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19話 魔術大祭⑥ フェアに行きましょう

 一年生による竜種の討伐。

 これは、魔術学校史上でも稀な結果だった。

 観客は熱狂する。


『一体誰が予想したでしょうか!不可能と思われていた竜種•低級レベル8の討伐、この戦いはこの場にいる全ての人の脳に深く刻まれることでしょう!』


 声からも興奮が伺える実況、声が大きすぎてキィーンと雑音が混ざる。


『さあ、試合はまだ続きます!』


 Aクラスより、ガウェイン。

 Bクラスより、金剛流石(こんごう るい)。

 Cクラスより、影縫美代(かげぬい みよ)、継続。

 Dクラスより、石火矢穂村(いしびや ほむら)。


 美代は、竜の影に隠れていた。

 竜がやられない限り、その影は消えることがない。

 Cクラスの作戦では竜がA、B、Dクラスを全て倒してもらう。そして、ダメージが蓄積した竜を楽して仕留める計画だった。

 だが、竜による犠牲は全クラス2人ずつ。未だ1クラスも脱落していない。

 Cクラスの作戦は失敗と言えよう。


「やっと影から出てきましたね、影縫さん。早速ですが、速攻であなたを倒させていただきます!」

「くっ!」


 ガウェインは影から出てきた美代へ向けてすぐに走り出す。

 一歩後退する。その先の足元には影。

 美代はすぐさま影へ逃げようとする。だが、ガウェイン相手には相性があまりに悪かった。

 時刻は9時30分を超えている。

 ガウェインの加護のバフは、一回戦に比べ、格段に上がっている。


「影に逃げることは許しません!」


 ガウェインの剣から大きな光が放たれる。

 美代の足元に広がっていた影は、光に照らされ消えてしまう。

 やむを得ず、近接戦をしかける。が、

 相手は圧倒的近接タイプ、不意の暗殺を得意とする美代では、勝てる術は無かった。


『ずっと竜の影に隠れていた美代選手、ガウェイン選手により退場!Cクラスより、最後の選手が投入です!』


 Cクラス最後の選手、スピネル•メテオライト。


「やっっっと、私の出番ってわけね!」


 出場したスピネルは、満面の笑みで体を伸ばしている。


「正直あの作戦最悪だったのよね。なんか他力本願っていうか、そもそも私の出番が無いとかあり得ないしね」


 スピネルは周りを眺め出す。

 Aクラスのガウェイン、

 Bクラスの金剛流石、

 Dクラスの石火矢穂村。


「今のままじゃアンフェアよね。やっぱり戦いはフェアに行きましょう」


 スピネルの手には紅く光る宝石が複数個握られていた。

 その全てを空中へ放り投げる。


「惑星魔術、“隕石衝突•紅玉(メテオ•ルビー)”」


 空中に舞う宝石が、岩を纏い、大きな岩石へと変貌する。

 それは業火を纏い、フィールドへと落下していく。さながら、隕石のように。

 隕石の真下には、ガウェインと穂村。


          *  *  *


 自分目掛けて落ちてくる隕石を前に、穂村は完全に怯え切っていた。

 頭の中が頭が真っ白になり、恐怖から逃げ出そうと、足が後ろへ下がる。

 そこで穂村の動きが止まる。

 石火矢穂村は自分が臆病である自覚がある。

 正直、Dクラスがこれまでやってきた戦いを目にして、自分ができることなんて無い。そう、意気消沈していた。

 自分はみんなとは違う。勇敢な、何かに立ち向かう勇気なんてないし、いつも後ろ向きだ。

 だが、憧れた。

 私はみんなみたいになりたい。

 竜にだって立ち向かえるだけの勇気が欲しい。


「火属性『変化(へんげ)』魔術、“猫又(ねこまた)”」


 穂村を炎の魔力が包む。

 頭には猫の耳、お尻には2本の尻尾が生えている。

 変化魔術、自分が想像するなにかに変身する魔術。

 穂村は、情けない自分を変えたい、周りと並んで前を向きたい、そういう気持ちからこの魔術を使うようになった。

 この魔術を使ってる間だけは、理想の自分でいられるから。勇気が、湧いてくるから。

 穂村は姿勢を低くし、スピネルを睨みつける。


「あら?隕石を見ずに私を睨んでくるなんて。いいわ、その感じ、気に入った!」

「フゥ———、フゥ———、」


 隕石が落ちてくる前に、穂村はスピネル目掛けて走り出す。

 尻尾をなびかせ、火の粉を飛ばしながら疾走する。


 少しでいい。少しでいいからみんなの役に———!


 穂村のスピードがさらに速くなる。

 相手は自分を舐めている。その隙をつけば、私だって•••••

 ザシュ———!!

 切り裂くような音がする。血が飛び散り、周りが少し赤くなる。


「その命知らずに特攻する感じ、嫌いじゃ無いわ。次は、もっと力をつけてからかかってきてね、子猫ちゃん」


 スピネルの宝石でコーティングされた手刀が、穂村の腹に突き刺さっていた。


「•••••ぐぅ、ふぅ、ア、アァァァァァアア!!」


 痛みを忘れようと精一杯雄叫びを上げる。

 最後の一撃、少しでいいんだ。たった一撃、爪痕を刻め!

 穂村の炎を纏った爪が、スピネルの顔面へ向かって飛んでいく。

 だが、それが刺さる事はなかった。


「最後の一撃、ちゃんと受け取ったわ。誇りなさい、まさか宝石のコーティングが破られて血を流すことになるなんてね」


 スピネルの手からは、血が垂れている。

 穂村はしっかりと爪痕を残していった。

 穂村が光と共に消滅した瞬間、フィールドには大爆発が一部分を除いて巻き起こる。


『フィールドにスピネル選手による隕石が衝突!ガウェイン選手が脱落!そして穂村選手、健闘虚しくスピネル選手によって敗北!』

『惑星魔術、メテオライト家が得意とする魔術ですね。宝石を媒介として、地上に宇宙を作り出す魔術』


 ガウェイン、穂村の二名の脱落により、次の選手が出場する。


 Aクラスより、ランスロットが。

 Dクラスより、稲神舞(いなかみ まい)が出場。


『これにより、全クラス最後の1人になりました!第二回戦、正真正銘のラストバトルだ!』


「これでようやくフェアになったわね。いいわ、全員私が、蹴散らしてあげる!」

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