6.
ミリィは話が終わるとロサから部屋を追い出され一人途方に暮れる。夜の闇の中に一人で放り出されたような気分だ。彼女がロサに話を聞こうと思ったのは好奇心もあるが、何か悩みがあるのなら話を聞くことでその解決に一役買えないかと思っての事だ。純粋な善意は彼女の持ち得る美徳の一つだろう。
しかしその一方で彼女のその思惑は失敗に終わった。ロサの悩みを自分では解決する事が出来ない、そう感じてしまったのだ。それも仕方のない事だろう。ロサの語った事は、その心の在り様は、自らの過去との向き合い方は、ミリィにはまるで理解できない事だったのだから。
「ゼノ様、私にも人の痛みは理解できないかもしれません……」
彼女が思い返したのはサンクト達が置いた音の出る箱を探していた時の事、自らの悩みを告白したミリィに対してゼノが励ますような言葉を述べた時の事だ。人の痛みを理解できるのならきっと誰も彼もの想いを理解できると述べたその言葉が、彼女に重くのしかかる。
ロサの心情はまるで理解できない、それを初めての事だと思った。しかし本当にそうだろうか。ミリィはそれが違ったのではないかと思い返す。
「私は、誰の気持ちを分かっていたんだろう」
炭鉱を巡り争っているサンクトや行商人のヤムク、それどころか同じ村の仲間であるランドや他の皆の気持ちだって決して理解できていたわけではない。ただ単に、金銭という欲望に囚われているのだと一方的に決め付けていた。それ以外に自分が理解できる部分が無かったからだ。
彼女は覚えている。ランドが炭鉱について村人に語っていたことを。
「炭鉱は俺達の手で管理しなきゃならないんだ! 間に誰かが入れば利益は全部持っていかれる。俺達はノウハウも何も無くて彼らの言う事が嘘か本当か見抜く事なんて出来やしない! この村の、カルゴーネの暮らしを楽にする為に俺達は戦わなきゃいけないんだ!」
ミリィはその言葉を聞いて鼻で笑ったのを覚えていた。危機感を煽って村のみんなを自分の思い通りに動かそうとしているだけなのだと。しかしサンクトが異常を偽り炭鉱を手に入れようとしているように、欲望の中では誰も手段を選びなどしない。
ランドの演説は正しかったのかもしれない、彼女は今初めて、そう思った。
「世間知らずで何もわかっていないのは私の方で、ランド達の方が物事を正しく見ていたのかな……」
蝋燭の明かりに照らされる彼女はまるで幽鬼の如く、覚束ない足取りで向かう先も分からぬまま歩き続ける。ふと気付いた時、目の前には外へと続く扉があり彼女はそれを開いた。カルゴーネを覆う霧はどこまでも深く、彼女の心の内の迷いを示しているようにも見えた。
「ミリィさん、どちらへ?」
彼女は不意に聞こえた声に大袈裟に驚いた。それを見た声の主、クレアは困惑した様子で彼女を見る。「そこまで驚かずとも良いでしょう……」
「あ、いや、ごめんなさい」
二人はどこか気まずい雰囲気の中で立ち止まる。互いにどこか距離を置きながらこの相手に対してどのような態度で臨めばいいのか悩んでいるようだった。
先に声を上げたのはミリィの方だ。
「え、っと。どこ行ってたんですか? 濡れてますけど」
クレアの様子を見ると顔や首元がやけに濡れていて明らかに不自然に見える。まるで顔に水をかけられたようだとミリィは思ったが。
「少し頭を冷やしてきました。そこを、小川が流れていたでしょう? ひんやりしていて気持ちよかったですよ」
小川というのが畑の為に川から水を曳いている用水路である事にミリィはすぐに気付いたが特に指摘はしない。ただ目の前の騎士が普段村人がバケツで水を汲んだり牛が水を飲んだりしている場所で顔を洗っている姿を想像すると少しおかしかったが。
ほんの少し気持ちが軽くなったミリィは目の前の騎士に尋ねる。
「クレア様はどうして聖騎士になったのですか?」
それは子供が聖騎士を見かけてはしゃいだり握手を求めたりする中でよくされるような質問だ。サービス精神旺盛な者ならばきっと喜んで答えてくれるだろう。クレアもまた、未来ではそうありたいと思っているのだが、今はまだ苦笑いを浮かべて頭を掻く。
「私は聖騎士では無いんですよ」
「え、そうなんですか?」
「説明していなかったかもしれませんね。私は従騎士と言って、まあ見習いのようなものです」
ミリィはそう言えば牧師様がそんなことを言っていたような気もすると思ったが、どうにも記憶が曖昧らしい。クレアもまたランドやサンクト達と話をする時に意図的に説明を省いていたこともあって、ミリィにどこまで説明したか覚えていない。実際、それで困る事は特になかったのも拍車をかけていたのだろう。
