第19話:北の塔と宇宙鶏(ニワトリ)理論
Chapter Soundtrack:
Siniestro Total - "Somos Siniestro Total"
(BGM: スペインの伝説的パンクロックに乗せてお送りする第19話! 北の塔・47-Bオフィスで明かされる衝撃の真実! 闇の王を倒す鍵は……「宇宙鶏理論(入る鶏と出る鶏の均衡)」!? 官僚主義と不条理パンクが交錯する爆笑のメインクエスト受注劇をお楽しみください)
北の塔は塔ではなかった。要塞気取りの石造りのオフィスビルだった。入口の看板には『闇の事象および諸々予言省』と書かれており、その下に小さくこう付け加えられていた:『予約をお持ちでない方は存在しないものとみなします』。
インクと行政の絶望の匂いが漂う螺旋階段を七階分登った。47-Bオフィスのオーク材のドアには書類を滑り込ませる隙間と、次のような張り紙がされていた:
『謁見時間:12:00 ~ 14:00
時間外の訪問は運命への暗殺未遂とみなします』
アイレフがノックした。返事はない。もう一度ノックした。中から芝居がかった咳払いが聞こえ、何年も鏡の前で「偉い人」のトーンを練習してきたような、重々しく油ぎった声が響いた。
「お入りなさい……運命のお導きがあればな」
ハロー子爵は、何かを補償するかのように巨大なデスクの後ろに座っていた。左に傾いた粉白粉のウィッグをかぶり、光沢の失われた刺繍入りのダブレットを着て、深い自己満足の表情を浮かべている。目の前には三つの羊皮紙の山、ガチョウの羽ペン、そして全く役に立たない時間を測定する砂時計が置かれていた。
「選ばれし者たちよ!」子爵はウィッグを揺らしながら立ち上がり、声を張り上げた。「ついに来たか! 運命が諸君をその扉から押し込んでくるのを何週間も待っていたのだ! さあ座りたまえ、座りたまえ……いや、立っていなさい。運命は立っている者を好むのだ」
タラは座らなかった。誰も座らなかった。ロサリンドはドアが狭すぎるのと、子爵が「予言のオーラを動物の動力で汚したくない」と言ったため、廊下に残された。
「私はハロー子爵。下級予言第三監査官にして、マラコール封じ込め常設委員会の責任者だ」彼は胸を張り、自己紹介した。「そして諸君は……まあ、運命が送り込んできた者たちだな。上出来だ」
彼は巨大な羊皮紙を取り出すと、荘厳に広げて咳払いをした。
「状況は深刻だ。名付けえぬマラコール——全員が名前を呼びまくっているが——が黒い隕石を再起動させた。委員会の最新の計算によれば、世界の滅亡は……来るべき時に来る。だが必ず来るのだ。だからこそ諸君が必要なのだ」
キムが手を挙げた。
「それで、僕たちは具体的に何をすればいいんですか?」
子爵は、三歳児に相対性理論を説明するかのような笑みを浮かべた。
「極めて簡単だ。諸君はマラコールが『宿命の兵器』を完成させるのを阻止しなければならない。そのためにはまず『均衡の三つの聖遺物』を見つける必要がある。しかし聖遺物は『七つの門の鍵』を手に入れない限り見つけることはできない。そして『七つの門の鍵』は『宇宙鶏の試練』を克服した者にしか授けられないのだ」
「何ですって?」ウンバが尋ねた。
「宇宙鶏の試練だ」子爵は至極真面目な顔で繰り返した。「紀元312年に賢者クルッカヴィオ大王によって定式化された『運命の鶏理論』に基づいている。曰く、『入る鶏と出る鶏、そして出る鶏と入る鶏が、宇宙の均衡を維持する。もし鶏が入って出なければ、宇宙は崩壊する。出ても入らなければ、それもまた同じだ。したがって、マラコールを止めるためには、アストラル界から取り出す鶏と全く同じ数の鶏を導入しなければならない』」
オフィスに絶対的な沈黙が流れた。
「……ニワトリ?」キムが繰り返した。
「ニワトリだ」子爵が認めた。「だがタダのニワトリではない。『白い台地』の聖なる鶏舎で育てられた『予言の血統のニワトリ』でなければならない。そして『白い台地』に到達するには『存在しない道の地図』が必要であり、それは『自らを産み落とす卵の謎掛け』を解くことでしか手に入らない」
キムの肩の上で、トリクシーが何時間かぶりにコーヒーを飲むのを止めた。
「これは私にとっても初耳だわ……」
子爵は顔色ひとつ変えず、羽ペンで羊皮紙のポイントを指し示した。
「ニワトリを確保したら——最小十二羽、最大十二羽、一羽多くても少なくてもいかん——、それらを『黒い隕石のクレーター』へ運び、今月以外の月の光の下で『逆産卵のリチュアル』を行わなければならない。うまく行けば、マラコールは諸君が立ち向かえる程度には弱体化する……ただし、事前に入念に『現実構造損害賠償民事責任特約』に三通署名し、『公式予言使用料』を支払っていることが条件だ」
アイレフが顔を手で覆った。
「要約すると……魔法のニワトリを探し出して穴にぶち込めってことか?」
「その通り!」子爵は熱っぽく手を叩いた。「『鶏理論』のために! アストラル界における家禽の出入りを均衡させなければ、宿命の兵器が完成し、我々は全員死ぬ……あるいはもっと恐ろしいことに、47ページにおよぶ『終末完了申請書』を記入する羽目になるのだ」
