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20話 魔術大祭⑦ 二回戦終結

 二回戦、最終ラウンド。

 Aクラス、ランスロット。

 Bクラス、金剛流石(こんごう るい)。

 Cクラス、スピネル•メテオライト。

 Dクラス、稲神舞(いなかみ まい)。


『魔術大祭第二回戦も、とうとうラストスパート!最後に勝利するのは誰になるのか!?解説の獅子王さん、勝利クラスの予想は?』

『そうですね、まだ出てきたばかりの人が大半なので、ちゃんとした予想はできませんが、Cクラスのスピネル選手の惑星魔術はこの4人の中でもトップクラスの火力を誇るでしょう』


           *  *  *


 フィールドに入った舞は、上空に目をやった。


「やっぱり試合ってのはフェアじゃなきゃね!全クラスラスト1人、竜種もいない。実にいいわ!」


 目線の先、上空にはスピネル•メテオライトが浮かんでいた。

 まさか浮遊魔術を使っているのか?浮遊魔術はかなり高度な魔術で、一年生どころか、1級の魔術師でも困難な魔術だ。


「さ、じゃあ手始めに。このぐらいは耐えてよね!」


 スピネルは上空に宝石を投げる。

 その数は1、2、3個。全てが紅い光を放っている。


「惑星魔術、“隕石衝突•紅玉(メテオ•ルビー)”」


 先ほど見せた魔術。この魔術の攻撃範囲はかなり広い。だが、舞に避けるのはそう難しくはない。


「雷属性魔術、“エレメンタルエフェクト•サンダー”」


 エレメンタルエフェクト

 それは自身を強化する魔術。そして、その強化内容は属性によって変わる。

 火属性は攻撃力を主に強化する。

 水属性は魔力の流れを速く。

 地属性は地に足をつけている間の攻撃と防御を。

 風属性はスピードを。

 光属性は光が当たる場での攻撃と防御を。

 闇属性は影の中での攻撃と防御。

 そして、雷属性は自身の動体視力、反射神経、スピードを強化する。

 

 舞は雷を纏いながら駆けた。

 そのスピードは石火矢穂村(いしびや ほむら)の変身魔術によるスピードを凌駕する。

 行き先はスピネルの真下。

 惑星魔術は、規模が大きい。そして今回落とされたのはスピネルを除いた三者の真上。

 もちろん術者は自分に当たらないようにする。つまり術者の真下は、安全地帯なのだ。


「あら、全員避けたわね」


 舞はもちろん、他の2人も隕石の一撃を回避していた。

 舞は真上のスピネルを睨みつけた。


「降りてきなさい!正々堂々、正面から剣を交えましょう!」

「いやよ?たとえフェアな試合だとしても、自分のアドバンテージを捨てることはしないわ」


 降りてくる気配はない。

 ならばあの場所に私が行くまで。

 舞はまたも走り出す。その先はフィールドの端、結界。

 地面を蹴る。そしてその足は次に結界を蹴った。


「覚悟!」

「あら、ここまで飛んでくるなんてね。でも、いいの?」


 スピネルは舞を、少しの哀れみを込めながら見る。


「そこ、私に届かないけど」

「•••••え?」


 その言葉通り、腕を必死に伸ばし、剣を当てようとするが、あと数センチ届かない。

 舞は下を見る。現在の高さは地上から10メートルほど離れている。


「ひゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 叫び声を上げながら地面へと落ちてゆく。

 このまま落ちれば大ダメージだ。エレメンタルエフェクトにより強化された反射神経でダメージを最小限にする方法を探し出す。

 

「雷属性魔術、“サンダーボルト”!」


 地面へ向かって雷属性魔術を放つ。

 サンダーボルトは魔術的にはそんなに強い魔術ではないが、自然現象の雷と同程度の電流が流れる。(魔術と本物の電流とでは扱いが違う)

 地面に落雷が落ちる。

 その落雷は、地面に強力な磁場を作り出し、地面に含まれた微小な砂鉄が磁化する。

 磁化したそれらが一点、舞の真下へ集まる。

 その磁力はほんのわずか、人を浮かせるほどの磁力は決して無い。が、魔術による雷ならば、その磁力を強めることができる。人を一瞬浮かせるだけの磁力は作り出せる。

 ふわっと一瞬宙に浮き、落下によるダメージを大幅に軽減させた。


「あっぶなかった〜」


 舞は冷や汗を拭いながら、立ち上がる。


「よく耐えたわね。あと、あなたって騎士みたいな雰囲気出してたけど、もしかして結構ドジ?」

「••••••••••••••••••••••••••••••••••」


 図星だった。


           *  *  *


 流石は大剣を振り回しながら、目の前にいる騎士を観察していた。


(ランスロット。円卓でも最高の武勇を誇る騎士。その力を受け継いだであろうこの男は)