「ですがまあ、聖騎士になりたい理由ならば説明できますよ」
「聞いても良いですか?」
一瞬、クレアは押し黙る。彼はこの時、適当に嘘を混ぜた話をするつもりだった。彼は将来人々が自分を手本として見る事の出来るような品行方正な聖騎士を目指している。それには多少の演技というのは必要になって来るだろうし、聖騎士を目指した理由などはまるで人間の鑑かのような言葉で飾り立てたっていいわけだ。
しかしそれをやめて本心を話そうと思ったのは、彼女の瞳の中に迷いを、救いを求める願いを見たからなのかもしれない。
「私の故郷は異常で滅びました」
「え……」
クレアから放たれた第一声にミリィは思わず押し黙る。その言葉が純粋に衝撃的だったという事もあるし、この短時間にまさか二人から異常に故郷を滅ぼされた話を聞くとは思わなかったというのもあるだろう。
「幸いな事に私自身は聖騎士に助けられてこうして生き延びましたが、今でもその時の事はよく覚えています」
「じゃ、じゃあ、あなたが聖騎士を目指したのも……」
ミリィの頭の中には先ほどロサから聞いた話がこびりついている。故に、彼女の口から出たのは。
「人にはどうにも出来ない異常を探して、自分を慰める為なの?」
「は?」
しかしクレアはまるで意味が分からないというようにぽかんとしている。
「いや、何ですかそれ? 普通に異常が憎いからですよ。この世の全ての異常を解消してやろうと思っただけです。仇討ちみたいなものです」
「え、あ。そうなんだ……」
故郷を異常が襲ったという事実は同じであったはずが、そこから出て来た結論はまるで違う。
「そんなにおかしいですか? 割とよくある話だとは思うのですが」
クレアの疑問は尤もなもので、ミリィですら確かにその考え方を普通の事だと思っている。彼女だってこのカルゴーネを何かが滅ぼしたなどと想像すれば憎しみの炎が燃え盛るのを感じるだろう。自分が五体満足だとすれば間違いなく仇討ちに燃えるであろうことは容易く想像できる。
ただ、直前にロサから話を聞いた時に彼女は自身の考えが間違いなのかもしれないと思ってしまった。それ故に、クレアもきっと自分とは違う考えを持っているのだろうと思ったのだ。
「故郷や、大切な人が殺されたら、憎いのは普通だよね」
「ええ、まあ。普通だと思いますが」
ミリィが村の外の人と接するのは実の所今回が初めての事だった。行商人やサンクト達のような人々も彼女が直接相手をすることは無く、遠くからその様子を眺める事がある程度だ。村の中で優しい人々に育てられて来た彼女は今になって初めて気付く。
「……色んな考えの人がいるんだね」
自分とは違う考えの人がたくさんいるのだという事に。
「あ~? ええっと、まあ、そうでしょうね」
クレアが当然のようにそう言ったのを聞いて彼女はそれが普通だと皆知っているのだと気付く。彼女は思わず唇を噛み俯く。
突如俯きよくよく見れば今にも涙を流しそうな表情を見せるミリィに対して、何かやってしまったかと焦り困り果てるのはクレアの方だ。彼からすれば突然現れた村娘に話を聞かれそれに答えれば突然泣き始める。当たり屋にぶつかってしまったような感情だろう。
さて、クレアは打算的で人を上手く使う事が出来る自分こそが優れた人間であると自負しているような者であるが、しかしながら、その一方で目の前で悲しみ涙を流している人間を放置できるほど情の無い人間でもない。
「あ~、そう言えば、ミリィさんのご家族は何をやっていらっしゃるんですか? やはり畑を作ってらっしゃるんですかね」
それは彼なりに話を変えて彼女の気を逸らそうとした努力の証であったが。
「みんな私が小さい頃に死んじゃった」
それがまさか裏目に出るなどと誰が想像するであろうか、悲しい物である。聞くべきじゃなかった、そんな後悔がクレアの中で渦巻くが、幸いな事にミリィは然程気にした様子はない。
寧ろ。
「私って、本当に世間知らずなんだね」
それを切っ掛けに彼女は自身の事をぽつりぽつりと話始めるのだった。
ミリィはカルゴーネの村に生まれた普通の娘だ。両親や祖父母、隣近所はおろか村中の皆に祝福され生まれ育った。それは特別な事では無くこの小さな村では当たり前の事なのだ。歳の近い子らと共に野山を駆けまわり、時には畑を耕し野菜の収穫を手伝う。そんな当たり前の日々がずっと続くものだと思われていた。
ある年、カルゴーネ近郊には大雨が続く日があった。
「随分長く降ってるな。洪水にでもならなければ良いが」
彼女は父がそんなことを言っていたのを覚えている。実際、近隣の川は増水し向こう岸の町へ行こうとした者が近付けないと断念して戻ってきたこともあったという。
