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限界オタク聖女が敵の拗らせゾンビ男子を溺愛してみたら  作者: フオツグ
限界オタクと推しとメインキャラと。
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限界オタクが博士にお礼を言ってみたら

 シュタインボックはイオリ達から離れ、【蠍座の守護者】スコルピオンの元へと歩み寄る。

 他の【星の守護者】と談笑していたスコルピオンは、それに気づいて顔を上げた。


「話は終わりじゃ。行くぞ、スコ坊」

「へーへー」


 スコルピオンは適当に返事をして立ち上がる。

 シュタインボックはスコルピオンを伴って、会議室を出た。

 それを見届けたあと、【水瓶座の守護者】アクアーリオが席を立ち、会議室を出る。


「あっ。アクアーリオ博士、待って下さい!」


 彼は先程、イオリを庇ってくれた。

 イオリ達がシュタインボックと話している様子を、アクアーリオはちらちらと伺っていたことも、イオリは見えていた。

 どうやら、話もせず会議室に留まっていたのは、イオリ達が気になっていたからのようだ。

 お礼を言おうと、イオリは慌てて、アクアーリオのあとを追う。

 アクアーリオの足は早く、大分廊下の先へと進んでいた。

──足早っ! もうあんな遠くに……。

 イオリは大きく息を吸い込み、アクアーリオの背中に向かって叫んだ。


「アクアーリオ博士! 先程はありがとうございました!」


 イオリは遠目から頭を下げた。

 アクアーリオは徐に振り返った。


「……何の話だ?」


 アクアーリオは不愉快そうな顔でそう言う。

 イオリはへらっと笑った。


「会議で、私のことを庇ってくれたじゃないですか」


 アクアーリオはこめかみに指を当てて言う。


「ボクは想像力が働かない平和ボケした愚物共に教えてやっただけだ。姉聖女を追放するのは得策ではないとね」

「それでも、私が追放されずに済んだのは、アクアーリオ博士のおかげですから」


 イオリはニコニコと笑う。


「ボクのおかげだって? キミは会議中に寝ていたのかね。キミを追放しないと言ったのは、シュタインボック氏だっただろう」

「アクアーリオ博士がみんなを説得してくれたおかげですよ」

「全く……キミは余程ボクを功労者にしたいんだな」


 アクアーリオはやれやれ、とため息をついた。


「勘違いしないでくれたまえ。キミには錬金術の才能がある。その才能を愚物共によって潰されるのが、我慢ならなかっただけなのだよ」


 イオリは「ふふ」と笑った。


「そういうことにしておきます。博士はツンデレですからね」

「……なんだね。その『つんでれ』とやらは。何やら、馬鹿にされているような気がするのだが」

「私の世界の造語です。性格を言い表すときに使います。決して、馬鹿にしている訳ではありません!」


──『可愛いなあ』という意味で言っただけです!

 とは、言わなかった。

 アクアーリオが聞いたら、不機嫌になりそうな気がしたからだ。

 アクアーリオは不思議そうな顔をした。


「ハァン……? まあ、良い。異世界の方言に興味はない。そういうのは、自称・大作家クンに教えてやりたまえ。きっと喜ぶだろう」


〝自称・大作家〟──【蟹座の守護者】キャンサーのことだろう。

 アクアーリオは白衣を翻し、イオリに背を向ける。


「その、なんだ」


 アクアーリオは後ろを向いたまま、横を向く。


「気が向いたら、ボクのアトリエに来たまえ。新しい錬金術を教えてやっても良い」


──それがツンデレって言うんですよ、博士。

 そう言うとまた不機嫌になるだろうからと、イオリは口には出さなかった。


「これからも錬金術に勤しみたまえ、姉聖女クン」


 アクアーリオはそう言い残し、立ち去った。


「……仲が良いのか?」


 ノヴァが会議室の扉からひょっこりと顔を出した。

 アクアーリオとのやりとりを見ていたらしい。


「ノヴァくん、見てたんだ」

「急に走り出したから、何事かと思って」


 ノヴァはイオリの隣に立つ。

 イオリはアクアーリオが立ち去った廊下の先を眺めた。


「好かれてる……とは思ってなかったんけど。結構好印象だったみたいだね」


 イオリは「良かった」と言って笑う。


「王国の中でも、私を見てくれてる人がいたんだな……」

「ふーん……」


 ノヴァは唇を尖らせた。

 イオリはそんなノヴァの顔を見て思った。

──あれ? もしかして……。


「ノヴァくん、拗ねてる?」

「拗ねてねえ」


──そうだ。ノヴァくんって嫉妬深かったんだ……。

 ノヴァは自分だけ仲が良いと思っていた友達が、他にも仲良い友達がいたと知ると、複雑な気持ちになるらしい。

──もしかして、私がアクアーリオ博士とも仲良さそうだから嫉妬してる? ……可愛い〜!

 イオリは胸がきゅんとなった。


「私が好きなのはノヴァくんだよ」


 イオリはそうフォローしたが、ノヴァの不機嫌そうな顔は変わらなかった。


「じゃあ、あいつのことは嫌いな訳?」

「嫌いって訳じゃなくて……。好きか嫌いかって言ったら、好きな方」

「やっぱり」

「ノヴァくんに言った『好き』とは違うよ? ノヴァくんは一個頭抜けて好き」


 それが〝推し〟というものだ。


「ノヴァくんと他の人との間には、越えられない壁がある」

「……ま、今はそういうことにしておく」


 ノヴァはあまり納得していないようだったが、引いてくれた。

──ノヴァくんって、独占欲強いんだなあ。……何かに使えるかもしれないから、覚えておこう。

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