21話 魔術大祭7.5 反省会②
『第二回戦も終了し、現在はAクラスが独走し、他クラスが並んでいる状況です。第三回戦は2時間後を予定していますので、しばらくお待ちください』
アナウンスが終了し、僕らDクラスは集まっていた。
「も、申し訳ありません。私がもっと速く決着をつけていれば」
稲神舞が、全員の前で頭を下げている。
「頭を上げてください。あなたの戦いは十分に良かったですよ。相手もとても強かったですし。気に止むことではありません」
「そ、そうですよ。それに、舞さんが頭を下げないとなら、私なんて土下座だけじゃ足りないぐらいですよぉ」
不知火火影が舞を慰め、逆に自分を卑下する石火矢穂村。
「いやいや、穂村ちゃんはスピネル•メテオライトに立ち向かったじゃんか。俺なんて、汚名返上とか言っといて、何もしないまま一瞬で脱落したし•••••」
「なんで毎度戦犯探しするんだよ•••••。その前にこの戦いで分かったこととか話し合おうよ」
「それもそうか。じゃあまず、Aクラスから話そうか」
Aクラス
「Aクラスで今回分かったこと。まず、本名は廻であることが判明しました。そして、発言からおそらく伝説系含め、歴史上の王が好きであるということですね」
「それはまあ、大した情報じゃないな」
獅子王についてはまだ分かっていないので、今回は放置。
「俺の時にいたのはパーシヴァルだな。あいつは槍持ってた。叫んでたのは“ロンギヌス”。あの一撃は結構やばいぞ」と守。
「俺の時はガレスだったな。盾と剣持ってて、なんと言うか、すごい元気な感じだったな」と陸。
「私の時はトリスタンさんでした。多分、対人戦では最強だと思います。呪言で強化された必中の弓”フェイルノート“、あれがなかったら竜にも勝てませんでした」ともみじ。
「わ、わたしはガウェインさんです。でも、あんまり見てなくて•••••」と穂村。
「まああいつは前回も出てたしスルーでいいだろ」
「私の時はランスロットと言っていましたね。私もスピネルに集中していてちゃんと見てませんでしたので、かなり強い、としか」と舞。
観客席から見ていたこちらでさえ、ランスロットがどんな能力なのかはよくわからなかった。なんか話してはいたが、こちらには聞こえなかった。
Bクラス
「早見紫音、実況者と名前が同じだな。あいつの槍、すっごい速い。なんとか勝てたけど、正直懐に入られたら終わりって感じ。あと、疾風疾風はあの連射とエイムだな」と守。
「金剛拳はな、俺のゴーレムを軽々粉砕してきやがった。しかも殴ってだぞ!ありゃやばい」と陸。
「水守天守さんの”水鏡“も凄かったですね。竜の魔力砲を軽々跳ね返しちゃって」ともみじ。
「金剛流石さんって、拳さんと兄弟、なんですよね」と穂村。
「そうですね。そしてランスロットさんと斬り合えるだけの剛腕を持っていました」と舞。
Cクラス
「椎名御子だな。陰陽術ってんだっけ?まあ、厄介っちゃ厄介だけど、警戒してたらなんとかって感じかな。蓬莱恵はやばかったな。あの殺人毒はもう使わないと思うけど、使われたら厄介だ」と守。
「サヴィ•サモラールは、よくわかんね。竜は使役できないの分かってて召喚したっぽいし、あとはブラックウルフしか召喚しなかった」と陸。
「影縫美代さんは、一回戦にもいましたよね。影狗さんと暗殺してきた。あの人は終始隠れていたので保留で」ともみじ。
「スピネルさんは、私じゃ手も足も出なくて•••••」と穂村。
「はい。あの人とても強かったです。惑星魔術、規模が広いし威力も高い。次の戦いでも出るのなら本当に警戒すべきでしょう」と舞。
「では、この情報を元に、三回戦のメンバーを選出します。といっても、まだ出てない人が優先的に出るのですが」
「まずはアタシらっしょー」
「あたしもー」
上水流青海と上水流青子が手を上げた。
「じゃあ次は僕だね」
次に手を挙げたのは天沢氷織。僕のルームメイトだ。
「まだ出てないのはこの3人だけですね。では残りの3人ですが•••••」
「私にやらせてください」
「僕がでてもいい?」
声が被った。
声の主は、僕と舞だ。
「この戦いはきっとスピネルも出るでしょう。今回は自爆、決着をつける前に終わってしまった」
舞は悔しそうに手を握りしめた。
「絶対に決着はつけます。私の勝利で」
「いいでしょう。元よりそのつもりでした。私が全体の指揮を任された時から、三回戦のメンバーはほとんど決めてましたし」
実は、この祭りが始まった時、全体の指揮を火影に任せるとDクラスで決めていた。
「僕も出る。戦いたい相手が何人かいるんだ」
僕が連想したのは2人。Aクラスの獅子王と、Bクラスの風切刃。
あの2人とは戦いたい。各クラスで一番強いだろうから。