そしてある日、事件は起こった。
「誰か、誰か助けてくれ!」
村の中に響いたその声は行商人のものだった。その一団は増水した川にかかっていた橋を無理に渡ろうとしたらしい。しかしその途中、不幸にも上流から来た流木が橋にぶつかりその揺れでその中の一人が落ちてしまったらしい。幸い今はまだ橋に引っ掛かった流木に捕まっているようだが、助けるのに使えそうな物も無かった彼らは村に助けを求めに来たようだ。
そしてそれに真っ先に応じたのは。
「ミリィ、少し行って来るから大人しく待っていなさい」
「ロープ持って来たわ」
「急がねえとなあ」
「んだな」
ミリィの両親と祖父母だった。彼らはすぐさまロープを準備すると川の方へ向かって走り出す。そして一夜が明けて、ミリィは依然一人家で待ち続けていた。その夜、牧師が彼女の家を訪ねて言った。
「これからは村の皆があなたの家族です」
その意味を幼い彼女は理解できなかったが、それが意味する事は今となっては明白だろう。彼女は両親と祖父母をあっさりと、一夜の内に失ったのだ。
クレアは思わず息を呑む。そう言われて見ればミリィの家族については誰も何も語らず見る事も出来ていない。それは純粋に既に彼らがこの世を去っていたからなのだ。幸いながら彼女は村の人たちの温かさの中で大きく育って行ったのだろうが。
私って世間知らずなんだよね。
ミリィが先程言い放ったその言葉はおそらくそれが原因なのだろうとクレアは察する。彼女の不幸な境遇を作り上げた原因は行商人の一団だったとも言える。それ故に不用意に彼女を刺激しないようそういった者達への接触は可能な限り避けるようにしていたのだ。結果として彼女はこの村の事しか知らない、外の事などまるで理解していない状態で今まで育った。彼女の純粋さを見れば彼らの教育が間違っていたとは思わないが、しかし必ずしも良い面ばかりでは無かったのも間違いないだろう。
「……ミリィさんは」
クレアはその先を口にすべきか少し悩んだ。その問いは彼女の純粋さを消してしまいかねないと思ったからだ。しかし彼女が自身の持つ悩みと向き合う為には、必要な問いだろうと考え意を決する。
「家族を殺した相手を憎いとは思いませんか?」
先ほど、彼女自身が言った言葉だ。故郷や、大切なものが殺されたら憎いと思うのは当然の事だと。ならば彼女は憎しみをその心に抱きこれまで過ごしてきたはずだ。その事実と向き合う事は、彼女の精神的な成長の為に必要になるに違いない、そんな思惑だったのだが。
「まあ、それはそうなんだけど。洪水を相手に憎いと言ってもどうすればいいのかわからないよ」
「え?」
「え?」
洪水、それは確かに彼女の家族を殺した一因ではある。いや寧ろ直接的な原因はそうと言えばそうなのだが、クレアはどうしても戸惑ってしまう。
「洪水なのですか?」
「だって川に流されたんだよ? それとも大雨が原因ってこと? それか、あの大雨は異常だったって事にして異常が憎いって言えばいいの?」
怒涛の質問攻めにクレアは困惑してしまう。実際、彼女の言っている事に間違いは無いのだ。だが、それでも。
「……もしも、その時にいた行商人の一団がいなければそんなことは起きなかったとは、思いませんか?」
責める事が出来る相手がいるのなら、それに対し憎しみをぶつけようとするのは当然の事では無いだろうか? たとえそれが理不尽なものだったとしても、そうであるべきだとクレアは思いたかった。しかし彼女は。
「思わないけど」
ただその一言でバッサリと切り捨てる。そこには確固たる強い信念があるようにすら感じられる。
「なぜそう思えるのです?」
必死に食い下がるクレアの事を彼女は見てもいない。どこか遠くを、彼女の瞳にだけ映っている何かを見つめているようだ。
「父さんも母さんも、おじいちゃんもおばあちゃんも、正しいと思う事をやろうとしただけだから」
「正しさは、あなたの憎しみを消す免罪符になりますか?」
「みんなの力が及ばなくて何も上手く行かなかった事は悲しいけれど、だからって誰かが悪いわけじゃないよ。誰かが助けを求めてたら助けに行く、私だってきっとそうする」
「そう、ですか」
「今、クレア様が私の話を聞いてくれたみたいに」
風が吹き霧が晴れたその向こう、ミリィが優しい笑みをクレアに向けている。それは彼にとってあまりに眩しく、心を針が刺すような痛みを伴うものであり思わず視線を逸らしたが、それでもその胸の痛みは大切なものだと思わずにはいられなかった。
