15話 魔術大祭② クラス対抗決闘
『会場にお集まりの皆様、長らくお待たせいたしました。魔術大祭、第二回戦の時間がやってまいりました!』
実況の声が鳴り響く。
その声に呼応するように、観客席からは歓声が巻き起こる。
『二回戦開始に先立ちまして、今試合より新しく、解説役をお連れしました!教頭の、獅子王弦斎さんで〜す』
『解説役に任命されました、獅子王です。こんな堅苦しい名前ですが、どうぞよろしく』
獅子王弦斎。現獅子王家当主にして、特級の魔術師。
魔術師の位は4級、3級、準2級、2級、準1級、1級、特級、王級、魔女の9つに分けられる。
一般的に、一級は魔術師でも上位で、特級は総勢100人もいない。王級は50人以下という少数だ。
魔女は例外中の例外で、数千年続く魔術の歴史でも10人もいない。
『この戦いのポイントはどこでしょうか?』
『二回戦は、一回戦と違い、個人の力が問われます。1人でどれだけ敵を削れるか、いかに次に繋げられるかが重要になっていきます』
『なるほど〜。さあ、ここで出場者が揃ったそうです!ではまずは出場メンバーの発表です。まずはDクラス!』
1番手、鉄穴森守
2番手、岩崎陸
3番手、音鳴もみじ
4番手、石火矢穂村
5番手、稲神舞
『続いてCクラス!』
1番手、椎名御子
2番手、蜂莱恵
3番手、サヴィ•サーモラル
4番手、影縫美代
5番手、スピネル•メテオライト
『Bクラス!』
1番手、早三紫音
2番手、疾風疾風
3番手、金剛拳
4番手、水守天守
5番手、金剛流石
『最後にAクラス!』
1番手、パーシヴァル(仮)
2番手、ガレス(仮)
3番手、トリスタン(仮)
4番手、ガウェイン(仮)
5番手、ランスロット(仮)
『なぜAクラスだけ本名じゃないんです?』
『あ〜、私にもわかりませんね。なんか、王の命令だとか•••••』
『•••なるほど、廻のせいか。Aクラスの皆さん、うちの息子がすみま———』
「おい貴様!俺をそのような名で呼ぶでない!」
弦斎の言葉を遮ったのは、生徒席にいる獅子王だった。獅子王は席から勢いよく立ち上がると、実況席へ向かって槍を飛ばした。
その槍は席へぶつかる瞬間に、空中で弾かれた。
気がつけば弦斎は実況席の外にいた。
「そんなにこの名前が嫌いか?いいか、この名前にはな、人間の廻る歴史を•••••」
「黙れ!その名前、普通すぎるのだ!俺は王だ!王は特別、天上天下に唯一無二!それなのに、廻とか、全然特別感がないし、世界の王を見てみろ!アーサーとか、リチャード、ギルガメシュ、イスカンダル王、エジソン、日本の王的立ち位置なら織田信長や豊臣秀吉とか!」
「おいおい、信長と秀吉は王じゃないぞ。あとエジソンだって王じゃないぞ。それになぜアレキサンダー大王をアラビア語で呼ぶ?」
「立ち位置の話をしたのだ!あの時代で人を収めたのは信長だろう。エジソンは世界から夜の恐怖を消し去った、発明王と呼ばれるに相応しい。そしてアレキサンドロスよりもイスカンダルのほうがなんとなく好きだからだ!」
「んな適当な•••••。そんなだから家の魔術は———」
『あのー、親子喧嘩は後にしてもらっていいですか?そろそろ始めたいんですけど•••」
そこで弦斎は観客席を見る。
観客席はある意味で盛り上がっていた。
早く始めろという者、いいぞもっとやれと騒ぐ者。
「おっと、失礼。私としたことが、周りが見えていなかったね。•••時間も時間だ。そろそろ始めようか」
そして弦斎は実況席へ戻った。
それを見て、獅子王もフンと鼻を鳴らして席へ戻った。
『親子喧嘩もひと段落ついたとこで、始めたいと思いま〜す。選手の皆さん、準備はいいですか。それでは、第二試合、スタート!』
* * *
ついに始まったな、第二試合。
俺、守の作戦は至ってシンプルだ。基本は守備に徹して、隙あらば相手を削る。
「地属性魔術、“ウォール”」
周りの地面が盛り上がり、前方に自身を囲むように壁を作る。
地属性魔術ウォールは、主に地面を盛り上がらせて壁を作る魔術だ。だが、守はそこに独自のアレンジを加えている。
守は結界術を使って、ウォールに気配探知の結界を重ねている。その広さは半径2メートル、そして守の限界範囲半径6メートルを、2メートルに絞ることで、その効果は上がっている。
「守備は完璧、あとはやられない範囲で戦いつつ耐久を•••••?」
結界に反応があった。反射的にその位置に壁を作り、攻撃を防ぐ。
だが、それは攻撃と呼べるようなものではなく、そこにあったのは———。
「形代?」
「陰陽術、“神経依続”」
誰かがつぶやいた。
瞬間、Aクラス、Bクラスの選手が地面に突っ伏した。
