さん!」
「火影!?どうしてここに•••••」
「話は後です。事情は知りませんが、このアンデッドは倒すべきなのでしょう」
「そうだ!」
2人でアンデッドを倒していく。
残り4体、2体、1、0。
アンデッドを全員倒し切ると、一息つき、状況を話した。
「クエスト、チームの残りメンバーの開示ですか。確かに、やる価値のあることですね」
「そうだろ。いったん今回ので1チーム分はわかるが、最初はDクラスについて見てみるか」
「再使用可能までの時間は30分後ですか。そうですね、Dクラスを見てみましょうか」
そして、Dクラスを選択し、情報を見る。
「「•••••は?」」
残りメンバー、10人
* * *
青海は、炎炎龍谷の魔術を避け続けていた。
「いつまでそうやっているつもりだ。攻撃しないと勝てないぞ」
「もう少しもう少し。待ってって」
青海は自分の逃げている方向を見た。
見えてるよね、青子。
* * *
見えてるよ、お姉ちゃん。
青子は、森の奥、どこかへ向けて走っていた。
「どこに行く!」
「お姉ちゃんのとこ」
ひたすら走り続ける。まるで土地を全て理解しているかの如く、木々の間を縫い走る。
あとちょっと•••••。
「あ•••••」
「行き止まりだ。一体どこへ向かっているのかと思っていたが、ただ逃げてるだけだったか」
•••••わかってるよ、お姉ちゃん。
青子は杖を敵ではなく、全く関係のない別方向へ向けた。
「水属性魔術、“水弾丸”」
水の弾丸は空を切ってどこかへ飛んでいった。
「はっ、何やってんだ?お前。奇行に走れば少しぐらいは隙ができると思ったのか?」
無駄だと言わんばかりに、杖を青子に向ける。
「火属性魔術、“緋弾”!」
魔力が集中し、緋色の炎が放たれる瞬間、
円堂咲夜の首元に、水の弾がヒットした。
「なっ!?」
衝撃で杖の先がブレる。
放たれた緋弾はどこかへ飛んでいった。
「ありがとうお姉ちゃん」
「どういたしまして。こっちこそありがとね」
気づけば、さっき青子がアクアバレットを放った先から青海が姿を現した。
その後ろには、咲夜と同じように首元を押さえる龍谷がいた。
「ど、どういうことだ!まさか、上水流青子、お前はこの森の中を、姉、上水流青海の元へ走っていたと!」
咲夜が驚きの声を上げる。
「ありえない!何よりこの戦いの初期地はランダムだ。特定の相手の位置なんてわかるわけが!」
咲夜と同じく、龍谷が声を上げた。この戦いでは、特定の相手を見つけるための魔術の使用は禁止されている。普通は不可能なのだ。
「私たちは姉妹だから」
「強い絆で結ばれてるんだ」
この2人は、昔からお互いの場所がわかるのだ。それは魔術によるものではなく、まさしく絆としか言いようがない2人の繋がりだ。
「じゃあそういうことで」
「2人には退場してもらうよ」
「そう簡単にやられるわけ!」
「おい、俺たちは別のクラスだ。だが、共闘は禁止されていない。ここは共闘すべきだ」
そう言って、龍谷と咲夜は2人並んで杖を構える。
上水流姉妹もまた、同じように杖を構えた。
「火属性魔術!」
「水属性魔術」
* * *
勝負はすぐに終わった。
2体2では、面識すらほぼない龍谷と咲夜の2人が、連携で上水流姉妹に勝てるはずもなかった。
「まずは2人だね、お姉ちゃん」
「そうね、青子」
勝利した上水流姉妹は、余裕の表情で杖をしまう。
「対人戦での貢献はこのぐらいでいいでしょ。じゃ、あとは保険の準備だけしてゆっくりしようか」
「そうだね、お姉ちゃん」
2人は互いに別々の方向を見た。
「じゃあまたあとでね」
「ええ、ちゃんとやるのよ」
「私が妹だけど一応同い年だよ。言われなくてもできるもん」
「はいはい。頑張ってね、青子」
「うん!」
そうして、2人は真逆の方向へ歩き出した。世界の端を目指して。
* * *
「あ、Bクラスが2人も減ってますよ」
「ほんとだ。えっと、円堂咲夜と疾風疾風の2人だな」
1度目のクエストから30分が経過し、もう一度クエストを達成した光祐と火影は、次に、Bクラスの方法を調べた。
試合時間は、すでに1時間を超えていた。
「誰かが倒したってことだよな。うちのクラスかな」
「可能性はありますね。ですが、今私たちが見れるのはBクラスのみです。もしや相打ちの可能性も」
「たしかに」
そうなると、敵が減ったやったーとはならないか。じゃあ、
「もっかいやる?クエスト」
「そうですね。せめて自分のクラスのことは知っておきたい———光祐さん、戦闘体制」
「•••••いるな、誰か」
火影は杖を構え、僕は剣を造る。
目の先、山頂より少し下にある木。眺めていると、木の影から、人が出てきた。
「なんだバレてたのか。じゃあ、正々堂々姿を出せる」
そこに出てきたのは鎧に身を纏い、剣を担いだ女性が出てきた。
その女性はこちらを睨み、不敵に笑った。
「私はモードレッド。本名は、まあいいか。私に勝ったら教えてやるよ!」
そう言って、剣を両手で持ってこちらへ突進してきた。
僕は相手の一撃を受け止めるべく前に出た。
「危ない!」
前に出ようとした瞬間、服の襟を引っ張られて後ろへ引き寄せられた。
目の前では、振り翳した剣が空を切り、地面を叩き割るモードレッドの姿があった。
「あっぶな!すまん助かった」
「いえ。それより」
「へえ、避けるのな。まあ正しい判断だ。さあ次、どんどん行くぞ!」
モードレッドがもう一度剣を構え直す。
僕らは一旦距離を取ろうと後ろへ逃げようとするが•••••。
「ここ山!この先崖だぞ!」
「落ちます!備えて!」
「落ちます!落ちるの!?ちょ、まってまだが準備が———!」
モードレッドが剣を振り払った。
それを間一髪で避けるように、僕らは崖の下へ落ちていった。