ミリィと別れたクレアは少し考えた後に牧師の元へ向かう。しかし牧師がいる教会の礼拝堂には別人の影が見えて思わず足を止めた。そこにいたのはゼノだ。二人は何かを話しているらしい。
クレアは中へ入るべきか否か少し悩み、結局外から聞き耳を立てる事にしたようだ。
「まさか高名なゼノ様にこのような小さな村へいらしていただけるとは思いもしませんでした」
「……自分の噂は、悪い物ばかりだろう」
「そうですね」
どうやら牧師もまた、ゼノがかの虐殺騎士であると気付いていたのだろう。しかし彼はその件に関してはあまり気にしてはいないようだ。
「確かにあなたにまつわる噂の数々には思わず目を塞ぎたくなるようなものがある事も事実ですが、その大部分は噂に尾鰭が付いたものなのでは? 実際にここに来たあなたを見ているとそのような気がします」
「貴殿と共に過ごした時間はそう多くは無いはずだが」
「あなたと一緒にいる者達を見ればわかりますよ」
牧師の目は何もかもを見透かすかの如く澄み切っている。しかしクレアにはゼノがまともな感性を持った人間だとはとても思えない。どちらが正しいのか、或いは、どちらも正しいのか。
「ミリィは迷惑を掛けていませんか?」
牧師の話題はミリィの事に移って行く。異常の調査という危険が伴う場所に同行させるのに彼も幾らか思う所があるのだろう。
「彼女は、真っ直ぐな瞳をしている」
ゼノのその言葉は彼女を高く評価しているという意味なのか。クレアは少し考えてみたが答えはわからない。
「あの子は幼い頃に家族を失っていまして。村の者が家族同然となって共に過ごしてきたのですよ。既に亡くなってしまいましたがトナ村長の旦那さんは特に可愛がっておられまして。二人並んで川辺に座り込み村に伝わる伝承などを話し聞かせている姿などが昔は見られたものです」
「そうか。だとすれば彼女の真っ直ぐな瞳は貴殿らのおかげなのだろう」
ミリィは確かに村人たちに可愛がられていたらしい。家族を失ったことさえ乗り越えて今を生きている。自分のように憎しみに囚われるのではなく別の形で。どちらが正しいのかはわからなかったが、彼には少し羨ましいように思えた。
「時に、ゼノ様は」
不意に牧師が話を変える。その先を聞くべきかクレアは悩んだがすぐにその場を離れる事に決めていた。或いはそれはミリィへ僅かに抱いた嫉妬を消してしまいたいと願ったのかもしれない。彼は自らの口からある事をゼノに聞こうと決意したのだ。
少し時間が空いて、クレアはゼノが部屋へと戻って行くのを見かけた。彼は重い腰を上げてその後を追う。緊張からか足取りは重かったが、しかし彼は立ち止まることなくゼノの部屋の前へと辿り着いた。
そして、戸を叩く。
「ゼノ様、少しお聞きしたいことがありまして、中へ入っても?」
「構わない。入るといい」
返事を聞き彼は鍵のかかっていない扉を開け、その目にはつい先日と同様、鏡の前で全裸になり自身の肉体を見つめているゼノの姿が飛び込んでくるのだった。
「……できれば、全裸で人を出迎えるのはやめて頂きたいのですが」
「そうか? 今後は気を付けよう」
今まで誰も注意したことは無かったのだろう。ゼノは素直にクレアの言葉を聞き入れて服を着始める。基本的な部分に一般的な感性との乖離があるのにこういう妙に良識のある所はゼノがどのような人物なのかを分からなくしている、クレアはそう確信を深めた。
だからというわけでは無いが、彼は今、ゼノの事を知りに来たのだ。
「……ゼノ様にお聞きしたいことは一つです」
「何だ?」
「なぜあなたは虐殺騎士と呼ばれるようになったのですか? ソルドゥムの悲劇とは何だったのですか?」
彼が虐殺騎士と呼ばれるようになったそのわけを、ソルドゥムの悲劇の真相を。
彼は本物の聖騎士から直接話を聞くことで、聖騎士が如何に偉大で素晴らしく尊敬されるべきものであるかを知りたかった。自分の目指す道が何も間違っていないことを他者に求めたのだ。
しかし不安もあった。どのような答えが返って来るのか、或いは取り付く島もなく教えてもらえないのか、ゼノの考えはまるで分からない。下手をすれば拒絶と共に虐殺という字義通りの意味を知らされるのかもしれない。
そう思っていたのだが。
「ああ、それなら少し長い話になるが大丈夫か?」
ごく平然とした声色のその返事にクレアは拍子抜けする事になる。
十二年前、ソルドゥムの町。そこは世間一般では技術者職人達の町と呼ばれていたが、彼らは決して自分たちをそうだとは言わなかった。言うなれば彼らは所謂はみ出し者の集まりだったのだ。
「だからよぉ、俺の発想力についてけなかった連中を見限って外に出たのさ! あいつらみてえな馬鹿どもとは一緒にやってらんねえからよ!」