『これはなんだ!?突然パーシヴァル選手と早三紫音選手が突っ伏した!これはなんでしょう?解説の弦斎さん』
『Cクラスの椎名選手の仕業でしょう。椎名家は代々神社を営む家系で、その家では魔術の派生、陰陽術が使われます』
陰陽術。形代や札を媒介とし、行使する魔術のこと。呪術とも呼ばれ、主にバフ、デバフを得意とする。
因みに実況と解説は選手には聞こえていません。
「さっきの依代、あれのせいか」
見てみると、椎名御子の手は地面に押し付けられていて、その下には依代があった。
『椎名選手の手の内、あの依代が2人の選手に着いた依代と連動しているのでしょう。開始早々椎名選手は2人、いや3人に向けて依代を貼ったと言うことになります』
『反射的に防いだ鉄穴森選手だけが術を免れたということですね』
依代は防いだ。俺は今自由に動くことができる。2人は動けず、1人は抑えるので動けない。
「あれ?超チャンスじゃね?」
今なら全員倒すことができる。そう思い、攻撃を仕掛けようとした瞬間、場は動いた。
「!?」
驚きに御子は顔をしかめた。Aクラスのパーシヴァルが、御子に抑えられた依代ごと立ちあがろうとしているのだ。
「ぐ、そうは、させない•••!」
負けんと抑える力を強める。すると今度は、パーシヴァルに力が偏ったことでBクラスの紫音が立ちあがろうとする。
もうどちらも抑えることはできない。悟った御子は、紫音を解放しようとした。
だが、そこで守は動いた。
『おっと、抑えきれなくなって紫音選手を解放しようとした御子選手、だが紫音選手を抑えつける見えない手の上から守選手の岩の手がさらに抑えつける!』
守は考えた。この呪術、対象にただ重力をかけるだけなのかと。
違う。この術の根幹は、手で抑えつけることにある。ならばあの2人の上には見えざる手があるのでは、そう考えたのだ。
パーシヴァルは自分が加勢しても最悪押し返される可能性があると考え、紫音に狙いを定め、見えざる手の上から岩で押し潰そうとした。
だが、それも一歩遅かった。
抑えつける刹那、パーシヴァルは御子の束縛を突破し、御子に向けて走り出していた。
回避を取ろうと、一瞬後ずさったことで、紫音も束縛から脱した。
「御覚悟!」
パーシヴァルは御子へ一直線に走り、手に持った槍をその体へと突き刺した。
だが、突き刺したはずの御子は瞬間その場から消えた。
『あれは陰陽術“代身形代。あらかじめ魔力を込めて置いた依代と自分の位置を入れ替える術ですね』
パーシヴァルの槍に刺さっていたのはただの依代。御子はいつのまにかついさっきパーシヴァルのいた位置にいた。
「素晴らしい術だ。ですが、そう何度も同じ手はくいませんよ!」
そう言って御子へ向けて走り出す。
御子は手に持つ依代、計6枚を四方へ散らした。
* * *
束縛から抜け出した紫音の矛先は、御子でなく、守へ向いていた。
その手には槍が握られ、電気を纏っていた。
「雷属性か。相性的には有利•••」
でもこの状況で無闇に戦うのはNO。
相手は槍使い、ならリーチの外へ!
「!?」
守へ走る紫音の足元が盛り上がる。
間一髪で後退する。さっきまでの足元には鋭く尖った石柱が伸びている。
紫音の足元にはどんどん石柱が伸びてきて、紫音は大きく距離を取らざるおえない。
「射程範囲外か。串刺しにできるのが1番だったんだが、雷属性相手には難しいかな」
今はとにかく近づけない。隙を見て倒せるのが理想だな。
そうやって紫音に意識を向けていると、気配探知の結界に反応があった。
咄嗟のガードが間に合ったが、それは爆発し、ウォールの守りを破壊した。
「な、なんだ!?今の爆発は•••••お札?」
そこには焼け落ちた札が数枚。飛んできた先を見ると、パーシヴァルの攻撃を避けつつ札を四方へ飛ばす御子がいた。
状況は御子が劣勢、パーシヴァルはまだ余裕があるように見える。
『パーシヴァル選手攻める攻める!御子選手は避けつつお札を投げるがどれもどれも当たらない!』
パーシヴァルは札の合間を縫って、高速で御子の元へ詰め寄る。
その鋭い槍の一撃を、代身形代で回避する。
「これで代身はあと一回、そろそろ終わりにしましょう」
「ッ!?」
入れ替わり先を即座に見極め、間を与えずに即効を仕掛ける。
札を投げるが、全て避けられ、その矛先が御子の喉元に突き刺さる。
やむを得ず、代身形代を発動する。
「読めています!」
次の代わり先を見抜いていたパーシヴァルの槍投げにより、移動した瞬間にその槍が突き刺さる。
『御子選手避けきれない!槍がその体を貫いた!第二試合、最初の脱落者はCクラス、椎名御子選手です』
御子が脱落し、Cクラスからは次の選手がフィールドに投入された。




