14話 魔術大祭1.5 反省会①
地属性魔術が入る隙はなく、ナイフは火影の首に突き刺さった。
『いつのまに!Cクラス、影狗 夜霧選手が後ろを取っていた!まさに暗殺!Dクラスなす術無しか!』
火影の首にはナイフが突き刺さっている。だが、火影は微動だにせず、その姿は揺らぎながら消えた。
「!?」
「侮りましたね、暗殺者!」
火影は夜霧の後ろにいた。
これは光祐との決闘中に見せた火属性魔術【陽炎】である。
火影は手に持つ杖に魔力を込める。その先からは火弾が鋭く放たれる。
暗殺を見切られた夜霧は避けることができず、その火弾は首に直撃した。
防御も間に合わず、その一撃は夜霧への致命傷となった。
「私の勝ちです。後ろを取られたのは驚きましたが、そこまでです」
「•••••まだ、あなたの魔術、連発は不可能」
「ッ!!」
そこで気づいた。後ろにもう一人、火影を狙う暗殺者は一人ではなかったのだ。
【陽炎】は連発不可能。避けることは出来ず、今度こそ本当に首にナイフが刺さった。
『なんてことだ!不意打ちを華麗に避けた火影選手、しかしその後ろにはもう一人いた!一人を犠牲にした完全な不意打ちに火影選手なす術無し!王の退場によりDクラス敗退です』
そしてDクラスはステージから姿を消した。
観戦席へ転送されたのとほぼ同タイミングで、別のアナウンスが鳴り響く。
『Dクラスの敗退に続き、Cクラス、騎士が二人抜けたことでAクラスに突破されてしまう!そのまま王の椎名御子選手退場!Cクラス退場により、一回戦、王取り合戦はAクラスの優勝です!」
試合終了のアナウンス、一回戦は3位か。まあ最下位じゃ無いだけマシだな。
* * *
「すいません。私が油断したばっかりに」
「いや、火影のせいじゃ無いよ。多分Cクラスは2位を取るために僕らを倒しに来たんだと思う。お前を倒すために全勢力を注ぎ込んだんだろう」
「そんなこと言ったら俺たちなんて何も出来なかったからな」
陸は守を見ながら自笑気味に話す。
その言葉に守は頷く。
「戦犯探ししたら俺たちが確定戦犯なんだしこの話は終わりにしようぜ。それより次の試合のための情報整理をしよう」
「———そうしましょう。ではまずは、一回戦の復習と行きましょう」
Aクラス
「Aクラスの元の情報はたしか、すごい連携から国のよう、だよな」
「はい。そして今回の戦いからそう言われる理由がわかりました。———、その連携の本はやはり獅子王なのでしょう」
「あのやりとりは流石に演技じゃ無いよな。獅子王は指示を出して、他の3人はそれに従う。しかも俺が戦ったガウェインとかいう奴、あいつは獅子王から力をもらったって言ってた」
「力をもらったってどういうことだ?力ってのは光祐が戦ってた時のあれだよな。太陽の加護、とかいう」
「うん。それと多分、あいつが持ってた剣もそうだと思う」
「聖剣ガラティンですか。アーサー王が持つ聖剣エクスカリバーの姉妹剣だと言われていますが、その詳細は不明とされています」
「詳しいですね、不知火さん。アーサー王物語好きなの?随分詳しいけど」
質問したのはクラスの名簿2番、稲神舞だ。2回戦の出場者の一人で、雷属性を得意とする。僕と同じ質問してるな。
「程々です。そして、あれから少し調べると、他の2人も円卓の騎士と同じ名前だったそうです。Bクラス、刃さんに倒されたのはトリスタン、Cクラスを倒したのはランスロットだそうです」
「ああ、それな。名前は王の趣味らしい。自分がアーサーなら配下は円卓って。あと獅子王の魔術についても多少ヒントは得たぞ」
あの時の会話の一部始終を話した。獅子王の魔術、アーサー王のような趣味が反映されているとか。
「趣味が反映ですか。なるほど、その趣味を他者にも共有できるのなら、その可能性は高いでしょう」
「まって。あの獅子王って人、風切刃に対して槍を飛ばしてたよね。あんなのアーサー王物語にあるの?」
「ありませんね。———確かに、そう考えると彼の魔術はもっと別のものなんでしょう」
Bクラス
「Bクラスはやはり風切刃でしょう。警戒すべきはあの速さですね」
「ああ。たった数秒で500メートルを走りきったのもそうだが、トリスタンだっけ。あいつをすれ違い様に切った時のものすごい抜刀速度」
「はい。遠くから見ていたのもあるでしょうが、全く見えませんでした」
「観客席からはどうだった?」
舞が手を上げた。
「私は雷魔術で動体視力を強化していましたが、見えたのはせいぜいその軌道だけ。完全な視認はできませんでした」
「わ、私も、やってたけど、見えたのは多分残像だったと思う」
Dクラスのもう1人の雷属性魔術師の音鳴もみじ。彼女は控えめに手を上げながら話した。
雷属性の魔術には動体視力、反射神経などを強化する魔術がある。1年の未熟なものとはいえ、動きが全く捉えられないなんて。一体どれだけ速いんだよ。
