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居場所を守れ~AI外食コンサルに潰されなかった居酒屋〜  作者: いわん


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41/60

41話:バラバラに動く

 常連たちは、その日それぞれバラバラに動いた。

 打ち合わせはなかった。事前に話し合ったわけでもなかった。誰かが誰かに「こうしろ」と言ったわけでもなかった。ただ、それぞれが自分のやることをやっていた。


 真鍋は自分のオフィスに座っていた。三台のモニターの前で、SNSの動きを見ていた。見ながら、何も発信しなかった。タイミングではなかった。ただ見ていた。


 黒崎は電話に出なかった。何件か着信があった。見て、切った。外を歩いていた。行き先を決めずに歩いた。路地を歩いて、赤ちょうちんの前を通った時、少し立ち止まった。貼り紙を見た。白い紙に黒い字だけがあった。しばらく見て、また歩き始めた。


 蓮はどこかにいた。誰も知らなかった。朝のうちに「厨房を借りる」と言い残して、それきり連絡が取れなかった。どこの厨房で、何を作っているのか、誰にもわからなかった。


 榊は自分のオフィスで書類を整理していた。行政調査への対応、次のステップで必要になる法的な書類の準備。やるべきことを、順番に片付けていた。


 藤堂は市場のデータを見ていた。四半期決算後の市場の動きを確認しながら、次の動きを計算していた。


 梶はその日も店の中にいた。貼り紙の内側で、出汁の準備をしていた。閉めていても、仕込みを止めなかった。


 誰かに指示されるわけでも、作戦を立てるわけでもなく、それぞれが自分の動き方で動いていた。

 藤堂がモニターを見ながら、静かに呟いた。「AIは、感情の連鎖を予測できない」


 その夜遅く、真鍋のスマートフォンに通知が届いた。フォローしているアカウントが、赤ちょうちんについての投稿をしていた。知らない人間の投稿だった。見たことのない名前だった。しかしその投稿の言葉に、真鍋は少し止まった。読み返した。

 そして、自分のアカウントを開いた。


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