「発想力ぅ? お前のは馬鹿げた夢ってんだよ、何が町を全部荷車に乗っけて動かすだ、そんなこと出来るわけねえだろ!」
「てめえも馬鹿にしやがんのか! やってやんぞ!」
「おおやってみろ!」
彼らの多くはあまりに非現実的な地に足のついていない夢を語り元々いた町の者から白い目で見られ出て行った者達ばかりだ。我の強い彼らは気の合う仲間と共に工房を作りそれがどんどんと広がってソルドゥムの町が出来て行ったという。
とはいえ、我の強さは新天地を作り上げたところで変わる事は無く殴り合いの喧嘩は日常茶飯事で人々はそれを酒の肴にして楽しんでいるぐらいだった。
「やれやれ、そこでストレートだ!」
「蹴りだ、蹴りを入れろぉ!」
そんな良くも悪くも活気のある町だったが、そこには一つの不文律がある。多少の怪我なら問題ないが決して相手を死にかねないような事をしてはならない、と。尤も、頭に血の上りやすい連中ばかり集まっておりそれが簡単に守られる事は無いのだが。
「くっそ、てめえ……」
蹴飛ばされ尻もちをついた男がすぐ傍に置いてあった最新の農具を手に取る。鍬の先についた金属がより鋭利になって土を耕しやすい評判なのだが、それは一方で人を殺める凶器としても使う事が出来た。
「あ、おい馬鹿!」
「やめろやめろ!」
周囲が止めようとしたが頭に血が上った男にその声は届かない。そんな時、どこからともなく現れる男こそが。
「おら! ……あ、動かねぇ?」
振り上げた鍬がその場で固定されたかのようにピクリとも動かない。思わず何が起きているのかと振り返った男はそこに直立しているだけでまるで巨大な壁のような存在感を放つ男と目が合った。
「お、ぜ、ゼノじゃねえか」
ゼノ、彼はソルドゥムの町における喧嘩の仲裁役だった。たとえどれほど頭に血が上った職人も彼の姿を見れば一旦矛を収めてその場を離れる。それは純粋に見た瞬間に頭が冷える程その巨大で鍛え上げられた肉体には敵わないとわかっていたからだ。
ゼノが普段やっているのは近隣での狩りだった。彼の姿は非常に目立つので小さな獲物を狩るには邪魔で仕方ないが、一方で熊や猪を狩る際には武器を持って前に出る彼の姿はあまりにも心強く感じられる。この町では誰もが彼の狩ってきた獲物を食しており、誰も頭の上がらぬ巨人こそが彼だった。
彼が争いを止めたのならばどのような争いもそこで終わり、それはどうにも代えがたいルールである。
「けっ、良い子ちゃんぶりやがってよ」
もっともそれに誰もが納得していたわけでも無かったが。
ゼノは元々ろくに会話もせず一人でいる事がほとんどだった。ここにいる多くの者がそうであるように彼もはみ出し者として元居た場所に居られなくなった身、それがその態度から疎まれての事だろうと誰もが察していたが、職人たちの多くは自ら食料を取りに行くことを面倒がっていたし、また彼が余計な文句を言って来ることも無かったので大目に見ていたらしい。
ではゼノ自身にとってこの町はどうだったのかと言えば、決して居心地の良い場所では無いがわざわざ出て行く程でもないというところだろう。彼は喧嘩をする皆の気持ちなど欠片も理解できなかったし、元の町を追い出され苦悩する者達の恨みつらみもまるで理解していない。しかしひとまずここにいる限りは自分には役割があって生きていける、ただそれだけだった。
クレアはそこまで話を聞いて一つ思う。
「それって、ゼノ様に町の人を殺す理由がありますか?」
ここまで聞いた話ソルドゥムの町への愛着があったわけでは無いが、だからと言って滅ぼす理由もこれと言ってない。人が大きな事を起こす時にはそれ相応の理由があるはずだ、彼にはこの町に対してそんな風に思うだけの何かが無い。
「そうだな。私もこの時はあんな事になるとは思ってなかった」
そう言って彼は続きを話し始める。
さて、多くのはみ出し者の職人が集まったソルドゥムの町であったが、幸か不幸か彼らの仕事は軌道に乗り始めていた。
「知ってるか? あいつが言ってた楽に畑を耕す機械。試作品が出来たんだってよ」
「俺それ使ってるの見たぜ、これが結構うまく行ってたんだよ」
自分から町を出て行った彼らは元々腕が悪いわけではない。そして異なる発想を持つ者同士が近くで切磋琢磨する環境が生まれた結果、それらの知見や技術が複雑に絡み合い実を結ぶことになったのである。それらは町のあちこちで自然発生的に幾つも生まれて行く。
「こりゃあいい! 俺を見下してた連中には一生かかっても作れねえぞ!」
「あの馬鹿どもが悔しがる姿が目に浮かぶね!」