タラが腕を組んだ。
「報酬は?」
「永遠の栄光だ」子爵は即答した。「それと予算が余っていれば、角の居酒屋の10%割引券だな。ただし火曜日限定だ」
それまで耐えていたランロットが、ついに抑えきれなくなった。
「なんという無上の誉れ! 我らは千人の騎士の勇気をもってニワトリを捜索いたす! 宇宙の均衡と、聖なる羽飾りのために!」
子爵は心からの行政的愛おしさで彼を見つめた。
「その意気だ。これがクエストの羊皮紙だ。一番下に署名したまえ。インクは永久保存用であり、後悔はこの会計年度の予算には計上されていない」
【 メインクエスト更新! 】
【 タイトル:“宇宙鶏作戦” 】
【 目的:十二羽の『予言の血統のニワトリ』を出し入れし、アストラル界の家禽フローを均衡させること。 】
【 報酬:永遠の栄光(換金不可) + 割引券の可能性 】
【 失敗ペナルティ:世界の滅亡 + 書類仕事 】
キムは羊皮紙を見つめ、タラを見つめ、トリクシーを見つめ、最後に存在しない緊急出口を探すかのように47-Bオフィスの天井を見上げた。
「つまり僕たちは、王国を半分横断し、フライパンゴーレムに殺されかけ、花崗岩の鴨を売り払い、ロバを猫に分類されてまでやって来て……ニワトリを探しに行くってことか」
「『鶏理論』のためにね」子爵は満足そうに羊皮紙を仕舞いながら言った。「運命の加護があらんことを。そして忘れないように。一羽の鶏が入って出なければ諸君の責任だ。出ても入らなければ、それも諸君の責任だ。宇宙とはそういうものなのだよ」
タラは羊皮紙をひったくると、素早い動作で二つ折りにし、ドアに向かって振り返った。
「一羽ごとの産卵証明書まで要求される前にずかるわよ」
廊下に出ると、ロサリンドは「俺は最初から分かってたぜ」と言わんばかりの、ロバにしかできない表情で一行を見つめた。キムは手で顔を覆い、自分の人生にはもはや直線性など存在しないことを思い出させるかのように、ピンクのスカートが膝に触れるのを感じていた。
「トリクシー……」
「なに?」
「システムに『メインアークをリセットして別のシナリオを選ぶ』ってオプションはないのか?」
「ないわ。でも『鶏理論を受け入れて前に進む』ってオプションならあるわよ。それしか選べないけど」
そんな行政的慰めを胸に、一行は十二羽のニワトリと宇宙の均衡を正式に背負い、螺旋階段をゆっくりと下り始めていくのだった。
第19話をお読みいただきありがとうございます!
世界の運命を握るメインクエスト、まさかの「宇宙鶏理論」開幕!!
闇の王マラコールを倒すためには、アストラル界の鶏の出入りを十二羽ぴったりに均衡させなければならない……!? 官僚主義の化身・ハロー子爵の理不尽すぎるクエスト発注にキムたちの精神は限界突破です(笑)。
今回のチャプターBGMは Siniestro Total の "Somos Siniestro Total" でした! ガラガラでパンクなスペインン・ロックに乗せてお送りした不条理行政劇、いかがでしたでしょうか。
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【第四章 王都編 Soundtrack List】
・第十七話: Guns N' Roses - "Welcome to the Jungle"
・第十八話: Panjabi MC - "Mundian To Bach Ke"
・第十九話: Siniestro Total - "Somos Siniestro Total"
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「永遠の栄光(※換金不可)」と「火曜日限定の10%割引券」を手に、十二羽の予言のニワトリを探す旅に出ることになったキムご一行!
果たして彼らは「存在しない道の地図」と「自らを産み落とす卵の謎掛け」を解き明かすことができるのか……!?
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Thank you for reading Chapter 19!
The main quest takes an utterly absurd turn with the "Cosmic Chicken Theory"! The party is now officially tasked with balancing twelve prophesied chickens to save the realm from the Dark Lord and 47 pages of apocalypse paperwork.
Today's soundtrack features "Somos Siniestro Total" by Siniestro Total!
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