第14話:塔の乙女(※ただし戦利品確定)
Chapter Soundtrack:
El Reno Renardo - "Tutti Frutti Summer Love"
(BGM: スペインの爆笑バカロック・ユーロビートに乗せてお送りする第14話! 「王道の姫救出クエスト(※ただしドロップ素材・戦利品確定)」に群がる、道徳心ゼロのパーティーの姿をお楽しみください)
王都へと続く「王道」は徐々に広がりを見せていたが、それに比例してサー・ランロットの愛用弩弓の神聖な歴史に関する怒涛の独り言も加速していった。ロサリンドは霊柩車の棺を運ぶかのような重々しいペースで歩みを進め、ガラクタの隙間からは鴨の花崗岩像が滑稽な見張り番のように顔を覗かせている。
「……ゆえに、高潔なる同志諸君! この引き金は、聖なる主教様自らの祝福を授かっておるのであって……」
「今ので一時間に四回目よ」タラが見向きもせずに言葉を遮った。「ロバに繋ぎなさい」
「比喩表現に過ぎぬ、女戦士殿! 完全な発言にはカウントされん!」
ここ数日の中で初めて頭を空っぽにして歩いていたキムが、最初にその塔を目にした。
街道を外れた乾燥した木々の合間に、一つの塔がぽつんと立っていた。表面の剥げ落ちた灰色の石造りで、頂上付近に細長い窓が一つ開いている。威厳など微塵もない。ただひたすらに古く、何年もメンテナンスが放置されているような佇まいだった。
そしてその窓から、声が聞こえてきた。拡声され、金属的な響きを伴い、同じ言葉を何度も叫び続けて疲れ果てた者のようなテンポでループしている。
『助けて! 私は正統なる王位継承者たる姫です! 意思に反してここに閉じ込められています! 私を救い出してくれた方には、私の手と心、そして安全に保管された金貨百枚の寛大な持参金を差し上げます! 助けて!』
静寂。そして再び、寸分違わぬ声が響く。
『助けて! 私は正統なる王位継承者たる姫です……!』
「なんて効率的なの」ウンバが首を傾げながら呟いた。「助けを求めるのに、起きて睡眠時間を削る必要すらなさそうだわ」
キムの目の前で、いつものモデムの接続音のようなノイズと共に青い画面が点滅した。
【 サブクエスト検知:"塔の乙女" 】
【 依頼人の信頼度:低 】
【 提示報酬:結婚 + 金貨 100枚 】
【 警告:過去2年間に同地域で同様のクエストが14件記録されています。報告された成功率:0% 】
「統計データで警告してくれるなんて親切ね」トリクシーがカップから口を離さずにコメントした。「誰も読まないのが残念だけれど」
誰も読まなかった。
「囚われの乙女だと!?」
ランロットが大声を上げた。すでに半身の鎧が興奮で打ち震え、目尻には光る涙が浮かんでいる。
「運命が私を呼んでいるぞ、同志諸君! 乙女の嘆きを聞いて素通りできる高潔な魂など、この世に存在するはずもない!」
「ここにいるわよ」タラは歩みを緩めることなく言った。「『素通りする』っていう選択肢よ」
「ならば私一人で行こう! 真の騎士に相応しくな! 栄光は優柔不断な者を待ってはくれぬ!」
言い落とすや否や、男は磨き上げられた十五キロの金属を纏い、ブレーキをかける気など微塵もない勢いで塔に向かって突進していった。
一行は歩き続けた。ロサリンドは完全に無関心な、どこか共感すら覚える鼻鳴らしを漏らした。
「……助けに行かなくていいんですか?」ウンバが切り出した。
「私たちの契約じゃないわ」タラが切り捨てた。「ナブコはゴブリン討伐に金を払ったのよ。吟遊詩人コンプレックスの騎士にじゃないわ」
それから二分間、響く音といえばロバの背中のガラクタが軋む音と、遠くで聞こえるランロットが塔の麓で何者かに決闘を挑む熱血な叫び声だけだった。
金属のぶつかる音。短い咆哮。再び金属音。そして、静寂。
その時、乾燥した草の上に、戦闘用よりも控えめな金色の画面がコインの落ちる効果音と共に浮かび上がった。
【 サー・ランロット・ドゥ・アルバーが戦利品を獲得しました! 】
【 - 1x 衛兵の鎧(レア度:レア) 】
【 - 1x 革の袋(中身:銀貨 40枚) 】
【 - 1x 未鑑定の宝石付きリング 】
アイレフが、見えない首輪を引っぱられたかのようにピタリと足を止めた。
「待て。ロバを止めろ」
「今さら興味が湧いたのか?」キムが尋ねる。
「さっきまでは窓の女の声に踊らされるバカな騎士だった」アイレフはすでに踵を返しながら言った。「だが今は、窓の女の声に踊らされる『戦利品確定の』バカな騎士だ。状況がまったく違う」
タラは一秒半ほど考えた後、同じく踵を返した。
「銀貨四十枚を主義主張のために捨て置く理由はどこにもないわ」すでに塔に向かって歩き出しながら宣言する。「主義主張はロバの餌にはならないのよ」
「私はあの指輪にどんな効果があるのか知りたいだけです……!」ウンバも学術的な好奇心で目を輝かせながら、彼女の後を追って小走りでついて行った。
キムはドロップ通知を読み終えるや否や倫理観を百八十度翻した三人の仲間を見送りながら、トリクシーとロサリンドと共に取り残された。
「一分前までは『私たちの契約じゃない』って言ってたよな?」
「そして今も彼らの契約ではないわ」トリクシーはすでに塔に向かってフワフワと飛び始めていた。「単に、どうでもよくなっただけよ」
塔の窓からは、自分の救出劇がすでに「自分とは無関係な金儲け」にすり替わったことなど露知らず、忠実にループ音声を流し続ける声が響いていた。
『助けて! 私は正統なる王位継承者たる姫です! 意思に反してここに……!』
「はいはい、今行くよ」
キムはため息をつき、ピンクのスカートの上から奪ったマントを整えると、塔に向かって歩き出した。
「ロサリンドのためだからな。あんたのためじゃないぞ」
第14話をお読みいただきありがとうございます!
王道名物(?)「塔に閉じ込められた姫救出サブクエスト」が発生!
……と思いきや、ランロットが単独突撃してドロップアイテムを獲得した瞬間、パーティーの倫理観が崩壊。銀貨40枚と未鑑定リングのために即座に手のひらを返すカオスな展開となりました。
今回のチャプターBGMは El Reno Renardo の "Tutti Frutti Summer Love" でした。おバカで陽気なユーロビートに乗せて、物欲に塗れた一行の迷走をお楽しみください!
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【第三章 Soundtrack List】
・第十三話: El Reno Renardo - "Camino Moria"
・第十四話: El Reno Renardo - "Tutti Frutti Summer Love"
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次回、ついに怪しい塔の内部へと突入! 果たしてそこにいるのは本物の姫なのか、それともシステムの罠なのか……?
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Thank you for reading Chapter 14!
A classic "Damsel in Distress" side quest appears, but the moment Sir Lancelot confirms rare loot and 40 silver coins, the party's moral high ground instantly vanishes!
Today's soundtrack features "Tutti Frutti Summer Love" by El Reno Renardo.
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