第七話
拝啓、高校生の僕へ。
今、君が味わっている虚無感は決して勘違いじゃない。僕はそれを引きずって生きていく。あの日のことは、そう……あまり良い思い出ではないけれど。僕たちにとって必要なことだったと思う。
表彰台の一番上に立つ。全国から集まった選手たちを倒して、僕はここに立っている。
──あぁ、これが君の見ていた世界なのか。
カメラのフラッシュを浴びながら、僕はぎこちない笑みを浮かべた。思い返せば、君はいつもつまらない顔で表彰台に立っていたような。
一番上に立てば、僕も何かが見えると思っていた。でも、違う。何もない。達成感も満足感も、僕の中に湧き上がって来なかった。
確かに、これは作り笑いも嫌になるかもしれない。
僕と彼が、この場所に求めた意味は違うけれど、少しだけ気持ちがわかるような気がした。
僕は昔から鈍臭かった。絆侍みたいな天才じゃない。
だから早い段階で、自分が凡人だと知った。
次第に絆侍の影に収まる自分を肯定するようになった。隣に立ち続ければ、少しは近づけると思っていた。
天才に届かないのなら、届くまで何度も取り組めばいい。何回も失敗するのだから、その全てを振り返り対策を立てていけばいい。
敗者は試合で多くの学びを得る。
僕は沢山の学習の機会を与えられて生きている。
そう言い聞かせて、この道を歩き続けてきた。
表彰式が終わり、控室へ戻ると部員たちが泣いて僕の優勝を喜んでくれた。
僕の高校は、公立にしては珍しく運動部が強かった。
しかし、強豪校だった中学の時とは違い、高校の部活動の雰囲気は柔らかかった。顧問曰く、僕が部長になってかららしい。僕は普通の部長なのに。
そんな感じで僕より浮かれている部員たちを落ち着かせ、会場の外へ移動するように指示を出す。その途中で、スポーツ雑誌のインタビュアーが僕に駆け寄ってきた。何度か話したことのある人だった。
「勝利の決め手は?」と尋ねられ、試合の感想を述べた。決勝戦の相手は、中学の頃から対戦している相手だった。お互いを研究し合っている状況で、僕の一手はそれらを覆すものだった。僕は、駆け引きが得意なタイプじゃない。でも、最後ならと思って勢いよく攻めてみた。対戦相手はすごく驚いていたし、僕自身そんな戦法に出たことに驚いている。
この後は、家族に報告しに帰るのかと聞かれ、その前に幼馴染へ報告すると伝えた。僕のことを取材する人のほとんどは、絆侍のことを知っていた。むしろ、絆侍が有名だったから高校での僕の活躍に目をかけてくれていたのだと思う。
名前は出さなかったけど、それだけで十分だった。
君は嫌がるかもしれないけど、僕にとって君の存在は大きかったのだから。