「見えても残像だけ、ですか。彼は確実にこの戦いで最も危険な相手でしょう」
「ああ。次の戦い、彼が出てくるのなら勝利はかなり難しいでしょう」
Cクラス
「Cクラスはやはりあの暗殺者、影狗夜霧でしょう。彼女の気配はまるで無かった」
「うん。俺たちも視認するまで全く気づかなかった。魔術も間に合わなかったし」
「それ以外の情報は、まあ対して無いな」
確かに。Cクラスはこの戦いで暗殺を除いて特に大きく目立ってはいなかった。逆にいえば暗殺がとても目立っていたが。
「そうだ。一つ気になったことがあるんです」
「ん?」
「暗殺で、背後の2人目が出てくる時、影狗さんが言っていたんです」
——— まだ、あなたの魔術、連発は不可能。
「私はこのクラス以外であの魔術を使っていません。不知火家の魔術が知られているのはあるかもですが、一度しか使えないというのはあの時の決闘を見ていた人しか知りません」
「つまり、あの決闘が見られていたと?」
「はい。使い魔か、本人が隠れていたか、考えたくはないですがスパイがいるか。とにかくあの決闘、最悪修行全てが見られていたとことになります」
こちらの手札がバレている、となるとCクラスも警戒度が高くなるな。暗殺以外の隠し球がある可能性もあるしな。
* * *
「これらのことをふまえて、次のクラス対抗決闘についてですが」
「A、Bクラスは要警戒。Cクラスは他クラスほどじゃ無いが警戒する、でいいか」
「最初はなるべく様子見を。人数は温存しながら相手チームの様子を伺うという戦法でいきましょうか。では出場メンバーですが•••」
出場する回数は1人3回まで。火影は戦力を三戦目に回したいとの事で、Dクラスのトップ3である火影、舞、光祐の3人は第三戦、四戦までに取っておきたいと話した。
「と、この事を踏まえて、今回出場するメンバーを決めますが、出たい人はいますか?」
はい、と威勢よく手を挙げたのは舞だった。
「私はこの戦いで4か5番手を希望します。戦力の面では自信がありますし、ここで出ても残り2種目にも出れます」
「いいでしょう。では舞さんは5番手についてもらいます。では次に———」
「1番手は俺にやらせてくれ」
火影を遮り声を上げたのは守だった。
「最初は様子見なんだろ?じゃあ出させてくれ。防戦には自信あるし、時間稼ぎならお手のものだ」
「いいでしょう。確かに様子見において最初は守りに徹するべきとは思ってました。ええ、あなたならできるでしょう」
「なら俺も出させてくれ」
そう言ったのは陸。陸も地属性なので、防御はクラスでもトップクラスだ。
「1回戦の汚名返上させてくれ。そうだな、俺は2番手だ」
「1、2番手どちらも防御タイプですか。•••いいでしょう。ではその2人が時間を稼ぎ、そのうちに相手を見極め、勝利の活路を見出す」
「よし、それで行こう。今回は僕と火影は出ないから、残りの2人だけど———」
「「私たちはパス〜」」
上水流 青海と上水流 青子の2人は声をそろえて言った。
「私たちは2人で1人だからね〜」
「1人ずつで戦うなんてごめんだね〜」
「そうですか。ではあなたたちには次に出てもらいましょう。2回戦ではあと2人出ますが、残りの天沢さん、石火矢さん、音鳴さんですが」
「私が3番手で出ます」
音鳴もみじはすっと控えめに手を挙げる。
「私はあんまり戦闘は得意じゃ無いけど、がんばるので!」
「•••わかりました。3番手、お願いしますね。音鳴さん」
すると続いてもう1人、石火矢穂村が手を上げた。
「4番手は私に、やらせてください。気弱であんまり強くないけど、なにか、役に立ちたいので•••••」
「わかりました。では4番手はあなたに」
穂村はパッと顔を上げ、頑張るぞと意気込んだ。
かくして第二回戦の出場メンバーが決まった。
1番手、鉄穴森守
2番手、岩崎陸
3番手、音鳴もみじ
4番手、石火矢穂村
5番手、稲神舞
「時間もいい頃合いです。そろそろ向かいましょうか」
時間は午前6時50分。2回戦開始は7時だ。
ここでアナウンスが結界内にアナウンスが響く。
『さあ、まもなく2回戦も始まります!観客は間に合うように観戦の準備を、そして選手の皆さんは早速スタジアムへ集まってください!』
アナウンスが終わると、僕らDクラスは顔を合わせる。
「まもなく2回戦が始まります。みなさん、目標は勝利です。1回戦の遅れを取り返しますよ。さあ、行きましょう!」
そして僕らはスタジアムへの移動を開始する。
* * *
現在の時刻は午前7時。選手はスタジアムに集まり、観客は試合開始を今か今かと待っている。
緊張で静まり返るスタジアムに、実況の声が鳴り響く。
『みなさん集まりましたね!準備はいいですか?それでは、魔術大祭第2回戦、クラス対抗決闘、スタート!』
そして試合は幕を開けるのだった。




