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限界オタク聖女が敵の拗らせゾンビ男子を溺愛してみたら  作者: フオツグ
限界オタクと推しとメインキャラと。

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限界オタクが今後の予定を話してみたら

【星の守護者】会議から数日が経った。

 イオリとノヴァは以前と変わらず、リブラの家で居候する日々を送っていた。

──こんな日々が永遠と続けば良いなあ……。

 イオリはぼんやりとそう思っていた。

 勿論、そんな願いが叶う訳もない。

 イオリは魔王軍と戦うために召喚された聖女で、ノヴァはゾンビなのだ。

 今、このときは、束の間の平穏でしかない。


 毎日の恒例となった昼食後のコーヒーブレイクにて。

 イオリ、ノヴァ、リブラ、ヴァルゴの四人はテーブルを囲んでいた。

 イオリとヴァルゴは紅茶を、リブラはコーヒーを飲んでいる。

 ノヴァは香りと会話を楽しむためだけに席に座っていた。

 数分の間、近況報告を挟んだ後、リブラが口を開いた。


「これからの予定ですが、イオリ様には明星寮に引っ越して頂きます」

「へ……?」


 イオリはリブラの突然の言葉に、間抜けな声を出した。

 明星寮とは、【星の聖女】と【星の守護者】のための寮だ。

【星の守護者】会議が行われたのも、その建物内にある会議室である。


「な、なんで私が明星寮に……?」


 イオリはだらだらと汗を流しながら、震える手で持っていたティーカップをソーサーの上に置く。


「先日、【星の守護者】会議にて、聖女勉強会の文言が出たでしょう」

「ああ……私とヒナがこの世界のことについて学ぶための会を開くって言ってましたね」


──確か、【山羊座の守護者】シュタ様の提案だったっけ。

【星の守護者】達が教師になり、この世界のことについて教えてくれるという。

 イオリは正直に言って、楽しみだった。

 好きなゲームのキャラ達が、好きなゲームの世界観を教えてくれるのだ。

 元の世界にはなかった展開だ。

 心が踊らないオタクなどいないだろう。


「その聖女勉強会の開催が正式に決定しました。そして、イオリ様が誘拐されたことで中断されていた、聖女降臨祭の準備も再開しなくてはなりません」

「聖女勉強会に聖女降臨祭の準備……忙しくなりますね……」


 今まで通り、リブラの家でのんびりとはしていられないだろう。


「毎日、私の家から明星寮に出向くのは大変でしょう。ですから、聖女様のお二人には、明星寮で生活して頂くことになりました」

「えっ!」


 イオリは思わず、大きな声を出してしまう。


「聖女が明星寮に住むのは聖女降臨祭の後なんじゃ……」


 イオリは恐る恐るリブラに尋ねた。

──【よぞミル】のメインストーリーではそうなってたはずだけど……?


「よくご存じですね。聖女様は聖女降臨祭ののちに、明星寮へ入寮して頂くことが通例となっています。しかし、今回は聖女勉強会を開くと言うことで、予定が早まったのです」


──くっ……! メインストーリーが破綻した弊害が出てる……!

 イオリは拳を握って、悔しがった。


「私はノヴァの監視のため、入寮は出来ませんが、ヴァルゴも明星寮へ入寮しますので、何かあればヴァルゴに言うように」


 リブラはヴァルゴに目を向けた。

 ヴァルゴはひらひらと手を振って答える。


「でも……」


──ヒナも入寮するんだよね……。

 イオリは俯いて黙り込んだ。

 皆に迷惑をかけた手前、嫌だとも言えない。

 イオリの手に、ノヴァの手が重なった。


「え……?」


 イオリは驚いて、ノヴァの顔を見た。

 ノヴァは真剣な顔でイオリを見ていた。

 どき、とイオリの胸が高鳴った。


「無理すんなよ。嫌なら嫌って言え」

「ノヴァくん……」


 イオリが言葉を飲み込んだことに気づいたのだろう。

──ノヴァくんは本当に聡くて優しい子だなあ……。

 イオリは顔が綻んだ。


「……ありがとう、ノヴァくん。私は大丈夫だよ」


 ノヴァは照れくさそうに顔を背けた。


「ヒナ様の手癖のことでしたら心配ありません。聖女様の部屋には鍵を取り付けることになりましたので」


 リブラが冷静に言った。


「あはは……。ありがとうございます……」


──私が不安なのは、そこじゃないんだけどなあ……。

 リブラの少しズレた言葉に、イオリは引き攣った笑みを浮かべるしかなかった。


「ノヴァと離れ離れになるのは寂しいでしょうが、面会の機会も設けるようにしますので、ご安心を」

「あ……そっか。ここから引っ越すってことは、ノヴァくんと離れ離れになるってこと……」


 イオリは絶望の表情をした。

 ヒナと一つ屋根の下で暮らすことより、ノヴァに会えなくなることの方がショックだった。


「今生の別れじゃあるまいし、そんな顔すんなよ」


 ノヴァが鼻で笑う。


「ノヴァくんは知らないんだ! 私がどれだけノヴァくんに元気を貰ってるか……!」

「オレはお前を何なんだよ」

「精神安定剤」

「んな訳あるか」

「いや、精神は安定しないな……」


──常に心乱されてるし。ノヴァくんの一挙手一投足、可愛さで悶絶してるし私。

 よし、とイオリは改めて言った。


「ノヴァくんは元気玉ってことにしとこう」

「なんか、響きがアホっぽいからやだ」


──響きがアホっぽいって……人気漫画のネーミングセンスなんだけどな、これ。

 イオリは自分の熱い思いが、ノヴァに全く伝わらないことに辟易とした。


「仲が良いですね」


 リブラがうんうん、と感心しながら言う。


「そう思うか?」


 ノヴァは呆れ顔をした。

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