ゼノは祝杯を挙げる彼らの元へ食べ切れないほどの肉を届けた事もあり、この時期は町全体が最も活気づいていた日々だ。ただ、それは彼らが徐々に道を踏み外して行く第一歩でもあったわけだが。
ソルドゥムの町は元々多くのはみ出し者が流れ着き寄り添い合って出来た町だ。外から来る者を拒むことはあまり無い。しかし彼らの元での生活が合わずに去って行く者も少なくはなかった。故に、彼らの技術について外に情報が漏れるのは時間の問題だったのだ。
「最近よぉ、妙な連中が多いと思わねえか?」
それは酒場での一幕。ゼノがいつものように肉を届けに行った時に聞こえてきた声だ。
「妙な連中って何?」
「何かよ、見ねえ奴だなと思ったらじっと俺の作った機械を見つめてよ。興味があるのかと思って説明してやったんだがうんうん頷いてそのままどっか行っちまったんだ」
「あ~、確かにうちにもそんな奴がいたね。うちの染料について根掘り葉掘り聞いて来る割に染物自体には興味無さそうなやつ」
「それって金髪のこんぐらいの背の奴か?」
「おお、そうだそうだ!」
「そいつなら町を出てくのを見たぞ。妙に挙動不審だったから覚えてる」
「ああ? 何だそりゃあ」
それが近隣の町が彼らの元に送ったスパイであったと知るのは数か月後だ。足りなくなった物を調達しようと近隣の町へ向かった者がソルドゥムで作られた物に似た製品を幾つも見かけたのだ。
「おいおいおい、そりゃあよぉ……」
「あいつらは私らが苦労して作った物を盗んだんだよ!」
「何て奴らだ! ふざけやがって!」
元々彼らは他の町にて思い描いた夢を馬鹿にされ続けて来た者達だ、行き場を失ってここに来た者には優しくとも他の町へ住む者達への対抗心は強い。ましてや散々馬鹿げていると言われ続けた彼らの夢、それが実現した途端に盗みに来るなど彼らにとってもはや直接的な暴力を超えた暴虐だ。
「やってやる、戦争だ!!!」
それは住民を最も過激な手段の元へ団結させるに十分なものだった。
それからソルドゥムの町は大きく変わった。人々はあらゆる資源を戦いの準備の為に使い、外から来る者は全てスパイと見做して拒絶、内から出ようとする者もスパイと断じて殺した。それはゼノが知る限りソルドゥムの町が最も陰惨とした時期だ。
「ゼノ、お前も逃げるんじゃねえぞ?」
この時期、町の外へ狩りへ赴く際にゼノは銃を突き付けられてそう言われていた。彼らにとってゼノの力はある種絶対的なものだったはずだが、怒りと憎しみはそれらを容易く取り除く。ゼノは黙って頷きいつものように仕事をこなし続けた。
そして、運命の日が来る。
その日は星の一つも見えない暗い夜空だった。ゼノはどういうわけか眠れず蝋燭を片手に町の中をぶらついていた。そしてそのせいで彼は、ソルドゥムの悲劇をその目に収める事となる。
夜の闇が全てを覆い隠す中で蠢く多数の影を彼は見た。蝋燭の明かりの向こうからやって来る無数の黒装束の影を彼は見た。人々をその手に持つ銀の煌めきで始末していくその影を見た。
それは彼の元へも向かって来る。銀の短剣が首筋や足の腱を目掛けて飛んで来る。しかし彼はその幾つかを手で掴み取り、残った者は最小限の動きで躱した。
「なっ、こいつ!」
「油断するな、挟み込め!」
黒装束の彼らが住民の命を狙っている事は明らかだった。遠くの家々からは微かに悲鳴が聞こえている。今こうして彼らと対峙している間にも幾つもの命が失われているのだろう。ゼノは、即座にこの包囲を突破すべきなのだろうと考え。
「待ちなさい」
それを制止するように男の声が響いたのを聞いた。その声を無視すべきか考えている内に黒装束の中から一人の男が前へと歩み出る。
「少し話をしませんか?」
男はそう言った。
「時間稼ぎか?」
ゼノは即座にそう返した。黒装束の数は多く今も微かな悲鳴が無数に聞こえ続けている。時間が過ぎれば過ぎるだけ町の人々の命が失われて行くだろう。命は尊いものだと言われている、それが失われるのは良くない事だ。
しかし男は首を横に振った。
「私がしたいのは説得です。あなたには我々の仲間になって欲しいのですよ」
ゼノは無視して一歩を踏み出したが男の表情は変わらない。
「私は戦争を止めたいのです。より多くの人を救いたいのです」
「人を殺してか?」
「ええ、そうです」
淀みない返事を前にゼノは足を止めた。その男の考えを聞いて見たくなったのだ。
「私はこの地が属する聖国オルフィーの大臣をやっております。既に様々な情報筋からここソルドゥムの住民が戦争を引き起こそうとしている事はわかっております。故にこの作戦に踏み切りました」
