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第36話:意志の覚醒と逆転の誓い

Chapter Soundtrack:

Eminem ft. Nate Dogg - "Till I Collapse"

(BGM: エミネムの不屈の魂を宿した名曲に乗せてお送りする第36話! 圧倒的な覚醒!! 「ただのニワトリ」と思われていた籠12の正体は、システムが構築される前の『オリジナルバックアップ』だった。書き換えられる世界、取り戻される意志、そして一行が下す前代未聞の決断とは――!? 新たな反撃がここから始まる!)


マラコールが立ち上がった時、部屋の床が揺れることはなかった。しかし沈黙はあまりにも重くなり、キムは肺に空気を取り込むことすら困難に感じた。

ルート管理者は彼に向かって一歩踏み出した。たったの一歩。肩から滑り落ちた毛布が音もなく床に落ち、肘のすり減ったごく ordinary な布地の法衣が露わになった。彼にオーラはなかった。浮遊する影もなかった。ただ、十年分の寿命を奪っていったプロジェクトを閉じる直前、午前三時のプログラマーのような目をしていた。

「渡すんだ、キム」

マラコールは手を伸ばしたまま繰り返した。その声は平坦で、悪意もなく、ただオフィスの電気を消して寝たいだけの人間の声だった。

「それは人ではない。女神でもない。このサーバーがもはや持っていないメモリリソースを消費し続けている浮遊変数(孤立オブジェクト)だ。ここに留まれば、数週間のうちに不具合がマップの残りを食い尽くすことになる」

キムは周囲を見渡した。

タラは床に伏せたまま、持ち上げられない剣を白くなった拳で握りしめていた。樹脂に捕まった昆虫のように垂直な壁に張り付いたアイレフは、一言も発せないまま目を丸くしてキムを見つめていた。ウンバは自分の灰色の、彩度の落ちた手を見つめ、指先で静電気の火花が一つ、また一つと消えていくのを眺めていた。そしてランロットは……鉛の重さに潰され、石の床から顔を上げることすらできずにいた。

「キム……」

上空からトリクシーの囁く声が聞こえた。妖精は天井のすぐ近くで羽を青く点滅させながら浮いていた。キムが一度も聞いたことのないような消え入りそうな声だった。

「ダメ……ノートにアクセスできないの。私の権限が取り消されたわ……」

パーティー全員が無力化されていた。武装解除され、編集されていた。

吟遊詩人は籠12へと視線を落とした。木枠は冷たかった。数週間の旅の間に自分の腕で擦れて減った格子。その中で、ニワトリは動こうとしなかった。マラコールを見ることもなく、伸ばされた青白い手を見ることもなかった。

そのたった一つの目は、まっすぐにキムの胸元を見つめていた。

「……北の街道で、この子が僕の腕を救ってくれたんだ」

白く清潔な画面の聖堂の中央で、キムの声は小さく、頼りなく響いた。

「地面が存在しなくなった時……この子が『動くな』と言ったんだ」

「音声例外テーブルのバグだよ」

もう一歩踏み出しながら、マラコールが答えた。彼の距離はもう一メートルを切っていた。

「物理エンジンがお前の位置ベクトルを消去するのを防ぐために、音声チャネルの残存文字列を使用した破損実行ファイルだ。英雄的行為などではない、キム。ただの自動パッチだ」

「システムがそれをどう呼ぼうと、僕には関係ない」

キムは言った。そして旅の全行程を通じて初めて、彼は一歩も引き下が disposable なかった。

マラコールは溜め息をつき、一瞬だけ目を閉じた。

「お前の所有パラメータを変更させないでおくれ、キム。お互いに胸糞悪いことになりたくはないだろう」

管理者が籠の木枠に触れようと指を伸ばした。

その時、ニワトリが動いた。

絶望的な羽ばたきではなかった。パニックの鳴き声でもなかった。それは緩やかで、どこか優雅ですらある動きだった。鳥は籠の乾燥した藁の上に立ち上がり、首を伸ばして木製の扉にクチバシを当てた。

