第35話:権限剥奪とエラーの修正
Chapter Soundtrack:
Jim Johnston / WWE - "Meat on the Table" (Ryback Theme)
(BGM: 圧倒的で絶望的な重低音に乗せてお送りする第35話! 襲いかかるキムたちを待っていたのは、戦闘ですらない「権限の剥奪(ルート編集)」だった。剣も、魔法も、誓いすらもシステムの一筆で無力化されていく。絶望の最中、管理者マラコールの手が籠12へと伸びる——!)
引き金が落ちた音は、発射音には聞こえなかった。
それは乾いた、金属質の、完璧に正常な「クリック音」だった。機構が設計通りに正確に作動した時に発せられる類の音。鉄のボルト矢は一筋の直線を描いて放たれ、完璧な軌道でマラコールの胸元を目指して部屋の白い空気を切り裂いた。
マラコールは瞬きひとつしなかった。カップを放すことすらもしなかった。
彼の衣のわずか三センチ手前で、ボルト矢はただ……停止した。跳ね返ることもなく、魔法の盾に激突することも、古代の光の火花を散らすこともなかった。それは速度を失い、質量を失い、形を失って空中に浮遊し、やがて小さな文字が刻まれた未処理の灰色のピクセルブロックへと変わった。
【 オブジェクト:クロスボウのボルト矢_01 】
【 状態:非推奨 / ルートエリアにて無効化 】
「いい試みだ」
マラコールは疲れ切った怒りの火花のようなものを初めて目に宿し、顔を上げた。
「だが、道具が使われるタイミングを決めるのではない。道具は、私が使うと言った時に使われるのだ」
彼が指を鳴らした。たったの一度だけ。
その効果は爆発などではなかった。リアルタイムで行われた「権限の消去」だった。
ランロットのクロスボウは壊れたのではなく、一瞬にして解体され、青い線の浮遊設計図となって床へと溶けて消えた。騎士の甲冑——凹んだ装甲、胸当て、兜の染め羽——は一瞬にしてその物理演算を失った。まるで純鉛でできているかのように重くなった甲冑に押し潰され、ランロットは膝から崩れ落ち、腕一本すら持ち上げられないまま、地響きを立てて石の床に倒れ伏した。
【 ユニット:ランロット_01 】
【 相互作用モード:読み取り専用 】
【 移動性:0% 】
「ランロット!!」
タラが流れるような一つの動作で剣を抜き、叫んだ。
彼女はマラコールに向かって素早く二歩踏み出し、その首元を狙って上段から剣を振り下ろした。アイレフも同時に動き、低く構えたナイフで毛布の隙間を狙って左側から滑り込んだ。
マラコールは椅子から立ち上がりもしなかった。彼は長い溜め息をつき、座面のアームレストに軽く触れた。
【 インスタンスのメンテナンス:有効化 】
世界が凍りついたわけではなかった。ただ、物理法則が中立であることをやめたのだ。タラは全力を込めて剣を振り下ろしたが、その刃がマラコールに触れることはなかった。刃はまるで煙か不鮮明なホログラムであるかのように創造主の体を通り抜け、一筋の傷も残さずに石の床を叩いた。衝撃の反動で手から弾き飛ばされた武器が、乾いた音を立てて床を転がった。
アイレフに至っては、腕を伸ばすことすらできなかった。三歩目を踏み出した瞬間、彼の足元にある重力の角度が変化したのだ。彼にとって床はもはや水平ではなくなった。突如として彼の「下」が右側の壁になった。彼はエラーメッセージを点滅させるコードのウィンドウの間に無様になだれ込み、垂直な面の上で立ち上がろうと空しくあがきながら、画面の横へと滑り落ちていった。
「……そこまでだ」
マラコールの声は咆哮ではなかったが、まるで誰もいないスタジアムのスピーカーから響いてくるかのように、全員の頭の中に直接響き渡った。
「私はお前たちの剣のパラメータを構築した。お前たちの鋼の重量を書いた。お前たちの祖先が名前を持つ前に私が起草したルールで、この私を傷つけられると本気で思っていたのか?」
彼は本を開き、ページの上で両手を激しく震わせているウンバを見つめた。
「読むだけ無駄だ」マラコールは彼女に向かって言った。「『クラックヴィオの聖歌』は古代の魔法などではない。鳥類の音声周波数を確認するために、私が不眠症の夜に書いたテスト用のスクリプトだ。そこに神性など存在しない。誰も消去する手間をかけなかったコードの行があるだけだ」
彼の左手が軽く動くと、ウンバの書物が勢いよく閉じた。ただ閉じただけではない。表紙の文字が乱れ、読めない落書きへと変わり、聖職者の法衣は「北の街道」の不安定な領域と同じ彩度の落ちた灰色に染まった。彼女の手は光を収束させようと試みたが、その指先からは静電気の小さな火花が漏れ出るだけだった。
十秒と経たないうちに、戦闘は終わっていた。血が流れることもなく、英雄的なドラマもなかった。自分たちが魔王と戦う戦士などではなく、上位権限を持つユーザーによって編集されているファイルに過ぎないのだと知らされた英雄たちの、圧倒的な屈辱だけがそこにあった。
膝をつき、指に力を込めることもできずに剣を取り戻そうとあがくタラ。彼にとっての「床」である壁に囚われたアイレフ。何も理解できないまま、自分の灰色の手を見つめるウンバ。そして自身の甲冑の重さに押し潰され、顔を石に押し付けたまま、兜の金属に消音されたすすり泣きを漏らすランロット。
マラコールはその誰一人として見ようとはしなかった。彼の視線は清潔で白い部屋を通り抜け、室内の中央で麻痺したように立ち尽くしているキムの上で止まった。吟遊詩人は楽器も武器も抜いていなかった。ただ籠12を胸に抱きしめ、あばら骨に伝わるニワトリの速い鼓動を感じているだけだった。
「……そして、お前の番だ」
マラコールは両肘を膝につき、落ちくぼんだ目を籠に固定しながら呟いた。
「私に襲いかかろうとしなかった唯一の者。知恵からではなく、純粋な恐怖からだがね」
彼は初めて立ち上がる仕草を見せた。彼の周囲の画面が揺れた。
「籠を渡せ、キム」
彼は細く青白い手を伸ばしながら言った。
「リストの、最後の safe エラーを修正する時間だ」
第35話をお読みいただきありがとうございます!
圧倒的な「管理者権限」の前に、手も足も出ず無力化されていく一行。
剣も魔法もシステム上のパラメータに過ぎず、ランロットの誓いですら「読み取り専用」として封じられてしまいます。
そしてついに立ち上がったマラコールが求めるのは、キムの抱える「籠12」。
世界のエラーを修正しようとする創世主に対し、キムはいかなる選択を下すのか……!?
本日のBGMは、WWE Ryback のテーマ曲 "Meat on the Table" でした!
逃れられない圧迫感と絶望的な力の差を象徴するヘヴィなサウンドでお届けしました。
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【新章 Soundtrack List】
・第三十三話: Nino Rota - "The Godfather Theme"
・第三十四話: Metallica - "Sad But True"
・第三十五話: Jim Johnston - "Meat on the Table"
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物語はついに最大の局面へ! 次回もどうぞお楽しみに!
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Thank you for reading Chapter 35!
Malakor effortlessly disables everyone with Root Admin powers and demands Kim hand over Cage 12 to fix the final error.
Today's soundtrack features "Meat on the Table" by Jim Johnston!
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