「その心は?」
「無論、戦争で多くの命が失われるのを防ぐ為です」
「彼らにも争いを起こそうとする理由がある。しかし目的を果たせば彼らも落ち着くだろう」
この町で過ごして来たゼノはひとまず住民の側に立って話をした。少なくとも、住民達が望んでいるのは技術を盗んだ近隣の町への報復でありそれ以上は望んでいないのは事実なのだ。
しかし。
「それは違います。争いとは拡大して行くものなのですよ」
男はそう断言した。
「元々彼らが近隣の町に技術を盗まれその報復を行おうとしている、その事実は既に掴んでいます。しかし彼らがそれを叶えたとしてその後はどうなりますか? その情報は近くの町へと波及していき彼らは次は自分たちの元へ来るかもしれないと恐れ戦く事でしょう」
「しかしそこで止まれば話は終わりだろう?」
「いいえ終わりません。ここ、ソルドゥムの住民がそうしたように、必ず報復する者が現れます。たとえこの町の住民がどれ程の技術を持っていたところで彼らが襲った町の者を一人残らず根絶やしにすることなど出来ないのですから」
ゼノは思わず黙り込む。彼にはそれを否定できるだけの根拠などまるで無かった。それはこの町の住民達が報復を望むほどの痛みをまるで理解できないのと同じように、ソルドゥムの住民に襲われるであろう人々の痛みもまた理解できないが故。
「では、今行っている事はどうだ?」
しかし論理的な矛盾を突くことぐらいは出来る。
「この場で行われている事も同じだろう。ソルドゥムの住民を根絶やしになど出来ないのであれば再び報復する者が現れる。そうだろう?」
単純な話だ。生き残りが必ず現れるから報復の芽が出る。そうであれば今この男たちがしている事もまた、それと同じ事なのでは無いか、と。どんな言い訳が飛んで来るのかとゼノは思っていたが、
「我々は根絶やしにします」
確固たる揺らぎの無い言葉が放たれる。
「幸いにも今、この町の出入りは彼ら自身によって厳しく監視されていました。故に町を包囲してしまえば取り逃がす心配はありません」
ゼノは唖然としたが、その言葉の意味に気付く。
「この町は既に包囲されているのか!?」
「ええ。我らオルフィーの軍、三万の兵によって既に包囲が完了しています」
それは町の住民の十倍をも遥かに超える数だ。仮にこの暴虐に気付き外に逃げた者が現れたとて、彼らは包囲している兵の前に身一つで飛び出す事になるだけなのだ。
「つまりこの町は」
「既に滅んでいる、というわけです」
ゼノに選択肢は無かった。町と運命を共にする程この場所に愛着があったわけでも無い、ましてや住民が起こそうとしていた戦争に対しても彼には何の思い入れも無かった。
「俺はどうすればいい?」
故に彼は少しの躊躇いも無くそう尋ねた。
「そうですね……。幾つか考えはありますが、とりあえずあなたには聖騎士になってもらいましょう。異常によって狂ってしまった人々を殺しこの町を滅ぼした騎士」
そして男はその名を告げる。
「虐殺騎士。あなたは今後そう呼ばれることになります」
それが虐殺騎士ゼノの誕生の瞬間だった。
クレアは背中に冷たい物が伝うのを感じつつ話を聞き続けた。途中からこんなことを聞いたことをずっと後悔していた。そして話が終わり、今、ただただ恐怖を感じている。
「そ、れは」
平然としているゼノを前にそれを告げるのは恐ろしかったが、しかし聞かずにはいられない。
「人に話したらまずいのでは……?」
明らかに、誰彼構わず話して良い内容ではない。それどころか、心の内に封をしてあの世まで持って行くべき事のはずだ。寧ろ何の準備も無く聞かされた側からすれば恐ろしい陰謀の一端に強引に巻き込まれたとさえ感じられる。
「その通りだ」
幸いな事に、ゼノはそれを承知しているらしい。しかし即座にクレアは思い直す。だとすれば今それを話したのは、外に漏れる心配が無いからでは無いだろうか。つまり、既に消す準備は整っている。
「……わ、私を殺すと、異変を感じた仲間が調査に乗り出しますよ」
「調査?」
「はい、ですからここで殺すのは得策では無いので止めた方が良いですね」
「殺す? なぜだ?」
適当な事を言ってどうにか殺されるのを先延ばしにしようとしたクレアであったが、そもそもゼノには初めからそんなつもりはないらしい。余計な気を遣って損をした気分であったが、そうだとして疑問が尽きない。
「ふぅ……。では、その、なぜ先の話を私に?」
「尋ねたのは貴殿の方だろう?」
「それはそうですが……」
もしやゼノには隠すべきという意識が無いのだろうか、と一瞬考え即座にそれは先程ゼノ自身が否定した事だと思い直す。