【 致命的なエラー:コマンドコンソールへの不正アクセス 】

【 発生源:ユニット_12 】

【 警告:ユニットには読み取り/書き込み権限がありません 】

室内の浮遊画面が鮮やかで攻撃的な赤色に点滅し始め、清潔で白い光を猛スピードで流れる解読不能なテキストの滝で覆い尽くしていった。

「なっ……!?」

マラコールは眉をひそめ、本能的に一歩後退した。

「そんなはずはない。ユニット12に入力インターフェースなど存在するはずが……」

カチャリ。

籠12のラッチが、ひとりでに開いた。

床に落ちることはなかった。金色の線の閃光となって溶解したのだ。木製の扉が観音開きに大きく開いた。

ニワトリが一歩、外へと踏み出した。キムのピンクのスカートの汚れた布地を踏み、それから折り曲げられた吟遊詩人の腕を踏み、最後にコアの床の白い石の上へと降り立った。

足が地面に触れた時、魔法のような現象は起きなかった。炎の翼が生えることもなく、ドラゴンに変身することもなかった。羽毛を少し乱した、片目の見えない小さなニワトリのままだった。しかし彼女の足が踏みしめた場所から、白く滅菌された床が深く、濃厚で、完璧な彩度と質感を持つ緑色に染まっていった。本物の、湿り気と新鮮な土の匂いを纏った草が、石の継ぎ目から芽吹き始めたのだ。

【 インスタンスの上書き処理中 】

【 認証:不明 】

【 システム注記:ファイルはコードを実行していません。ファイル自体が『ベースコード』です。 】

「お前は……」

マラコールの声から疲労が完全に消え去った。三百四十年の中で初めて、その目に本物の恐怖の欠片が宿っていた。

「コンパイラのバグなどではない……」

ニワトリはルート管理者に向かって、さらに二歩歩み寄った。

「お前は……最初のバージョンか」

マラコールは自分の背中がオフィスチェアにぶつかるまで後退しながら、深く呟いた。

「職業が実装される前の。ステータスが実装される前の。……省が誕生する前のバージョン。私がサーバーを売却する前に保存しておいた、バックアップコピー……」

鳥は彼の半メートル手前で足を止めた。首をかしげた。見えている方の目が、青い画面も、小文字の警告も、浮遊する数値も介さない、澄み切った輝きを放っていた。

そして旅が始まって以来二度目となる言葉を、彼女は口にした。

今度はかすれた一言ではなかった。空気からでもスピーカーからでもなく、部屋の構造そのものから直接響き渡る深く澄んだ声が、まるで風に舞う落ち葉のようにテキストウィンドウを吹き飛ばしていった。

『——お前は世界を重くしすぎたのだよ、マラコール。そして壊れていくのをただ座って眺めていた』

不可視の指パッチンが室内を駆け抜けた。

一瞬にしてアイレフの重力が正常に戻り、彼を草に覆われた床の上に着地させた。タラの剣はその重量と手応えを取り戻し、女戦士の指に確かな握り心地を返した。ウンバの法衣は鮮やかな黄色を取り戻し、脇に抱えた書物は再び磨かれた金色の文字でタイトルを浮かび上がらせた。

そしてランロットは……自身の甲冑を押し潰していた鉛のような重みが蒸発していくのを感じた。彼は息を荒げながらゆっくりと立ち上がり、傷一つない自分の籠手と、もはやオフィスの光ではなく鮮やかな夕焼けの光の下で再び輝き始めた兜の染め羽を見つめた。

