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限界オタク聖女が敵の拗らせゾンビ男子を溺愛してみたら  作者: フオツグ
限界オタクと推しとお兄ちゃんと。

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限界オタクが兄弟愛に感動してみたら

──アルタイル兄弟、尊い……!


 二人を見守っていたイオリは感涙していた。

 リブラが過去を話している最中、イオリは気配をとことんまで消し、壁に徹していた。

 二人ならば、分かり合えると信じて。

 自分が変に口を突っ込んだら、空気が台無しになる。


──リブラさんがノヴァくんのために悩み苦しんでいたことも去ることながら、ノヴァくんをこの世に留めるため、リブラさん自身が悪者になるなんて、もう愛よね、愛!


 リブラはノヴァを救うために大神官として、【星の守護者】として頑張ってきた。

 ノヴァはそれを知らず、両親の悪意によって、ゾンビになってしまった。

 リブラは怒り、両親を断罪。

 自分はノヴァを救えなかったという、罪の意識に苛まれ、罰を望んでいた。

 それから、自分を罰するように、大神官の仕事、【星の守護者】の役目、ノヴァの捜索と予定を詰め込み、休む暇もなく動き続けた。

 もしくは、暇な時間があると、ノヴァへの罪を思い出してしまい、辛くなるからかもしれない。

 葬儀をして、弟の捜索を打ち切った後、ノヴァがゾンビとなってリブラの目の前に現れた。

 リブラは再び、悩み苦しむこととなる。

 魔物となったノヴァを処分するか否か……究極の選択を迫られる。

 そして今、リブラは決意した。

 ノヴァをこの世に留める、と。

 ノヴァに恨まれることになろうとも……。


──エモ過ぎないか、この展開!? リブラさんとノヴァくんの関係、なんで今まで語られなかったの!?


 ノヴァがチュートリアルで死んでいるからである。

 序章ステージ【墓場の森】では、戦闘チュートリアルが行われる。

 戦闘の編成は固定だ。

 王子ベリエ、騎士団長レオ、魔導師ジェミニとポルックス。

 ガチャ機能解放もまだなので、リブラを編成に入れることは不可能。

 倒されたノヴァは【星の欠片】となる。

 ノヴァの【星の欠片】を見ても、リブラは一生、それが弟の成れの果てだとは気づかない……。


──ゲームライター、鬼畜……!


 しかし、イオリがノヴァを庇い続けたことで、正規のバッドエンドから脱した。


──ハッピーエンドというにはまだ早いけど、今まで私がやって来たこと、無駄じゃなかった……! 良かった、本当に良かった……!


 イオリは涙を静かに流し、とても良い笑顔で笑う。


──アルタイル兄弟、一生推して参るッ!


「イオリ様」


 イオリはハッと我に返る。

 気づけば、リブラは上体を起こしており、ノヴァを片手で抱き締めている。

 ノヴァはリブラの胸で泣いている。


「あ、私のことはどうぞお気になさらず」

「話の繋がりがわかりませんが……?」


 リブラはこほん、と咳払いをした。


「貴女には感謝しています。私に贖罪の機会を与えて下さったこと」

「……え? 何の話ですか?」


 イオリはリブラに贖罪の機会を与えたつもりはなく、首を傾げる。


「貴女は正真正銘、我が国の聖女です」

「話が二足も三足も飛んでいるような……?」

「申し訳ありません。脳が上手く働いていないようで……。こんなこと初めてだ」


──嬉しいんだろうなあ。ノヴァくんと再会出来て。

 イオリは微笑ましく思った。

 ふと、イオリはリブラに投げかけた言葉を思い出す。


『ノヴァくんを星にしたら、きっと後悔します』


 今思うと、あの言葉はリブラを酷く傷つけたのことだろう。

 イオリはリブラに頭を下げた。


「……すみません、リブラさん。私、リブラさんがずっと苦しんでいたことを知らずに、あんな酷いことを……」

「いえ。貴女の言葉がなければ、私はきっとまた、後悔していたことでしょう」


 リブラはノヴァに視線を落とす。


「それに、酷い言葉というほど、酷い言葉ではありませんでしたよ」


 リブラは本当にそう思っているのかわからない、いつも通りの仏頂面でそう言った。

 ノヴァが、とん、とリブラの体を拳で押す。


「……そろそろ離せよ」

「もう少し私の胸で泣いても構いません」

「イオリが見てんだろうが」


 ノヴァは泣いているところをイオリに見られて、照れているらしい。

 可愛い、とイオリは思った。

 リブラは渋々、ノヴァから手を離した。

 イオリはノヴァに一つだけ言いたいことがあり、ノヴァに近づく。


「イオリ……」


 ノヴァは目だけ上に向けて、イオリを見る。


「ノヴァくん、自分が死んだら悲しまれるなんて思わないで」


 イオリは無表情でそう言った。

 ノヴァは口を噤み、目を伏せる。


「そう……だよな。やっぱり、オレなんかのことなんて──」

「怒るよ、凄く」


 ノヴァはきょとんとした顔をする。


「凄く怒るし、君を責めるから。『どうして死んじゃったの』って。……私じゃノヴァくんを引き止められないんだって……」


 イオリは鼻の奥がつんとなるのを感じた。


「ノヴァくんの死が、人を追い詰めることがあること、知っておいて。ノヴァくんは君が思っているよりずっと、誰かの生活の一部になっているんだから」


 真剣な顔で言っているが、推し活のことである。


「言い過ぎじゃね……?」

「リブラさんを見ても同じこと言えるの?」


 兄弟の死と推しの死を一緒にしてはいけない。

 そんなこと知る由もないノヴァは、何も言えなかった。

 リブラが自分のために身を削ってきたという話を、今さっき聞いたからだ。


「お前って本当、変な奴……。でもまあ、責められんのは嫌だな……」


 ノヴァは笑いながらため息をつく。


「兄さんは願いを叶えてくれねえみたいだし。少し、この国で頑張ってみっかな……」

「うん。それが良いよ」


 イオリは笑って頷く。


「それにしても、子供の頃は敬語で、一人称が名前の素直な子だった事実に萌えている……。一人で二度美味しい。今も昔も可愛かったんだね」

「あんまさ、可愛いって言うなよ……」

「か、かっこいいって言われたいタイプの男子〜! 可愛い〜!」

「お、お前なあ……」


 ノヴァは呆れつつも、そう思われるのも悪くない、といった顔をしていた。

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