「では、なぜ話したんです? 隠すべき事だとはわかっているのに」
「貴殿は賢いからだ」
それが褒めるにしてはあまりにも自然な口ぶりで出て来たものだからクレアは思わず面食らう。
「話したところでそれを外に漏らす事は無いだろう?」
「まあ……」
ソルドゥムの悲劇とは戦争を起こそうとしていたソルドゥムの住民を聖国オルフィーが凄まじい数の兵で以て皆殺しにしたものである。それが真実だなどと喧伝すれば間違いなく多くの刺客に狙われることになるだろう。それに住民は理由があったとはいえ戦争を起こそうとしていた、国としてはそういう芽を摘むのは当然の事だろう。その規模が大き過ぎる気はするが彼らもそれは理解している。だからこそ虐殺騎士という嘘の話でそれを塗り潰した。
「……しかし理解できませんね。ゼノ様がその話を受けたのは生き延びる為というのは分かりますが、彼らにとってゼノ様を生かす理由は何かあったのですか?」
「聖騎士が持つ力を宣伝するのが目的だと言っていた」
「聖騎士の力……」
「十二年前はオルディア教もまだ今ほど大きくは無かったという事だろう」
オルディア教、かの宗教はかなり古くから存在するものの、それが広く信仰を得るようになったのはここ最近の事だ。頻発する異常に対して聖騎士というそれを抑える確かな力を持っていたことがその主要な要因の一つとも言われている。
「つまり、聖騎士が本当に確かな実力を持っているという一つの証明として、話をでっち上げたと?」
「そうなるな」
人々が聖騎士を頼る為の前提として、聖騎士が事実として頼れる存在であると皆に認めさせる必要があった。その為には例えば彼らには町一つを滅ぼすだけの力があると知らしめるのも、方法論としてはありだったのだろう。
「どちらかと言えば恐れられる気がしますが……」
「事実、そういう時期もあった。しかし異常もまた恐れられるものだ。毒を制すには毒という事もある」
「成程……、一理ある」
そう言われてふと、クレアは思い出す。聖国オルフィーとは元々オルディア教を国教とする国であり、オルディア教の教皇もまたその国の中枢にいた前歴を持っていたはずだ、と。教皇はここ数年でオルディア教を国の垣根を超えて広く布教した実績を持ってそう呼ばれるようになったわけだが。
「……先程、ソルドゥムに大軍を率いて来た男の話がありましたが、あれはまさか……」
「教皇様だ。あれ以来目をかけて頂いている」
「そうですか……」
クレアは突如もたらされた様々な情報をどうにか整理しようと試みるも、やがてあまり考えても仕方ないと深く考えない事に決める。このような裏を暴いたところで得る物は何も無く、ただただ徒に混乱を招くだけだ。今既に出来上がっている秩序を崩壊させたところでその先に待つのは混沌とした未来に過ぎない。
何かの犠牲の上に造り上げられた平穏であろうと、それが平穏である事には変わりない。
「ですが……」
しかしそれはそれとして気になる事もある。
「先の話を鑑みるにゼノ様は誰も殺していないのでしょう? 虐殺騎士などと呼ばれるのには思う所は無いのですか?」
純粋な好奇心からの疑問だ。無論、力を喧伝する為には非常にわかりやすい呼び名だとは思うが、それでも誰も殺していないのにそんな呼び名をされるのは普通嫌なものではなかろうか? それともそういう条件で生かしてもらったのだからと割り切って考えているので気にもしていないのか。
それはゼノがどういった人間なのか掴むのに役に立つと思ったのだが。
「いや? 私も手伝ったが」
「え?」
「流石に住民全てとなると数が多い。自分も確か十人ぐらいは殺している」
「そう、ですか……」
人殺しに対して何も思う所すら無い、その姿は正に虐殺騎士、なのかもしれない。
クレアは聖騎士本人に聖騎士の素晴らしさを語ってもらおうと思っていたはずが、飛び出して来た想像の埒外の話の数々にノックダウンされてその場から逃げるように去って行くのだった。しかし、結果的に悩みは無くなったとも言える。衝撃の余りに頭の中から吹き飛ばされただけだが。
この日、様々な事が起こり、それぞれに様々な話をし、もうこれ以上は何も起こらないだろう。彼らはそんな気分で今日の日を終えようとしていた。それぞれ寝室へ向かい、明日からの様々な面倒へ対処する為に英気を養おうと、そんな気分だったのだ。
しかし何かが起こる時にそれは人の想いなど少しも考慮に入れてはくれないのである。
「助けてくれ!!!」
静寂を引き裂く叫び声が教会に響く。まどろみの中に落ちようとしていた者達はその声に即座に動き出すだろう。




