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第16話:高等教育の塔と偽りの姫君

Chapter Soundtrack:

El Reno Renardo - "Majestad, tenga cuidado por la gravedad"

(BGM: スペインの爆笑パロディ・パワーメタルに乗せてお送りする第16話! 囚われの姫の衝撃の正体(※法律専攻の大学生)と、ダンジョン攻略報酬ゼロの悲しい現実をお楽しみください)


アイレフは、荒々しい動作が木材以上のものを破壊してしまうのを恐れるかのように、静かに扉を押した。扉の開閉音すら立てずに開いた先には、小さく驚くほど整頓された部屋が広がっていた。清潔な石造りの壁、深緑の毛布が掛けられた小ぶりなベッド、そして雑多だが大切に保管されている本で満たされた本棚——その何冊かは床の上に開いたまま伏せられていた。そして、部屋の真ん中に……彼女がいた。

姫君は、キムが思い描いていた姿とはまるで異なっていた。刺繍入りのドレスも、黄金の王冠も、おとぎ話に出てくるようなバカげた宝石も身につけていない。着ているのはシンプルな水色のパジャマ。長時間の睡眠か読書によって乱れた茶髪を二つの三つ編みに結び(膝の上には一冊の本が開かれていた)、室内湿気で少し曇った丸眼鏡の奥から、大きな瞳が覗いている。

彼女は、武装した六人が部屋になだれ込んできたのを聞きつけ、ゆっくりと視線を上げた……さらにグループの最後尾からは、招かれざる客と言わんばかりにロサリンドが顔を覗かせている。丸まる五秒間、完璧な静寂が室内を支配した。そして:

「もう? 私を救出しに来たの?」

その声は疲れ切っていた。むしろ失望すら混じっている。そして彼女は、まっすぐにランロットを見つめた。

「あなたが私の救出者?」

ランロットは瞬時に背筋を伸ばし(フライパンの一撃を受けた後にしては可能な限り)、破れたマントを整えると、傷つきつつも崩れていないプライドを胸に顎を誇り高く掲げた。

「私はサー・ランロット・ドゥ・アルバー!」荘厳に言い放つ。「ナブコ二世の聖なる誓約のもとに立つ遍歴騎士……不当に鎖に繋がれたあらゆる無辜の乙女を解放するため、直々に遣わされた者である……」

姫君は曇った丸眼鏡の奥でパチパチとまばたきをした。そしてこう告げた。

「私、鎖になんて繋がれていないわよ。乙女でもないし。無辜ですらないわ。今は『中世王国における政治的婚姻の批判的歴史』を読んでいたところよ」

アイレフは扉のノブを握っていた手を下ろし、家具の配置を変えられた猫のような遅さでまばたきをした。

「『乙女じゃない』ってどういう意味だ?」

キムは一歩前に踏み出し、ピンクのスカートの上から革マントを整えながら尋ねた。

「三つ編み二本に水色のパジャマだぞ。システムの視覚コード上、あんたは自動的にチュートリアルの乙女として分類されるはずだ」

姫君——あるいは、かつてそう呼ばれていた存在——は、千年分の埃を舞い散らせながら、革装丁の重厚な本をパタンと閉じた。

「まず第一に」彼女は丸眼鏡の位置を鼻筋の上で直しながら言った。「私はバートリクス・フォン・ヴュルテンベルク=ナッサウ公女。教会法博士であり、公爵位継承権第三位よ。第二に、カブ並みの知性とイタチ並みの口内衛生環境を持つ子爵との政略結婚を回避するために、四年前に自分でここに閉じこもったの。そして第三に……」

バートリクスは部屋の隅を無頓着に指さした。そこでは、ゼンマイと蒸気時計仕掛けを備えた真鍮製のメガホンが、木製の台座の上で回転していた。

「……救出を求めるループ音声は、地元の冒険者たちに私の家賃を無意識に負担させるために蓄音機のワックスシリンダーに録音したものよ。下の階のゴーレムが破壊されるたびに、オートマトンの金庫から『塔のメンテナンス費用』として自動的に資金が徴収され、王都にある私の口座に直接振り込まれる仕組みになっているの」

部屋の中に、完璧な絶望の静寂が降り積もった。

【 ロアの暴露:"塔の乙女" 】

【 イベントタイプ:学術レベルの不動産詐欺 】

【 クエスト状態:被害者不成立によりキャンセル 】

【 報酬金貨:ゼロ。(持参金の100枚は、2022年のインフレ率に合わせた将来価値の試算値でした。) 】

アイレフは通路で油を垂らし続けているゴーレムの空の金庫を見つめ、次にバートリクスを見つめ、最後には苦いため息と共に顔を両手で覆った。

「つまり……」タラが、ロバの吐息すら凍りつかせるほどの冷たい声で言った。「……私たちは鈴の糸と絵の具のマグマに満ちた四つの階層を登ってきた結果、ラストボスがパジャマを着た法律専攻の大学生だったってわけ?」

