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限界オタク聖女が敵の拗らせゾンビ男子を溺愛してみたら  作者: フオツグ
限界オタクと推しとお兄ちゃんと。

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限界オタクが推しの兄とコーヒーブレイクをしてみたら

 ノヴァとリブラが和解したその後……。

 リブラは自宅に帰ってくるようになった。

 イオリにとって、それはとても喜ばしいことであった。

 しかし、ノヴァはあまり嬉しくないようで……。


「てめえの家だから帰ってくるのはわかる。でもよぉ……」


 ノヴァはリブラを睨みつける。


「昼飯食いに来るだけで帰ってくるのは、多忙な【天秤座の守護者】様的にはどうなんですかぁ〜?」


 イオリの昼食はリブラが食事を届けてくれるようになった。

 昼食後、リブラはコーヒーブレイクをするようになった。

 ヴァルゴは紅茶派のためティータイムだったが、リブラはコーヒー派らしい。

 食事の必要がないノヴァも同じテーブルについて、話をする。

 リブラがノヴァにそう命令した。

 最初、二人は辿々しく、お互い遠慮するようにぽつぽつと話をしていた。

 しかし、徐々に軽口が叩けるようになっていった。


「【天秤座の守護者】にも休憩は必要です」

「昼食食うためだけに家へ戻ってくんのは、休めてねえんじゃねえかって話だよ」


 口は悪いが、つまり、リブラの体を心配している、ということである。


「ノヴァ……本当に口が悪くなったな。魔物達の影響ですか?」

「変にへこへこしてると、他の魔物に舐めらっからなぁ。言葉遣いは色々と変えた」

「お前は本当に勤勉ですね」


 リブラが褒めると、「うっせ」と言いながら、ノヴァはリブラから顔を逸らす。

 照れているようで、ノヴァの口元はふにゃふにゃと緩んでいる。


「本当に食事を取らなくて良いのですか?」

「だから、何回も言ってんだろ。オレは死んでるんだって」


 ノヴァが言うと、リブラは目に見えて悲しそうにする。


「あのよぉ、てめえにそんな顔されるとこっちが申し訳なくなるだろぉ? 笑って済ませてくれよ」

「笑い事ではない。胸が苦しくなる」

「そりゃあ大変だ。オレを星にしたら楽になるぜ?」

「お前を星にする気はありません」

「ちっ。そうかよ」


 イオリは二人のやりとりを微笑みながら見ていた。

──ノヴァくん、すっかりツンデレになっちゃったなあ……。可愛い。

 ノヴァは自分の最期の願い──『星にしてくれ』という願いを叶えてくれない兄に反発するようになった。

 自分の死についてことあるごとに触れ、リブラの心を揺さぶっている。

 はたから見れば、小悪魔である。

 しかし、リブラは決意を固めてしまっているようで、ノヴァをの「星にしてくれ」という要求を全て突っぱねている。

 ノヴァも本気で言っているつもりはなさそうだ。

 リブラに対する複雑な感情──尊敬やら嫉妬やらの裏返しのようなところもあるんだろう。

──この関係性、尊い……。

 イオリはノヴァとリブラに手を合わせて拝む。

 ノヴァが言った。


「アルタイル家の親族もオレを生かすのに反対するんじゃねえか? 墓守りしてたらゾンビに噛まれてゾンビになって、魔王軍に従軍してたなんて、アルタイル一族の汚点だろ」

「アルタイル家は潰したのでもうありませんよ」


 リブラの言葉にノヴァは体を硬直させた。


「今の私はリブラ・ズベンエルゲヌビです。少し言いにくくなりました」

「待って。待ってくれ」


 ノヴァは唸りながら、額に指を当てる。


「アルタイル家を? 潰した?」

「いらないでしょう。あんなもの」

「んんー……?」

「ですから、新しくズベンエルゲヌビという姓を賜りました。一度断ったのですが、シュタインボック様が『何かと便利じゃから、受け取っておけ』と言うもので」

「あ、凄い。今のシュタインボック様そっくり! 物真似上手なんですね、リブラさん」


 イオリはそう言って笑う。


「そうですか?」


 リブラは小首を傾げる。


「いや、あの。困惑してんのオレだけ……? アルタイル家って、分家とかある結構大きな家だったと思うんだけど……? それを? 潰した? 兄貴が?」

「本家の当主が犯罪に手を染めていたんです。取り潰すのは当然かと」


 曇りなき眼でリブラが言うものだから、ノヴァは何も言えなくなってしまった。

 リブラは落ち着いた様子でコーヒーを味わう。

 ノヴァはすす、とイオリに近づき、耳打ちした。


「えーと……兄貴って怒らせたら駄目なタイプ?」

「敵だと思ったら徹底的に潰すタイプ」

「……気をつけよ」

「ノヴァくんは大丈夫だと思うけどな……」

 

 リブラがコーヒーのコップを置く。


「……さて。当初、イオリ様がおっしゃっていたように、ノヴァの固有スキルを【墓場の森】突破に利用するよう、話を進めています」

「……ま、ここで毎日のんびりコーヒー飲んで過ごす訳にゃあいかねえわな」


 ノヴァははへらへらと笑う。


「ノヴァくんが嫌だもんね。自堕落(ニート)生活」


 イオリがそう言うと、ノヴァが「うっせ」と顔を逸らす。


「オレが国のお偉いさんに『使える奴』だと思われれば良いんだよな?」

「ああ。ノヴァが有用だと判断されれば、ノヴァを王国に留めておいても、文句を言う者は少なくなるでしょう」

「『少なくなる』ね……」

「残念ながら、完全にいなくなる訳ではありません」

「そりゃそうだ。結局、オレはゾンビだからなあ」


 聖ソレイユ王国において、ゾンビは忌み嫌われる存在。

 生者を噛み、ゾンビにしてしまう性質故に、王国内に侵入されるのを恐れている。


「だけど、オレが『使える奴』だってわかれば、二人の立場も少しは良くなるはず……だよな」

「ノヴァくん……」


──本当に優しいんだから。

 イオリだけでなく、リブラの立場も考えていることに感動した。


「リブラさんと和解出来て本当に良かったねえ……」

「話の前後が繋がってねえんだよな……」


 涙を拭くイオリに、ノヴァは呆れた。

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