 強い。流石がこれまで戦ってきた誰よりも強い。

 一撃一撃がとても重い。持っているのは傷ひとつない美しい剣。


「強いな、あんた。力だけじゃなく、その技量も」

「お褒めいただき、ありがとうございます。その褒め言葉は普通にいただきましょう」

「じゃあ少しぐらい攻撃を緩めてくれてもいいんだぜ」

「それはできませんね。あなたの技量もなかなかです。少しでも気を緩めた途端に体のどこかが両断されそうで」


 流石は常に一撃必殺を狙う。

 その大剣は地属性魔術により、重量が通常の数倍になっている。

 その一撃は人間の体など容易に両断する。鎧を着ようと、防げるものではない。

 互いの技量は互角。だが、力はランスロットが少し上なため、少々押され気味だ。


「互いに少しの気の緩みが命取り、楽しいな!」

「互角の相手と戦うことは己の成長にもつながる。簡単にやられないでくださいね!」

「ハッ、上等!」


           *  *  *


 だんだんと距離が掴めてきた舞は、その剣先がスピネルへ届くことが増えてきた。だが、いまだに相手を傷つけることは出来ていない。


「降りてきてくれさえすれば•••••あ」


 そこで気づいた。“降りてこないなら、降ろせばいい”。


「雷属性魔術、“雷鞭(らいむち)”」


 剣が雷を纏い、やがてそれは長く伸びていく。

 舞は電気の鞭をスピネル向けて振るう。

 スピネル目掛けて飛んでいく雷鞭は、その足へとしっかり絡みついた。


「ふんっ!」


 舞は鞭を全力で振る。

 引っ張られたスピネルは地上へと落とされる。

 絡みつく鞭を取ろうとはしているが、なぜか抵抗せずに地面へ落ちてくる。

 砂埃を撒き散らしながら地面へ衝突した。

 地面に落とした!地上(ここ)なら、私が。

 落ちたスピネルへ向けて疾走する。

 舞の高速の突きがスピネルの腹部目掛けて飛んでゆく。


「惑星魔術、“黒重力(ブラビティ)”」

「ッ!?」


 突如大きな重さに舞の体制が崩れる。

 その一瞬の減速にスピネルは宝石を投げつけた。


「爆ぜろ」


 瞬間、宝石が紅光を放ちながら爆発した。


「クリーンヒットね!どのぐらいのダメージに•••••!」


 舞は止まらなかった。

 宝石の爆発をものともせず、スピネルへ剣を振るった。

 スピネルは咄嗟に宝石でコーティングされた腕で剣を防ぐ。が、舞の攻撃は一度ではなかった。

 高速の連撃が襲う。

 最初の数発は防いだものの、全てを防ぐことは出来なかった。

 頬は切られ、腕のコーティングも剥がれている。

 特に腹部が大きく切られていた。


「イッタ。やるじゃない、アナタ」


 腹部の傷を宝石コーティングで止血し、舞を見る。


「褒めていただきありがとうございます。まだまだ行きますよ!」

「そうはいかないわよ。惑星魔術、“小隕石•(リトルメテオ•)弾丸(バレット)“」


 宝石が石を少し纏い、弾丸の如く飛んでくる。

 その一撃を剣で弾く。

 スピネルは舞から距離を置きながら撃ち続けた。


           *  *  *


 ランスロットと流石の戦いは拮抗していた。

 だが、ややランスロット優勢といった感じだ。

 一撃必殺を狙う隙がどこにもない。作るのもなかなか面倒だ。

 が、やはり流石は一撃で仕留める隙を作り出そうとしていた。


(どう隙を作るべきか。そんなに大きくなくてもいい。たった一撃、大きいのを入れられるやつを•••••やるしかないか)


「地属性魔術、”ウォール“!」


 自分を守る魔術を、流石は相手を囲むように発動した。


「この程度!」


 ランスロットは剣を大きく振るう。

 囲んでいたウォールが簡単に破壊された。


「”岩石砕き(がんせきくだき)“!」


 一瞬、ウォールを壊すための大振り。その隙を流石は決して見逃さなかった。

 ランスロットは避けようと体を傾けるが、その足は地面が盛り上がり、固められていた。

 剣を天高く振り上げ、相手の脳天目掛けて振りかざす。


「ッ魔力解放!湖の加護を、”アロンダイト“!!」


 凄まじい旋風。剣同士のぶつかり合い、フィールドに轟音が響き渡る。

 流石の渾身の一撃は、ランスロットの渾身の一撃により相殺されてしまった。

 流石は驚愕した。

 ”岩石砕き“は流石が出せる最大火力だ。それを相殺されたのは、少なからずショックだった。


「でも、あの一撃を防いだんた。あの剣は折れはしないにしろ、だいぶ欠けたはず•••••!」


 欠けたどころか、傷ひとつ、砂埃ひとつついていなかった。


「随分綺麗だな。流石に普通の剣じゃないな」

「この剣は”アロンダイト“。アーサー王物語の湖の騎士ランスロットが持つ剣。エクスカリバーにも匹敵する最強の剣です。ちなみにその効果は、魔力を解放した瞬間、自分のステータスを10倍にするという単純なもの」