「厳密には、あのゴーレムは工学の試験用プロトタイプよ」バートリクスはしおりの挟まれたページを再び開きながら訂正した。「それと、もしよろしければ面会時間は五時で終了したわ。出口は入ってきた場所よ。降りる時に鈴の糸を踏まないように気をつけてね、調整に二時間かかったんだから」

サー・ランロット・ドゥ・アルバーは、フライパンの凹みが残る鎧の中で震えながら一歩前へ出た。兜の青い羽飾りは完全にへたれ込んでいる。

「だ……ですが姫様……予言が……誉れが……私の授かりし弩弓が……」

「あなたの弩弓は、ラチェットが左に三ミリずれた低品質の輸入モデルよ」公女はテキストから目を離さずに言い放った。「十メートル以上離れた場所から撃とうとしたら、松の木に当たるのが関の山ね。それでは良い一日を」

キムは肩の上でコーヒーの最後のひと口をすすっているトリクシーを見上げた。

「これ、経験値はもらえるよな……?」吟遊詩人が哀願する。

「経験値はゼロよ」妖精は『ポップ』という音とともに空間にカップを仕舞いながら答えた。「でもシステムから特別な実績が授与されたわ」

【 実績解除:高等教育の資金提供者たち! 】

【 説明:ダンジョンを一つ完全に攻略した結果、単にPNJの大学授業料を支払っただけだった。 】

【 報酬:漠然とした存在論的虚無感。 】

ロサリンドは入口から低く重々しいいななきを漏らすと、749キロのガラクタと花崗岩の鴨像、そして踏みにじられたパーティーのプライドを引きずりながら、堅忍不抜な哲学者ような荘厳さで階段へと踵を返した。

「まあ……」

塔の奥で再び鳴り響き始めたメガホンのループ音声を背に、キムはロバの後を追いながら呟いた。

「少なくとも、パジャマ姿は似合ってたよな」

「黙れキム」タラとアイレフが口を揃えて言い放った。

背後から聞こえる『助けて! 私は正統なる王位継承者たる……!』という金属音の余韻を背に受けながら、パーティーは王都へと続く、のろまで埃っぽく、そして理不尽な旅路へと戻っていくのだった。

【 塔の章・完結! 】

【 次なる目的地:王都の城門(過積載ロバに対するワイロと入国税を要求する衛兵たちが待つ場所)。 】

第16話をお読みいただきありがとうございます!

「囚われの姫」の正体は、自分で仕掛けた不動産自動回収システムで学費を稼ぐ教会法博士の公女様でした!


経験値ゼロ、報酬ゼロ、残されたのは「高等教育の資金提供者たち」という虚無な実績のみ(笑)。ランロットも弩弓の精度を論破されて完全に撃沈です。


今回のチャプターBGMは El Reno Renardo の "Majestad, tenga cuidado por la gravedad" でした! パロディ・パワーメタルの壮大なメロディに乗せてお送りした「高等教育の塔」、いかがでしたでしょうか。


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【第三章 Soundtrack List】

・第十三話: El Reno Renardo - "Camino Moria"

・第十四話: El Reno Renardo - "Tutti Frutti Summer Love"

・第十五話: El Reno Renardo - "Sanotes"

・第十六話: El Reno Renardo - "Majestad, tenga cuidado por la gravedad"

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これにて「高等教育の塔」編は完全決着!

次回、一行はいよいよ目的地である「王都の城門」へと到達します。しかしそこには、過積載ロバ「ロサリンド」に目を光らせる強欲な衛兵たちが待ち構えていて……!?


面白かったら、ぜひ【ブックマーク登録】と【評価(★★★★★)】で応援をお願いします! 次回もお楽しみに!


Thank you for reading Chapter 16!

The "Damsel in Distress" turns out to be a Canon Law student using an automated tower trap to pay her university tuition! With zero XP, zero gold, and a useless achievement unlocked, the party trudges back toward the Capital.


Today's soundtrack features "Majestad, tenga cuidado por la gravedad" by El Reno Renardo.


If you enjoyed this chapter, please consider **Bookmarking** and giving it a **5-Star Rating (★★★★★)**! See you at the Capital Gates!


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