#4
『いつの時?結城君ほどのイケメンが惚れるって、どんな子だったの?』
『高校の時ですね。…天真爛漫って感じの子でした。明るくて、一緒にいて楽しいなと思える子でしたね。だから自分がモテてたかどうかよりも、その子に対して自分が恋をする事に必死だった記憶しかないなと…』
『あーなるほどね?恋は盲目と言うしね。周りが見えなくなるのも分かる分かる。その子に告白とかしたの?』
『しました。でも、何回も断られましたね。あの時はもう…とにかく付き合えるまで粘ろうと思ってました』
『益々意外な一面だね~結果はどうだったの?』
『粘り勝ちしました。付き合えた時は本当に嬉しくて、ここで死んでもいいと思えるくらいでした』
俺じゃ───ん!
これもう絶対俺の事じゃ───ん!
待ってこれ生放送?
違うじゃーん!収録番組なのになに赤裸々に語ってんのこの子ー!
司会者ももう話題変える頃合いじゃん!?
スタッフなんでここカットしなかったの!?
助長でしょここまで来たら!ね───!?
『本当に好きだったんだね』
『そうですね…でも僕がその子の信頼を裏切るような事をしてしまって、結局別れてしまって…。でもその苦い経験があったからこそ、今回の”恋時々嵐”では本当に好きな人とは絶対に離れてはいけないと言う気持ちで演じれたと思います』
『なるほどね。役作りではないけど、経験があったからこそあの蓮司の気持ちと重なる部分があったと。過去の恋愛がいい恋とまでは言えないけれど、それで結城くんの中の役者としてのスキルになっていたとしたらいいね』
『そうですね。…その子に別れる時に言われたんですよ。広い世界に出てみたらって。きっと今以上に色んなものが見えるって。今でも忘れられない言葉です』
『つまり、結城くんが今ここに居るのはその彼女のお陰ってことかな。これは女性ファンも嫉妬できなくなっちゃうねぇ~だってその子のお陰で結城くんはこの世界に飛び込んでくれたって事でしょ?』
『結果的にはそうなりますね。その子がそう言ってなければ僕もこの道には進んでいなかったと思います』
『今その彼女に伝えたいことはあるのかな?』
『…伝えたいこと…そうですね…ありがとう、ですかね』
『この番組見てくれてたらいいね』
『どうですかね…なんせ天真爛漫ですから。でも見ていてくれたらいいな。見てる前提でもう一つ伝えてもいいですか?』
『お?いいよいいよ~公共の電波だけど今回は僕が許すよ~でも後から一緒にプロデューサーに怒られようね』
『ハハハ、ではお言葉に甘えまして…言われた通り、広い世界に出てみたよ。映画見てくれてるといいな。見てくれたら、きっと分かると思う。これが…僕の出した答えだよ』
『なんだよー!ただの番宣じゃないか!やるねぇ~!おじさん一杯食わされちゃったよ!と言うわけで今回のゲストは結城 秋良くんでしたー!』
司会者と観客とスタッフの拍手と共に、秋良がまた軽く会釈をしてスタジオから退場していく。
終わり方が綺麗すぎてまるで最後は意図した台本のようだった。きっと番組を見ていた側はこうなる構成だと思った人が大半だろう。
でも司会者の解釈で俺の事を【彼女】として位置付けたけれど、秋良は一貫して相手の性別を言わなかった。
きっと俺たちと同じ高校だった奴らは、今回の秋良の話で出て来た「相手の子」とは俺の事だと気付いただろう。
秋良は今回の発言によって自身の最大のスキャンダルに発展するような種を撒いたようなものだ。
人気絶頂中の若手俳優が実は同性と付き合っていた事が明るみに出るように、わざと自分から仕向けやがった。
その種が芽を出すかどうかはタレコミやマスコミ、取材記者やファン、同業者、どれでもいいんだ。いづれかが秋良の過去を詮索し、そして面白半分や恨みや嫉妬や蹴落としで暴露すれば公となる。
つまり俺自身も秋良によってそのスキャンダルに巻き込まれた事に相違ない。
同性愛は今は普通となってきた世の中ではあるけれど、まだまだ受け入れられていない層も少なくはない。
芸能人なんて人気商売になると尚更このスキャンダルは隠さなければいけないものだろう。
なのにどうして…。
俺はスタジオから去っていくその背中を見つめながら呆然としていた。足に力が入らずへたへたとその場に蹲り、画面がCMへと切り替わったタイミングで一気にどっと冷や汗が溢れ出していた。
だけどそれはスキャンダルに気付いたからと言うわけではない。秋良はあくまでも種を撒いただけだ。つまりそれだけで終わる可能性だってあるって事だ。発芽せずに種のまま死んでいく可能性だって充分にある。バレたところで事務所の力で揉み消す事も容易に考えられる。
今注視する点はそれよりも、もっと…もっと重大な事実。俺だけしか気付かない決定的な発言。
「…なんて言った?あいつ今、なんて、言った?」
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