「随分ペラペラ話したな。いいのか?手の内明かして」

「明かしても、そんなに大きな弱点にはなりませんから!」


 またしても2人の剣が打ち合いを始めた。


           *  *  *


 舞とスピネルは互いに満身創痍だった。

 舞の体にはバレットによる穴があり、そこから多くの血が流れている。

 スピネルは身体中に切り傷があり、宝石コーティングが間に合っていない。

 お互い魔力もかなり消費している。

 相手を自身の得意へと連れ込むため、スピネルは再度上空へ上がろうとする。


「させるわけないでしょう!」


 舞はさらに速度を高め、スピネルに斬りかかる。

 足への強烈な一撃に魔術が乱れ、地上へ落とされる。


(しまった!?)


 スピネルは何も無い空中をまさぐった。

 スピネルの手のあたりが歪む。

 空間魔術の“大倉庫(だいそうこ)”である。

 宝石が無い。余っているのは紅色の宝石がひとつだけ。魔力も、出来て隕石1、2発程度だ。


「しょうがないか。玉砕覚悟、一位は諦めざるを得ないわね」

「何を言ってるんですか?」

「アナタと一緒に、死のうと思ってね。いや、もしかしたら•••••やってみるか。試合の終わりとしては随分無理やりだけどね」


 スピネルは手に持つ一つの宝石に残りの魔力を全て流し込んだ。

 そして、空へ、高く高く投げた。

 隕石がくる。そう察した舞は、スピネル向けて走り出す。


「私を倒したって、あれは止まらないわよ。あと、満身創痍なのはアナタも同じ。隕石が落ちてくるまでぐらいは凌げるわ」

「くっ」


 言葉通り、舞の攻撃はスピネルに避けられてしまう。

 少し距離を取り、上空を見つめ、冷や汗をかく。

 フィールドには大きな影ができ、全員が戦慄した。

 これまで見せたことのない特大の隕石。フィールドのどこにも逃げ場はなかった。


「全員道連れよ!」


 舞は走った。早くスピネルを仕留めるために。こんなのが落ちたら順位どころじゃない。せめてスピネルを倒して3位以上を狙うことにシフトした。

 なぜかスピネルは微動だにしない。舞の剣がその体を貫いた。


「一回戦は2位、2回戦は4位。まあこれで、点数はフェアになるわね。Aクラスを除いて」


 スピネルはその場から消えた。が、隕石は消えることなく地上へ落ちてくる。

 回避は不能。防御も不能。魔力のなくなった舞はその場に座り込む。

 さっきまで死闘を繰り広げていた流石とランスロットも、敵を忘れ、空の脅威に目をやった。

 隕石が衝突する。巨大な爆発が巻き起こり、その中心にいた舞が真っ先に退場していった。


「”岩石砕き“!」

「“アロンダイト”!」


 流石とランスロットは、剣を大きく振るった。その一撃は、隕石の爆風をほんの少し相殺してみせた。

 数秒間耐えた後、先に限界が来たのは、流石。

 2人の撃ち合いで、流石の方が体力の消耗が多かった。そこが勝敗を分けたのだ。


『スピネル選手の最大級の置き土産!フィールドは隕石により、全員が脱落だ!!』


 ランスロットも、耐えはしたが、結局耐え切るには至らなかった。


『最終結果が出ました!第二回戦の順位は•••••』


 4位、Cクラス

 3位、Dクラス

 2位、Bクラス

 1位、Aクラス


『自滅を前提とした最後の一撃、そして、スピネル選手の最後の言葉。これを狙ってのことならば、やはりスピネル選手はかなりの魔術師ですね』


 魔術大祭、現在の各クラスの得点がモニターに表示される。


 Aクラス、6点

 Bクラス、2点

 Cクラス、2点

 Dクラス、2点


 Aクラスを除いたすべてのクラスが同点。スピネルはこれを見計らって、あの隕石を撃っていた。

 この最後の戦いは、スピネルの思惑通りに進み、幕を閉じるのだった。

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