「わかりました。最後の1人ですが、私が出てもよろしいでしょうか」
全員が同意した。
「いいも何も、指揮権は火影さんにあるんだから、いちいち断る必要ないよ」
「そうですか。ありがとうございます」
出場メンバーが決定した。
1人目、不知火 火影
2人目、稲神舞
3人目、光祐
4人目、天沢氷織
5人目、上水流青海
6人目、上水流青子
「メンバーは決まりましたので、試合開始までは自由時間とします。あと、昼食は食べておいた方がいいでしょう」
全員がその場からいなくなる。
僕は昼食でも食べに行こうかな。
* * *
「今回の戦いで、あなたたちの作戦じゃダメだってことがわかったわね」
Cクラスはスピネル•メテオライトを中心として話していた。
「あなたたちの作戦は、“私を使わずに”勝つこと。そのためにさっきも竜まで使った」
スピネルは冷ややかな声音と視線で周りを見ていた。
「結果、竜で倒せたのは全クラス2人だけ。結局私が出ることになった」
「でも、あなただって勝てなかったじゃないですか」
椎名御子が、スピネル以外沈黙の中、声を上げた。
スピネルの目がギロリと御子に向けられる。御子はその威圧的な視線に怯えを見せた。
「そうね、私は負けたわ。確かに勝つことが一番だったけれど、あの状況、私はあえて最下位に甘んじたの」
全員が最後のモニターに映された点表を思い出す。
Aクラスを除いた全クラス同点という現状、この状況をはスピネルにより意図的に作られたものだ。
「あなたたちが勝ち越すのなら、まあそれでも良かったわ。試合は実力を競う場、他クラスがCの作戦に負けただけだから。でも、結果としてあなたたちは敗北した」
全員の顔がいっそう暗くなる。
「私はDクラスの稲神舞と戦って思った。この人たちとは、本気でやり合いたいって。だから、一度盤上を整理した。それだけよ」
「理解しました。で、負けた我々はどうなると?」
この状況で顔を上げていたうちの1人、影狗夜霧は、なんとなく察している表情で質問した。
「契約通りよ。まず、サヴィを返してもらう。次に、この先の戦いの全ての権限を私に譲渡する」
「•••••わかりました。サヴィさんを貸していただき、ありがとうございました」
「じゃあ、ここからは私の作戦で動いてもらうわよ。まず、次の試合についてだけれど•••••••」
この先の会議は、終始、全員の顔は暗いままだった。
* * *
一年生が休憩中の今、二、三年生が試合をしていた。
火影は、三年生の試合を見にきていた。現在の種目はクラス対抗決闘だ。
(兄様•••••)
火影は悩んでいた。目の前で戦っている兄は、火属性魔術、“陽炎”を何回も連続して使用している。
比べて私は、一回しか使えない。
その違いはなんなのか、次の試合に挑む上で見定めにきていた。
『不知火不炎選手、相手の攻撃を全て回避!一撃も喰らう事なく全ての敵を圧倒した!!』
気づけば試合は終わっていて、ついぞ違いを見つける事はできなかった。
このままでは、私はこの魔術大祭で———。
「あれ?火影じゃん。お前もきてたのな」
「•••••光祐さん、なぜここに」
「いや、なんか次の試合の参考になるものがあるかもと思ってな。勝ち進めばこの人らと戦うことにもなるし」
この人は、もう勝ち進んだ後のことを考えているのか。不意に、私は怒鳴りつけそうになった。
私が悩んでいるのに、こいつは何歩か先を見据えている。こいつに負けた気がして腹立たしい。
「気楽なものですね。次の試合、勝つ確証があるとでも?」
その怒りを必死に抑え込み、なんとか嫌味程度に縮めた。
「いや、そんな確証はないけどさ。ま、勝てないとは思ってないけど」
「••••••••••私は、どうすればいいのでしょうか。ここへは、兄を見にきました。なにか、掴めないかと」
「なにか?」
「あなたに負けて、一試合目で暗殺者に負けて、思い知ったのです。私は弱い」
強くなりたい。
「どうすれば、強くなれるのでしょう」
「強くなるには、か。•••••そうだな、その怒りっぽいのを治してみたらどうだ?」
自分が怒りっぽいのは知っていた。確かに、この感情が致命的な隙を作ることもある。
事実、それで目の前の相手にも負けているのだから。
「•••••そうですね。次の試合、意識してみます」
「そうするといいよ。もっと冷静に、戦況を見極めるって感じで」
「はい」
そして、光祐は昼食を食べると言って、去っていった。
この怒りの感情が枷になるのは分かっている。捨てなくては強くなれない。でも、
この、胸に刺さるような痛みは、なんなのだろう。
悩みが晴れる事はなく、火影はその場に立ち尽くすのだった。