【 権限が復元されました 】

【 編集モード:存在するすべてのユーザーに開放 】

マラコールは微かに震える自分の両手を見つめた。一行を見つめ、ニワトリを見つめ、そして最後に、空の籠を胸に抱いたまま立ち尽くしているキムを見つめた。

「……それで、どうする気だ?」

剣によってではなく、自身の作品が自分を見つめ返してくることによって敗北した創造主は、居心地の悪い椅子に再び腰を下ろしながら尋ねた。

「私を消去するのか? 最終コマンドを実行するつもりか?」

タラは剣を構えて一歩前に出たが、それを振り上げることはしなかった。彼女はキムを見た。ウンバを見た。そして、現実の崩壊など大した問題ではないと言わんばかりに、上階の石段から疲れ切った足取りで下りてきて、上から持ってきた藁の切れ端を食んでいるロバのロサリンドを見た。

キムはニワトリの方へと歩み寄った。しゃがみ込み、開いた籠を床に置き、鳥の目を見つめた。

「省はまだ上にいる」

キムは低い声で言った。

「彼らには書類がある。実行者がいる。そして僕たちが答えを持って戻らなければならないという、子爵が署名した契約書がある」

ニワトリは彼を見つめた。籠に入ることはなかったが、離れていくこともなかった。

「命じられるまま動くだけの集団には、何も変えることはできません」

ウンバが一歩前に踏み出し、本をバチンと力強く閉じた。それはもはやテスト用のスクリプトの音ではなく、本物の信念の音だった。

「ですが、誰が台本を書いたかを正確に知っている集団なら……自分たちの脚注を書き始めることができますわ」

タラは冷ややかな笑みを浮かべてマラコールを見つめた。キムが二十二日間の旅の中で初めて見る、彼女の本当の笑顔だった。

「椅子から立ち上がりなさい、管理者」

女戦士は剣の先で階段を指し示した。

「王都までは戻りの道のりが十一日あるわ。そしてあんたには一緒に来てもらって、ハロー子爵に『時代遅れ(オブソリート)』という言葉の正確な意味を説明してもらうわよ」

マラコールは手に持った冷めたカップを見つめ、消えかけていく赤い画面と、自分の足元に生い茂る本物の草を見つめた。それから、背中に解除されたクロスボウをしっかりと背負い、一瞬も瞬きせずに自分を見つめ返してくるランロットを見た。

「……着替えの旅装がないのだが」

マラコールが呟いた。

「ロバから予備の毛布を借りればいいさ」

満足げな音を立ててナイフを sheath に納めながら、アイレフが答えた。

キムは空の籠を拾い上げた。ニワトリは軽く跳ね起きると、格子の内側ではなく、吟遊詩人の肩の上にちょこんと飛び乗り、その羽毛を彼の首元に寄り添わせた。

第36話をお読みいただきありがとうございます!


明かされた籠12の真実! 彼女は世界が書き換えられる前の「オリジナルバックアップ」そのものでした。

復元された仲間たちの権限、そしてキムたちの選択は、創世主マラコールを連れて王都へ戻り、ハロー子爵と省に引き渡しに行くこと!


「ただの駒」であることをやめた一行の、本当の反撃がここから始まります!!


本日のBGMは、Eminem ft. Nate Dogg の名曲 "Till I Collapse" でした!

不屈の意志で立ち上がり、限界を超えて突き進む熱い魂のサウンドが、キムたちの決意と完璧にシンクロします。


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【新章 Soundtrack List】

・第三十三話: Nino Rota - "The Godfather Theme"

・第三十四話: Metallica - "Sad But True"

・第三十五話: Jim Johnston - "Meat on the Table"

・第三十六話: Eminem ft. Nate Dogg - "Till I Collapse"

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王都への11日間の帰路、そして待ち受ける省との決戦! 新たなおもしろさが加速する次章をお楽しみに!

面白かったら、ぜひ【ブックマーク登録】と【評価(★★★★★)】で応援をお願いします!


Thank you for reading Chapter 36!

Unit 12 reveals herself as the original system backup, restoring everyone's abilities. The party decides not to kill Malakor, but to march him back to the Capital to face Viscount Harrow!


Today's soundtrack features "Till I Collapse" by Eminem ft. Nate Dogg!


If you enjoyed the chapter, please consider **Bookmarking** and giving it a **5-Star Rating (★★★★★)**! See you in the next chapter!


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