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ついにマラソン大会。この日を待っていた。龍崎の宣戦布告から練習量を2倍に増やし、そのおかげで体重が2キロ落ちた。もともと瘦せ型だったがそんなに落とせる贅肉があるとは…思わず感心。何はともあれ今の私に敵はいない!


後で知ったのだが、マラソン大会は1クラスを前半後半の二つのグループに分けて行われる。このグループ分けは先生達が適当に決めるらしい。つまり、龍崎と同じグループの確率2分の1。前日に発表されたが私は後半組だった。発表は朝のショートホームルームだったのに2時間目が始まる前には龍崎と藤堂は前半だと全クラスに知れ渡っていた。ファンの情報網スゲー。


「本当に幸運ですわね、小百合様。羨ましいわ。私も龍崎様と藤堂様の走るところ見たかったわ。」


ワカメちゃんは前半組らしい。


「私も小百合様と一緒ですわ。楽しみですわね。きっとすごくカッコいいんでしょうね。」


最近仲がいい、ワカメちゃんの親友(たぶん)兼私の取り巻きちゃん2号(1号はワカメちゃん)上条詩織さんは後半組だ。




体操着に着替え、髪を結ぶ。普段は垂らしている腰まである髪は頭の高い位置でポニーテールにしても背中の真ん中間でまである。ホント、この髪邪魔。切りたい。(たぶん女の子らしいのが好きなお母様が切らせてはくれないだろう。)コースはグラウンドを出発後、校舎を半分くらい周り、グラウンドでゴール。距離は2キロ。小1にしては少し、いやかなり厳しいものだ。


グラウンドに集合し、前半組がスタートに着く。後半組は10分遅れでスタートする。



オン ユア マーク バン



ピストルの音で前半組はスタート。もちろんトップは龍崎と藤堂。なんだけど…あいつ、私を舐めてるのか?すごい余裕そうに流して走っている。遅いわけではないがやる気が全く感じられない。それに、トップであるのは櫻凛会で学年で1番強い力があり、異様なほどに女子から人気なこの2人を抜くのが怖い臆病な男子共が絶対に2メートル後ろから前に出ていないからだ。抜かないのが暗黙のルールみたいだ。おい、お前ら後ろ詰まってのの気づけよ!あれか、私を油断させるっていう作戦か?バカめ、最後に泣くのは龍崎、お前だ!



後半組もスタートした。私は最初から飛ばす。これは前半の最後尾にすぐ追いつくかもなぁ。グラウンドを出て校舎の周りへ。校舎の周りはランニング用のコースとなっていて、コンクリートではなく土の道である。道脇には木が生えていて、秋になり葉の色が赤や黄に色づきとても綺麗だ。今の所私はダントツ一位もちろん、みんなが私に遠慮してとかではない。曲がり角で後ろを振り向けば、人影は見えない。この道で合ってるよね…?不安になる。


あっ、前半の最後尾。よし、このままいけばきっと勝てる。少し息が、上がってきたが“まだまだいける”と自己暗示をかける。


えッ!道脇にワカメちゃんがしゃがんでいる。転んだのだろうか、膝から血が出ている。


「ワカナさん?」


「…さ…ゆり…さま?」


声は小さく、顔色は真っ青。これはやばいな…たぶん、いや絶対ワカメちゃんを助けたら龍崎の犬決定。でも、具合が悪い女の子をこんなとこに放置はできない。私はそうな薄情な人間ではない!先生がいるのはここから約300メートルくらい離れた曲がり角。そこまで運ぶか、ここからコースを外れて保健室へ運ぶか。先生のところのほうが近いかな?


「ワカナさん、私の背中に乗って。大丈夫よ。先生のところへ行きましょう。」


「…私に…構わないで…小百合…様。せっかく…1位なのに…」


「マラソン大会は来年もあるもの。さぁ、早く。」


「ありがとう…ございます」


ここで体を鍛えたことが役立つとは!てかさ、これってよく漫画である男の子のポジションだよね…さすがに同じ背丈の子を女の私がお姫様抱っこできないので、おんぶなのだが。


ハァ…ハァ…


耳元ではワカメちゃんの苦しそうな息遣いが聞こえる。出来るだけ早く揺れないように歩く。最後尾に追いついた。後、もう少しで曲がり角。やはり、2キロは辛いのかリタイア組はもはやウオーキングになっている。


「大丈夫よ。もうすぐだからね。」


聞こえているかわからないが声をかける。朝は具合悪そうじゃなかったのに。曲がり角を曲がる。


「先生…」


どういうことですか?職務放棄ですか!なんでいないのよ。ここは裏門の前。裏門から校舎に入れる。保健室に連れて行ったほうがよさそうだ。もう、マラソン大会は諦めよう。


「保健室行くわよ。もう少しだから。」


「…うぅ…」


意識はあるみたい。保健室には生徒で溢れていた。なるほど…お嬢様と、お坊ちゃんは運動不足でダウンなのね。とりあえず、ワカメちゃんを先生に預け裏門からコースへ戻る。絶対負けたけど最後まで走らなきゃ。


ゴールしたのは最後から10番目。


「おい。俺の勝ちだな。」


うゎー、1番会いたくない奴すぐきた。


「ごきげんよう。龍崎様。」


「お前、今日から俺の犬な。」


ハプニングがあったとはいえ負けは負け。潔く受け入れるしかない。覚悟してたじゃない。


「ええ、お約束ですからしょうがありませんわね。それで、いつまでですの。」


「ハ?」


龍崎は何言ってんの?って顔している。ちょっと待てよ…お前、まさかこの先ずっととか思ってたわけ!ありえない。願い下げよ。


「ですから、あなたの我儘にいつまでお付き合いしなければいけないのですか?」


「…考えておく。」


えええええー


私、西園寺小百合は任期未定で龍崎の犬(パシリ、下僕)に就任しました…



…どうなっちゃうのよ、私。

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