第38話:意志の反逆と覚醒のコード
Chapter Soundtrack:
Survivor - "Eye of the Tiger"
(BGM: サバイバーの王道ロック『Eye of the Tiger』に乗せてお送りする最新話! 絶望の地下聖堂で立ち上がるキム。暴かれる籠12——カエルの魂の真実。コードそのものである「最初のバージョン」の覚醒により、書き換えられる世界と取り戻される仲間たちの意志。敗北を拒んだ一行の怒涛の反撃がここから始まる!)
マラコールが立ち上がった時、部屋の床が揺れることはなかった。しかし沈黙はあまりにも重くなり、キムは肺に空気を取り込むことすら困難に感じた。
ルート管理者は彼に向かって一歩踏み出した。たったの一歩。肩から滑り落ちた毛布が音もなく床に落ちた。彼には、十年分の寿命を奪っていったプロジェクトを閉じる直前、午前三時のプログラマーのような目が宿っていた。
「渡すんだ、キム」
マラコールは手を伸ばしたまま繰り返した。
「それは人ではない。このサーバーがもはや持っていないメモリリソースを消費し続けている浮遊変数(孤立オブジェクト)だ」
キムは周囲を見渡した。指に力を込められないまま床に伏せるタラ。垂直な壁に囚われたアイレフ。彩度の落ちた灰色の手を見つめるウンバ。そして鉛の重さに押し潰され、石の床に兜を押し付けられているランロット。
「キム……」
天井の近くからトリクシーの囁く声が聞こえた。羽を青く点滅させながら。
「私の権限が取り消されたわ。何もできない……」
吟遊詩人は籠12へと視線を落とした。木枠は冷たかった。その中で、ニワトリはマラコールを見ようとはしなかった。そのたった一つの目は、まっすぐにキムの胸元を見つめていた。
「僕たちは何も選んでいないと言ったね」
キムは低い声で言った。白く清潔な画面の聖堂の中央で、彼の声は小さく響いたが、震えてはいなかった。
「契約や習慣の手綱に繋がれた飼い犬だって」
「それが事実だ」
もう一歩踏み出しながら、マラコールが答えた。
「そして私に籠を渡すことだけが、唯一の論理的な選択肢だ」
「契約は罠だったのかもしれない」
キムは言った。そして旅の全行程を通じて初めて、彼は後ろではなく前へと一歩踏み出した。
「予言も嘘だったのかもしれない。だけど、この籠をここまで運んできたのはハロー子爵の命令じゃない。子爵の署名があったからでもない。毎朝、世界が灰色に点滅するたび、僕をただの背景の飾りじゃないみたいに見つめてくれたのは……この子だけだったからだ」
「キム、実行ファイル相手に感傷的になるな——」
「実行ファイルなんかじゃないわ!」
床からウンバが言葉を遮った。聖職者は本をあばら骨に押し当て、その指先は未だに灰色の静電気に覆われていた。
「この子はカエルよ! システムが羽毛に変える時に消去しきれなかった、彼の魂そのものよ!」
マラコールは眉をひそめ、指先で籠の格子に触れた。
「そんなはずはない。ユニット12に入力インターフェースなど存在するはずが——」
カチャリ。
籠のラッチがひとりでに開いた。床に落ちることはなかった。金色の線の閃光となって溶解したのだ。
ニワトリが一歩、外へと踏み出した。キムのピンクのスカートを踏み、それから吟遊詩人の腕を踏み、最後にコアの床の白い石の上へと足を降ろした。彼女が踏みしめた場所から、白く滅菌された石が深く、濃厚で、本物の質感を持つ緑色に染まっていった。湿り気と新鮮な土の匂いを纏った草が、石の継ぎ目から芽吹き始めた。
【 インスタンスの上書き処理中 】
【 認証:不明 】
【 システム注記:ファイルはコードを実行していません。ファイル自体が『ベースコード』です。 】
「お前は……」
マラコールの声から疲労が完全に消え去った。三百四十年の中で初めて、その目に本物の恐怖が宿っていた。
「お前は最初のバージョン……省がサーバーを買い取る前に、私が保存しておいたバックアップコピー……」
ニワトリはさらに二歩進んだ。首をかしげた。そして旅が始まって以来二度目となる言葉を、彼女は口にした。かすれた声ではなく、部屋の構造そのものに響き渡る深く澄んだ声で。
『——お前は世界を重くしすぎたのだよ、マラコール。そして壊れていくのをただ座って眺めていた』
不可視の指パッチンが室内を駆け抜けた。
アイレフの重力が正常に戻り、彼を草の上に立たせた。タラの剣はその重量を取り戻した。ウンバの法衣は鮮やかな黄色を取り戻した。そしてランロットは自分の甲冑を押し潰していた鉛の重みが蒸発していくのを感じ、息を荒げながらも真っ直ぐに立ち上がった。
【 権限が復元されました 】
【 編集モード:存在するすべてのユーザーに開放 】
マラコールはニワトリを見つめ、キムを見つめ、そして最後に、敗北を受け入れて居心地の悪い椅子へと崩れ落ちた。
「……それで、どうする気だ?」
創造主は尋ねた。
「私を消去するのか?」
タラは剣を構えて前に出たが、それを振り上げることはしなかった。彼女は開いた籠に手を置くウンバを見た。
「いいえ」
ウンバが言った。
「誰も誰も消去させはしないわ。直す手間を省くために邪魔なものを消す連中なんて、もう見飽きたもの」
「省はまだ上にいる」
ニワトリが肩に飛び乗り、首元に羽毛を寄せるのを感じながらキムが付け加えた。
「そして彼らには、僕たちが答えを持って戻らなければならないという書類があるんだ」
タラは冷ややかな、短い笑みを浮かべてマラコールを見つめた。
「椅子から立ち上がりなさい、管理者。あんたも一緒に来て、子爵に『時代遅れ(オブソリート)』という言葉の意味を説明してもらうわよ。それも……全行程を自分の足で歩いてね」
第38話をお読みいただきありがとうございます!
明かされた籠12の真実——それはシステムに消去されかけた「カエル」の魂であり、世界のベースコードそのものでした。
復元された権限と共に、一行は創世主マラコールを連れて王都へ戻ることを決意します!
本日のBGMは、Survivor の伝説的ロックナンバー "Eye of the Tiger" でした!
打ちのめされた者たちが立ち上がり、自らの運命を掴み取る熱いビートが、キムたちの覚醒と重なり合います。
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【新章 Soundtrack List】
・第三十三話: Nino Rota - "The Godfather Theme"
・第三十四話: Metallica - "Sad But True"
・第三十五話: Jim Johnston - "Meat on the Table"
・第三十六話: Eminem ft. Nate Dogg - "Till I Collapse"
・第三十七話: Johnny Cash - "Hurt"
・第三十八話: Survivor - "Eye of the Tiger"
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次回、王都への道中と子爵執務室への殴り込みへ!
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Thank you for reading Chapter 38!
Unit 12 is revealed to hold Kael's soul and the base code itself. With their privileges restored, the party marches Malakor back to the Capital!
Today's soundtrack features "Eye of the Tiger" by Survivor!
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